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続編

12 ゴソゴソ ※

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「はっ……はぁっ」

 色っぽい吐息に僕はぼんやりと目を覚ました。見れば、部屋の中は真っ暗だ。

 ……ん? まだ夜なのかな。あれ? ぼく、いつ寝ちゃったんだろう。

 ぽやぽやする頭でそんな事を考えるが、後ろから「はぁ」と熱い息を吹きかけられて一気に目を覚ます。

 ……へっ!? ぼ、僕の後ろに誰かいるッ?!

 段々と意識がはっきりしてきて、自分の背後にいるのがドレイクだと気が付いた。そしてソファにいたはずなのに、なぜかベッドに寝かされている事も。

 ……ど、どうしてドレイクと一緒に寝てるの!?

 そう思うが自分がうっかり寝てしまった事を思い出し、それよりも後ろでドレイクが何かゴソゴソしていることに気がついて、僕はひっと息を飲んだ。

 ……ど、ドレイクってば後ろでシてるーッ?!?!

 ギャアアアッ!と叫んで飛び起きたいところだが、起きようにも起きられない状況だ。もし起きて『抱かせろ』とでも言われたら。

 ……この人ならやりかねない。もし今、下手に起きたら僕を無理やり手籠めに……。うーん、これはこのまま寝たフリをしておいた方が安全? 幸い、僕には手を出してないし。

 とは言っても後ろで自慰されてて、なんとも言えない気分になってくる。
 ドレイクは僕には触れていないけれど、横になっている僕の後ろで同じように横になり、僕のうなじを嗅ぎながら熱い息を吐いている。その色っぽい吐息に妙に胸がドキドキしてくる。

 ……もぉぉ、僕の後ろでハァハァしないでよぉぉぉっ。

 そう思うけれど声には出せない。けれど幸か不幸か、そろそろ終わりが近いようだ。

「はぁっ、うっ」

 扇情的な声に、僕も男なので今ドレイクがどういう状態か察する。でもわかるからこそ気まずいし、余計に恥ずかしい。胸の奥や体がムズムズしてくる。

 ……うぅ、早く終わってー!

 その想いが届いたのか、ドレイクは「くっ」と小さく呻いた後、「はぁー」と満足げな息を吐き、ベッド側に置いているティッシュを数枚取ってゴソゴソと僕の背後で動いた。

 ……や、やっと終わった?

 僕は寝たふりを続けたままホッとする。でもドキドキしている心臓の音がドレイクに届かないか不安になる。そして僕の何かを感じ取ったのか、ドレイクは僕に近寄った。

 ……もしかして起きてるの、バレてるーッ!?

 ドキッドキッとする心臓を何とか宥めて、僕は目を瞑ったまま息を潜めてじっとする。するとドレイクは僕に囁いた。

「起きてるか?」

 その問いかけに心臓が口から飛び出しそうなくらい驚いたけど、ぐぐぐっと堪えて寝たふりのままを続けた。そうすればドレイクはやや僕から距離を取った。

「やっぱり寝てるか」

 ドレイクは小さく呟くと、ベッドから下りて洗面所に向かった。そしてパタンっと小さく扉が閉まる音が聞こえた途端、僕は目を開けてどっと息を吐く。

 ……はぁ――――っ、心臓が縮まるかと思ったぁぁぁッ!

 まだ心臓はドギマギと喚いている。なのでフーッハァーッと深呼吸する。でも呼吸を整えながら、僕は改めてドレイクが『抱かせろ』と言ったのは本気なのだと悟った。

 ……どこか冗談かもしれないって思ってたけど、ドレイクはやっぱり本気なんだ。でも、どうして僕をそんなに抱きたいんだろう。会ったのだって今日で三回目なのに。ドレイクは僕が魔法をかけたんじゃないかって言っていたけど、やっぱり何か魔法が?

 僕は心臓のドキドキが収まりつつあるのを感じながら考える。でも、考えてもわからない。

 ……うーん、やっぱりわからない。こういう魔法って一度実行したら大抵解呪されることが多いんだよな。それか真実の愛のキスとか。でも僕はドレイクとは無理だし、真実の愛なんてない。そもそも、もう一度キスなんて無理。大体、人の後ろで自慰する奴なんてッ。……僕だって男だから時々はするけど、人の後ろでなんて絶対しないし!

 そう思うけど、さっきの色っぽいドレイクの吐息を思い出して体がなんだかムズムズしてくる。

 ……ひ、人の後ろでしないけど。ドレイク、気持ちよさそうだったな。

 ドレイクが達した時の事を思い出して、なんとなく手が下半身にそろりと伸びてしまう。
 しかしそんな時、ガチャッと洗面所の扉が開く音がして、僕は内心ビクッと驚く。けれど僕が起きている事に気が付いていないドレイクはそのままベッドに入ってきて、また僕の隣に寝転んだ。

 ……ひぃーっ、やっぱりこっちで寝るのー!?

 僕は内心冷や汗をかき、目を瞑っててもドレイクが僕の顔をじっと見つめてるのがわかる。

 ……人の顔を見て、なんなの?! さっさと寝なよ!!

 そう思うがドレイクは小さく呟いた。

「寝顔は可愛いもんだな」

 ドレイクの言葉にえ? と思うけど、ドレイクはそのまま横になると、数分後にはあっさりと寝息をかいて寝てしまった。

 ……最後のなに? カワイイ? ボクが???

 ドレイクは寝てもないのに寝ぼけていたのだろうか。そう思いつつも背後にそのドレイクはいるし、さっきの事もあって心の中は悶々、モヤモヤ。体はムズムズ。
 その上、ドレイクの明日も付きまとう宣言を思い出し。

 ……明日、どうなるんだろう。

 考えれば考えるほど全然眠れず、僕が眠りにつけたのは空も白み始めた頃だった。


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