森のおともだち

楠 ルカ

文字の大きさ
上 下
1 / 1

森のおともだち

しおりを挟む
あるところに、メイちゃんという女の子がいました。
メイちゃんは、おとうさんとおかあさんにいじめられていました。
だから、いつもおなかがペコペコで、お洋服もボロボロ。
メイちゃんはとてもやさしい子でしたが、とてもさみしかったのです。



ある日、メイちゃんは、一人で森へさんぽに行きました。
おかあさんに「森に行ってはいけないよ」と言われていましたが、メイちゃんはずっと行ってみたかったのです。

森はとてもしずかでした。
メイちゃんがあるくと、落ち葉がかさかさと音をたてます。

「とってもすてきな音!」

音がなるのが楽しくて、メイちゃんはスキップをしながらどんどん森の奥へとすすんでいきました。



しばらく行くと、はっぱとはちがう音がきこえてきました。
どうやらだれかのはなし声のようです。

「だれかいるの?」

耳をすませると、たくさんの声がきこえます。
メイちゃんはにぎやかな声が気になってしかたありません。
ドキドキしながら、声のするほうへ向かいました。



すこしあるくと、なんと、森のどうぶつたちがパーティーをひらいていました。
あのにぎやかな声は、くまやうさぎ、りすやとりなど、たくさんのどうぶつたちが楽しそうにおはなししている声だっだのです。
おいしそうなごちそうや、どうぶつたちが身につけているはっぱと木の実の首飾りに、メイちゃんはとっても嬉しくなりました。

「わあすてき!」

メイちゃんが笑うと、どうぶつたちがメイちゃんのまわりにあつまってきました。

「森のパーティーへようこそ。きみの名前はなあに?」
「わたしはメイっていうの。とっても楽しそうな声が聞こえたわ。わたしもパーティーに参加していいかしら?」
「もちろんだよ」

どうぶつたちは、メイちゃんがきたことをよろこびました。
すると、一羽のうさぎがメイちゃんになにかをさしだしました。
それは、赤と黄色と茶色のはっぱでつくった、とてもきれいな冠でした。

「さあ、メイちゃんへのプレゼントよ!  すこししゃがんでみて」

はっぱの冠は、メイちゃんにぴったりでした。
どうぶつたちはパチパチと手をたたき、にっこり笑いました。
メイちゃんも嬉しくて、にっこり笑いました。

「これでメイちゃんとぼくたちはおともだちだね」
「おともだち?」
「そうだよ。いっしょにあそんで、いっしょにわらったら、もうおともだちだよ」

ともだちがいなかったメイちゃんは、すこしだけ照れましたが、とてもよろこびました。



それからメイちゃんとどうぶつたちは、日が暮れるまでいっしょにあそびました。
ごちそうをたくさん食べたので、おなかはいっぱいです。
かわいい首飾りもつけたので、お洋服がとってもすてきになりました。

おうちの中にいたときは、こんなに楽しいことがあるなんて知りませんでした。
メイちゃんは、もうさみしくありません。
これからもずっとおともだちです。

おしまい。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

小さな歌姫と大きな騎士さまのねがいごと

石河 翠
児童書・童話
むかしむかしとある国で、戦いに疲れた騎士がいました。政争に敗れた彼は王都を離れ、辺境のとりでを守っています。そこで彼は、心優しい小さな歌姫に出会いました。 歌姫は彼の心を癒し、生きる意味を教えてくれました。彼らはお互いをかけがえのないものとしてみなすようになります。ところがある日、隣の国が攻めこんできたという知らせが届くのです。 大切な歌姫が傷つくことを恐れ、歌姫に急ぎ逃げるように告げる騎士。実は高貴な身分である彼は、ともに逃げることも叶わず、そのまま戦場へ向かいます。一方で、彼のことを諦められない歌姫は騎士の後を追いかけます。しかし、すでに騎士は敵に囲まれ、絶対絶命の危機に陥っていました。 愛するひとを傷つけさせたりはしない。騎士を救うべく、歌姫は命を賭けてある決断を下すのです。戦場に美しい花があふれたそのとき、騎士が目にしたものとは……。 恋した騎士にすべてを捧げた小さな歌姫と、彼女のことを最後まで待ちつづけた不器用な騎士の物語。 扉絵は、あっきコタロウさんのフリーイラストを使用しています。

ひみつを食べる子ども・チャック

山口かずなり
児童書・童話
チャックくんは、ひみつが だいすきな ぽっちゃりとした子ども きょうも おとなたちのひみつを りようして やりたいほうだい だけど、ちょうしにのってると  おとなに こらしめられるかも… さぁ チャックくんの運命は いかに! ー (不幸でしあわせな子どもたちシリーズでは、他の子どもたちのストーリーが楽しめます。 短編集なので気軽にお読みください) 下記は物語を読み終わってから、お読みください。 ↓ 彼のラストは、読者さまの読み方次第で変化します。 あなたの読んだチャックは、しあわせでしたか? それとも不幸? 本当のあなたに会えるかもしれませんね。

おねしょゆうれい

ケンタシノリ
児童書・童話
べんじょの中にいるゆうれいは、ぼうやをこわがらせておねしょをさせるのが大すきです。今日も、夜中にやってきたのは……。 ※この作品で使用する漢字は、小学2年生までに習う漢字を使用しています。

台風ヤンマ

関谷俊博
児童書・童話
台風にのって新種のヤンマたちが水びたしの町にやってきた! ぼくらは旅をつづける。 戦闘集団を見失ってしまった長距離ランナーのように……。 あの日のリンドバーグのように……。

稀代の悪女は死してなお

楪巴 (ゆずりは)
児童書・童話
「めでたく、また首をはねられてしまったわ」 稀代の悪女は処刑されました。 しかし、彼女には思惑があるようで……? 悪女聖女物語、第2弾♪ タイトルには2通りの意味を込めましたが、他にもあるかも……? ※ イラストは、親友の朝美智晴さまに描いていただきました。

シンデレラ バリエーション

冲田
児童書・童話
童話「シンデレラ」を題材にした もしも 物語です。

雪の降る山荘で

主道 学
児童書・童話
正体は秘密です。 表紙画像はフリー素材をお借りしました。 ぱくたそ様。素敵な表紙をありがとうございました。

ご近所クエスト

ぷりん川ぷり之介
児童書・童話
 小学校2年生の「ぼく」がはじめて1人で買い物へ出かける話です。  「少しの距離でも子供のころは大冒険だったな」とすべての人がどこかなつかしく感じる短い物語です。

処理中です...