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第二章 錬金術師と赤い竜 ~秘密遺言~
エピローグ 後継者
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そして、数日後……
あの後パウルとモニカらは、
遺産相続できず
意気消沈しているかと思いきや、
あの赤い竜の花火を見て、
新たな商品開発に閃きが浮かんだのか、
再び新たな公示鳥のモデルと
魔法感知薬の開発に勤しんでいるらしい。
前向きと言うか懲りてないと言うか。
ルロイは内心呆れつつも、
レッジョの人間らしいなと、
不思議と頼もしく思うのであった。
「昨日のあの花火、マジパネェよ!
本当、凄かったぜ!」
「創造せし英明ヘルマンの、
誉れ高き後継者リーゼ様万歳!」
「魔女だの淫売だのと言ってごめんよ。
今までアンタを誤解してたんだ……」
市井の風評とやらも著しく変化に
富むものらしく、
リーゼの忌まわしい評価も
一夜明けると一変しているのだった。
数日後、ルロイの事務所を訪ねてきた
リーゼはどこか浮かない表情で
いることがルロイには気がかりであった。
「リーゼさん。すごい人気ぶりですね」
ルロイの言葉に
リーゼは自嘲気味に笑った。
「ああ、ジジイの気持ちがわかったよ。
こりゃ確かに嫌になるかもねぇ」
それまで愉快そうに切れ長の瞳を、
切なげに細めしおらしく物思いに
耽っているらしかった。
心なしかルロイには今のリーゼが、
「これでよかったのか?」
と、天に召されたヘルマンに
問うているように見えた。
それも筋金入りの研究者である
リーゼには似つかわしくないと
自覚しているのだろう。
その切なげな表情は一瞬のことであった。
次の瞬間にはいつもの、
ふてぶてしい勿体つけた
表情に戻っていた。
「と言う訳で、
今度はあの花火を題材にして、
誰でも広範囲に及ぶ上位攻撃魔法を、
公示鳥の原型である骨組みに
動力源として火属性の魔法を込め、
相手方へ特攻させる。その名も
『特攻機甲鳥獣フェニックス』を、
鋭意開発中なんだが当然ここで
特許申請してくれるんだよねぇ。
ルロイ・フェヘール?」
切れ長の緑の瞳が、
新しい悪戯でも思いついたかのように、
ルロイを一瞥する。
どうやら懲りていないのは、
やはりパウル達よりもリーゼらしい。
「もう好きにして下さい」
「あっそ……ならば、
好きにさせてもらうぞ」
ルロイの投げやりな言葉に、
嗜虐的な琴線を刺激されたのか、
リーゼは邪悪な笑みを浮かべて
手元のスイッチを押した。
「そらぁ!」
その蠱惑的な響きと共に、
鳥形の造形物が爆音と共に響き渡る。
瞬間、紅蓮の炎が視界を覆い、
炎をまとった公示鳥らしい影が、
事務所の天井めがけ勢いよく
跳躍して羽ばたいたのだった。
「どうだ、あの花火ほどじゃないが、
なかなかに画期的だろう!
私の自信作なんだ」
盛大な爆発音とともに紅蓮の炎が、
事務所の屋根に広がってゆく。
「ちょっと。事務所の屋根
焼かないで下さい!」
今日も今日とてこんな日常が続いてゆく。
そんな慌ただしい珍事続きの
「レッジョの日常」が、
ルロイは存外うんざりしつつも
気に入っていたのであった。
つまりはこういうことだ――――
今日もレッジョの一日が始まる。
日常とは素晴らしい。
ルロイは苦笑いの底にこの街と、
そこに住まう人々への
腐れ縁のような親愛を、
見出していたのであった。
あの後パウルとモニカらは、
遺産相続できず
意気消沈しているかと思いきや、
あの赤い竜の花火を見て、
新たな商品開発に閃きが浮かんだのか、
再び新たな公示鳥のモデルと
魔法感知薬の開発に勤しんでいるらしい。
前向きと言うか懲りてないと言うか。
ルロイは内心呆れつつも、
レッジョの人間らしいなと、
不思議と頼もしく思うのであった。
「昨日のあの花火、マジパネェよ!
本当、凄かったぜ!」
「創造せし英明ヘルマンの、
誉れ高き後継者リーゼ様万歳!」
「魔女だの淫売だのと言ってごめんよ。
今までアンタを誤解してたんだ……」
市井の風評とやらも著しく変化に
富むものらしく、
リーゼの忌まわしい評価も
一夜明けると一変しているのだった。
数日後、ルロイの事務所を訪ねてきた
リーゼはどこか浮かない表情で
いることがルロイには気がかりであった。
「リーゼさん。すごい人気ぶりですね」
ルロイの言葉に
リーゼは自嘲気味に笑った。
「ああ、ジジイの気持ちがわかったよ。
こりゃ確かに嫌になるかもねぇ」
それまで愉快そうに切れ長の瞳を、
切なげに細めしおらしく物思いに
耽っているらしかった。
心なしかルロイには今のリーゼが、
「これでよかったのか?」
と、天に召されたヘルマンに
問うているように見えた。
それも筋金入りの研究者である
リーゼには似つかわしくないと
自覚しているのだろう。
その切なげな表情は一瞬のことであった。
次の瞬間にはいつもの、
ふてぶてしい勿体つけた
表情に戻っていた。
「と言う訳で、
今度はあの花火を題材にして、
誰でも広範囲に及ぶ上位攻撃魔法を、
公示鳥の原型である骨組みに
動力源として火属性の魔法を込め、
相手方へ特攻させる。その名も
『特攻機甲鳥獣フェニックス』を、
鋭意開発中なんだが当然ここで
特許申請してくれるんだよねぇ。
ルロイ・フェヘール?」
切れ長の緑の瞳が、
新しい悪戯でも思いついたかのように、
ルロイを一瞥する。
どうやら懲りていないのは、
やはりパウル達よりもリーゼらしい。
「もう好きにして下さい」
「あっそ……ならば、
好きにさせてもらうぞ」
ルロイの投げやりな言葉に、
嗜虐的な琴線を刺激されたのか、
リーゼは邪悪な笑みを浮かべて
手元のスイッチを押した。
「そらぁ!」
その蠱惑的な響きと共に、
鳥形の造形物が爆音と共に響き渡る。
瞬間、紅蓮の炎が視界を覆い、
炎をまとった公示鳥らしい影が、
事務所の天井めがけ勢いよく
跳躍して羽ばたいたのだった。
「どうだ、あの花火ほどじゃないが、
なかなかに画期的だろう!
私の自信作なんだ」
盛大な爆発音とともに紅蓮の炎が、
事務所の屋根に広がってゆく。
「ちょっと。事務所の屋根
焼かないで下さい!」
今日も今日とてこんな日常が続いてゆく。
そんな慌ただしい珍事続きの
「レッジョの日常」が、
ルロイは存外うんざりしつつも
気に入っていたのであった。
つまりはこういうことだ――――
今日もレッジョの一日が始まる。
日常とは素晴らしい。
ルロイは苦笑いの底にこの街と、
そこに住まう人々への
腐れ縁のような親愛を、
見出していたのであった。
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