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10.王子を追い詰めろ(前編)

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 その日から私はルキと共にマーティン王子の悪事を暴くことに力を注いだ。

 と言っても、情報を仕入れてくるのはルキがほとんどだった。


 ルキは交友関係が広く、その中にマーティン王子と関係を持っている女性も混ざっていたのだ。


「ついに証拠を掴んだぞ」


 ある朝ルキが私に向かって一枚のシワのよった紙を差し出した。


「これは何……?」

「マーティン王子直筆の指示書だ」

 見ると、そこにはマーティン王子が私を襲わせたあの日のことを指示する内容が記載されている。


「ええ? すごい! こんなものどうしたの?」

「知り合いにあたってマーティン王子がまたイルアとよりを戻そうとしていることを話したら、あっさり教えてくれたよ」


 私はマーティン王子のことはお断りだが、やはり王家の血筋やマーティン王子のイケメンな見た目もあって、マーティン王子と結ばれたいと思う女子は案外多い。

 特にマーティン王子と関係を持っていた女性たちは、私のことをよく思っていないことが多く、ルキはそういった点を利用してうまいことマーティン王子の指示書を手に入れることに成功したようだ。


「確かにマーティン王子の筆跡のようだけど、これを本人が認めるかしら?」

「大丈夫だ。言質もちゃんと取ってある」


 ルキは何か案があるのかニヤリと笑った。


 それから程なくして、再びマーティン王子が私達の公爵家に訪れる日が来た。

 その時公爵家の敷地内に入ったところで、ルキがマーティン王子を呼び止めた。

 私は父親や縁の深い王家の関係者とともに、影からこっそりルキを見守る。

 ルキが何を考えているのかはわからないが、こんなことをして大丈夫なのだろうか。

 一歩間違えればマーティン王子に目をつけられたり、最悪の場合社会的地位を危うくさせられたりすることだってあり得る。私に婚約破棄を言い渡した時やその後がいい例だ。マーティン王子は相手のことを潰すためだったら、どんな手段だって使ってみせるだろう。


「マーティン王子」

「君は……騎士団の……」

「先日はご無礼を失礼いたしました」

「別に構わない……」

「つかぬ事をお伺いしますか、こちらはマーティン王子が書かれたものですよね?」


 ルキは露骨にマーティン王子に、例の手紙を突きつけた。

 ええ? 最初から見せちゃうの!?

 驚いたが、出て行くわけにはいかずこっそりと事の成り行きを見守る。


 するとやはりマーティン王子はそんなもの知らないとばかりに、鼻で笑って口を開いた。


「なんだいその紙切れは。僕をからかってどういうつもりだい?」

「真剣に話していますよ。それでは王子、お伺いしますが、リリィという女性はご存知ですか?」

「学園の優秀な生徒の一人だ。知っている」

「彼女が懐妊されたということはご存知でしょうか? マーティン王子との子だと言う話ですが」

「何をデタラメな……!」

「最近彼女と話し合ったんじゃないんですか? そしてその時、あなたは自分の口から、婚約解消直後にイルアを襲わせた事を暴露しています」

「なに?」
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