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第15話 魔法少女の先輩たちっているんですよね?
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無事任務を果たして帰還した私を、ティーツィアの人たちは拍手で迎えてくれた。
「よくやってくれました!」
「初陣で見事な成果です!」
「また奴らに一矢報いることができた!」
「さすが我らの魔法少女!」
「次も頼みますよ!」
箕輪さんも東山さんも布施さんも、名前を知らない人たちも、満面の笑顔だ。
「ココロンさん、本当にありがとう。プロジェクトを代表してお礼を言います」
箕輪さんそう言われて私は恐縮してしまった。
「いえ、そんな。まだ一回だけですし、ビギナーズラックかもしれません。引き続きご指導よろしくお願いします」
そう言って私は頭を下げた。
「鍛錬の成果が出てよかったわ」
つくし……いや、テイル先生も来てくれていた。
まだ一回にしても、魔法少女になってよかった、そう実感した。
「今日のバイトはどうだった?」
椎乃といつものお風呂ビデオ通話。
「最近バイトに行く日はいつも緊張しているようだったから」
「それはもうバッチリよ!」
私は笑顔で椎乃に向けて親指を立てる。
「今日はね、とっても大きな任……仕事をやり遂げたの。私がこの世界で必要とされていることを実感したわ」
「こころがバイト頑張っているのはわかるけど、世界っていうのは大げさね」
椎乃が画面の向こうで苦笑している。
「あ、世界って業界ってこと? それならわかるわ」
ホントのホントの世界なんだよ。
それに、マールムは奪ったお金を武器に換えているのかもしれないんだから、世界を少しは救ったと言っても大げさではないよ。
「二の腕も引き締まったし、必要とされているってことだし、よっぽどいいバイト先なんだね。私にも紹介してくれない?」
椎乃も魔法少女になってもらって、二人で一緒に戦うのもいいかもしれない。
「じゃあ椎、私と一緒に魔法少女になる?」
いや、さすがに何でも話せる親友でもこれは言えないな。
でも、仲間がほしいといえばほしい。
魔法少女になれなかったつくし先生は紹介してもらえたのに、ほかの魔法少女って紹介してもらっていない。
私しかいないのかな。
箕輪さんは、ほかにもスカウトした人がいるって言っていた。
マールムの人も、帰還したときに迎えてくれた人も、「また」って言っていた。
東山ハンドラーも、ディテクターの人たちも、手慣れた感じだった。
ということは、前には誰かがいたのは確かだ。
その人たち、先輩たちはどうしちゃったのだろう。
「こころ、どうしたの? 考え込んじゃって。元はと言えば、こころにDMでオファーがあったバイトなんだから、私じゃ無理なのかもしれないよ」
「あ、ごめん。椎と一緒に働く姿を想像していたの」
先輩たちのことは、今度箕輪さんに聞いてみよう。
次の出勤日、少し早めに出勤した私は箕輪さんに聞いてみた。
「あの、魔法少女の先輩たちっているんですよね? もしいらっしゃったらお会いしたいです」
「もちろんいますよ。というか、いましたよ」
「いました? その方々は今どうしていらっしゃるのですか?」
「みなさん活躍されたあとに、引退されたんですよ」
「引退?」
「最初お会いしたときに、力の源泉である活力は十代中頃の少女が一番持っているけれど、年齢を重ねるにつれ減っていくと言ったのを覚えていますか」
「はい、覚えています」
「活力の減り方は人それぞれで、早くに減ってしまう人もいるのですよ。今までプロジェクトに参加してマールムと戦ってきた人たちはたまたま減り方が早くて、危険なことになる前に引退してもらいました。さしずめ『卒業』ってところでしょうかね。彼女たちにはとても感謝していますよ」
「そうだったんですか。最後の方がご卒業されたのはいつ頃ですか?」
「ココロンさんがここに来る前、四月の中旬でしたね。そのあとは普通の生活に戻って、学生生活を楽しんでいるはずですよ」
「そうしたら、どなたか引退した先輩に会うことってできませんか。経験談を伺えれば戦いに役立つと思うのです」
「それは残念ながらできません。このプロジェクトは秘匿性が高いと言ったと思いますが、引退した方と現役の方とは接触できないことになっています」
「そうなんですか……」
「現役の方同士は会うことができます。テイルさんは魔法少女になれなかったとはいえプロジェクトの一員なので、会っていただいた次第です」
「そうしたら後輩はいませんか?」
「今適性のある方を探しているところです。いつまでもココロンさんひとりに負担はかけられませんからね。新人をスカウトしたら紹介します。そうしたら経験を伝えてくださいね」
「わかりました」
その日もマールムが出現した。
「トランスフォルマーレ! ムーヴェンズ!」
銀行の金庫室へ瞬間移動する。
「今日も来たぞ!」
「後ろに回れ!」
前後からマールムの男たちが同時に襲いかかってくる。
同時といってもどうしてもタイムラグができる。
タイムラグを利用して、前から襲ってきた男、後ろから襲ってきた男の順で投げ飛ばす。
「ムーヴェンズ!」
倒れた男たちをどこかへ飛ばす。顔はわからないけれど、背格好から見てこの前の二人と同じ男たちだろう。
どうやら前回時空の狭間に飛ばしたのではなさそうなので、ちょっと安心した。
いや、再び罪を犯した人間相手に安心してはいけない。
でも、私の任務はマールムの人たちを亡き者にすることではない。そのはずだ。
今度も男たちは戻ってこなかったので、私も本部に帰還する。
「よくやってくれました!」
「初陣で見事な成果です!」
「また奴らに一矢報いることができた!」
「さすが我らの魔法少女!」
「次も頼みますよ!」
箕輪さんも東山さんも布施さんも、名前を知らない人たちも、満面の笑顔だ。
「ココロンさん、本当にありがとう。プロジェクトを代表してお礼を言います」
箕輪さんそう言われて私は恐縮してしまった。
「いえ、そんな。まだ一回だけですし、ビギナーズラックかもしれません。引き続きご指導よろしくお願いします」
そう言って私は頭を下げた。
「鍛錬の成果が出てよかったわ」
つくし……いや、テイル先生も来てくれていた。
まだ一回にしても、魔法少女になってよかった、そう実感した。
「今日のバイトはどうだった?」
椎乃といつものお風呂ビデオ通話。
「最近バイトに行く日はいつも緊張しているようだったから」
「それはもうバッチリよ!」
私は笑顔で椎乃に向けて親指を立てる。
「今日はね、とっても大きな任……仕事をやり遂げたの。私がこの世界で必要とされていることを実感したわ」
「こころがバイト頑張っているのはわかるけど、世界っていうのは大げさね」
椎乃が画面の向こうで苦笑している。
「あ、世界って業界ってこと? それならわかるわ」
ホントのホントの世界なんだよ。
それに、マールムは奪ったお金を武器に換えているのかもしれないんだから、世界を少しは救ったと言っても大げさではないよ。
「二の腕も引き締まったし、必要とされているってことだし、よっぽどいいバイト先なんだね。私にも紹介してくれない?」
椎乃も魔法少女になってもらって、二人で一緒に戦うのもいいかもしれない。
「じゃあ椎、私と一緒に魔法少女になる?」
いや、さすがに何でも話せる親友でもこれは言えないな。
でも、仲間がほしいといえばほしい。
魔法少女になれなかったつくし先生は紹介してもらえたのに、ほかの魔法少女って紹介してもらっていない。
私しかいないのかな。
箕輪さんは、ほかにもスカウトした人がいるって言っていた。
マールムの人も、帰還したときに迎えてくれた人も、「また」って言っていた。
東山ハンドラーも、ディテクターの人たちも、手慣れた感じだった。
ということは、前には誰かがいたのは確かだ。
その人たち、先輩たちはどうしちゃったのだろう。
「こころ、どうしたの? 考え込んじゃって。元はと言えば、こころにDMでオファーがあったバイトなんだから、私じゃ無理なのかもしれないよ」
「あ、ごめん。椎と一緒に働く姿を想像していたの」
先輩たちのことは、今度箕輪さんに聞いてみよう。
次の出勤日、少し早めに出勤した私は箕輪さんに聞いてみた。
「あの、魔法少女の先輩たちっているんですよね? もしいらっしゃったらお会いしたいです」
「もちろんいますよ。というか、いましたよ」
「いました? その方々は今どうしていらっしゃるのですか?」
「みなさん活躍されたあとに、引退されたんですよ」
「引退?」
「最初お会いしたときに、力の源泉である活力は十代中頃の少女が一番持っているけれど、年齢を重ねるにつれ減っていくと言ったのを覚えていますか」
「はい、覚えています」
「活力の減り方は人それぞれで、早くに減ってしまう人もいるのですよ。今までプロジェクトに参加してマールムと戦ってきた人たちはたまたま減り方が早くて、危険なことになる前に引退してもらいました。さしずめ『卒業』ってところでしょうかね。彼女たちにはとても感謝していますよ」
「そうだったんですか。最後の方がご卒業されたのはいつ頃ですか?」
「ココロンさんがここに来る前、四月の中旬でしたね。そのあとは普通の生活に戻って、学生生活を楽しんでいるはずですよ」
「そうしたら、どなたか引退した先輩に会うことってできませんか。経験談を伺えれば戦いに役立つと思うのです」
「それは残念ながらできません。このプロジェクトは秘匿性が高いと言ったと思いますが、引退した方と現役の方とは接触できないことになっています」
「そうなんですか……」
「現役の方同士は会うことができます。テイルさんは魔法少女になれなかったとはいえプロジェクトの一員なので、会っていただいた次第です」
「そうしたら後輩はいませんか?」
「今適性のある方を探しているところです。いつまでもココロンさんひとりに負担はかけられませんからね。新人をスカウトしたら紹介します。そうしたら経験を伝えてくださいね」
「わかりました」
その日もマールムが出現した。
「トランスフォルマーレ! ムーヴェンズ!」
銀行の金庫室へ瞬間移動する。
「今日も来たぞ!」
「後ろに回れ!」
前後からマールムの男たちが同時に襲いかかってくる。
同時といってもどうしてもタイムラグができる。
タイムラグを利用して、前から襲ってきた男、後ろから襲ってきた男の順で投げ飛ばす。
「ムーヴェンズ!」
倒れた男たちをどこかへ飛ばす。顔はわからないけれど、背格好から見てこの前の二人と同じ男たちだろう。
どうやら前回時空の狭間に飛ばしたのではなさそうなので、ちょっと安心した。
いや、再び罪を犯した人間相手に安心してはいけない。
でも、私の任務はマールムの人たちを亡き者にすることではない。そのはずだ。
今度も男たちは戻ってこなかったので、私も本部に帰還する。
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