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14.刑事ドラマの再現やりたいんです!
しおりを挟む「あのですね、皆さんに今回の事件の解決策の一つとして聞いてもらいたい案がありまして…」
「カズハ、駄目だよ?」
ひぇっ!!ヨ…ヨアンさんの笑顔が怖い!さっきもめちゃくちゃ反対されたけど…この先に続く言葉を言わせないようにしてますね?いや、だって最良だと思うのよ、わたしの案は。
でも!駄目です。だって!いけません。そう言わず…!駄目っていったら駄目です。
この押し問答を何巡目かしたところでルーシーさんからストップがかかった。
…止めてくれてありがとう…。
「一体どうしたのよ?ヨアンも人の話を遮ったりなんかして、珍しいわね」
「遮ってなどいないよ。さっきカズハから聞いた上で反対しているんだ」
「カズハ何を言ったの?」
「聞いてくれます?!実は-」
「カズハ。良い子だから少し黙りましょうか」
あぁぁ、全っ然話が進まない!そしてヨアンさんの笑顔がどんどん凶悪に?!たまらずルーシーさんをチラッと見て助けを求めてしまった。
「ヨアン、あなたがちょっと黙って。カズハ、私にも教えてくれる?」
「ルーシー!」
「あ・な・た・が・だ・ま・っ・て!」
どうやらヨアンさんはルーシーさんには逆らえないらしい。本当に黙ってしまった。ルーシーさん、恐るべし!
「えー、では発表します!今回の事件、わたしを囮につかってください」
「「「は?」」」
おー!見事にハモりましたね!
「あ、やっぱり安直過ぎました?わたし、自覚はないですけど、この国では珍しい色を持ってるみたいなので、適当に外をウロウロしてたら狙って姿を現すんじゃないかなぁって。囮捜査ってちょっとやってみたかったんですよねぇ!」
完全に刑事ドラマの影響!危険かもしれないけど、でも帰るまでの一年間ずっと同じ部屋で軟禁状態は本当に辛い!既に辛い!
先日突然部屋に現れた銀髪発光美女様に守りの魔法を頼んだのも、囮になっても死なない程度に守ってくれたらなぁと思ってのこと。どうやらそんなの必要ないくらい強い守護霊らしきものが付いてるみたいだけど…。
自分が囮になることに不思議とあまり恐怖を感じないのは無意識に加護を感じているからなんだろうか?
「子供にそんなの頼めるわけねーだろ!」
「そうです。なぜあなたがわざわざ危険に飛び込む必要がありますか?怖い思いをするのは一度で十分なはずですよ」
ひぇぇ!レイナルドさんとジルさんがめっちゃ怒ってる!
でもねえ、誘拐事件が頻繁に起こってても足取りが全くつかめてないんでしょ?じゃあもう誘き寄せるのが手っ取り早いと思うんだよ。
しかもわたし子供でもないし、既に一度拐われた体で話してるし…。
「お嬢ちゃん、それは俺らも反対だぜ?」
「でも早くアジトを見つけないと、拐われた人達がその間もどんな仕打ちをされるかわかりません。しかも小さな子供達もいる可能性が高いんですよね?それともこれに勝る案でもありました?」
機密情報っぽいし、もしかしたらここでは話せないだけで、秘策があるのかもしれない。
「いや…それは…その…まだ…無い」
無いんかーい!
「ジルさん!あなたの恋人(予定)が心配じゃないんですか?!わたしはわたしなりにメリットがあるから提案してるのであって、嫌々でも何でもありません。ので、罪悪感とか感じる必要は無いですよ」
「感じるわ!それにマノンとお前と比べるものじゃない。どちらかが犠牲になるとか、そういう選択はないんだ」
「…お嬢ちゃんのメリットって何だ?」
「早く解決してもらえると自由に外を歩けますし、住むところも見つけられます。今はルーシーさんの所でお世話になってますが、わたしのせいで宿泊客お断りしてるでしょ?誰にも迷惑をかけたくないんです」
「そこは心配いらないのよ?別に宿泊費で生活費を稼いでるわけじゃないもの」
え?そうなの?主な収入源じゃないの?実は道楽でやってるセレブなの?ヨアンさんもルーシーさんも謎過ぎる…。
「だいたい子供が独り暮らしでもするつもりか?そんなに甘くないぞ!」
「あ、勿論生活のために就活はしますよ?働かざる者食うべからず、と言いますし。ルーシーさんたちにもきちんとお返しします」
ここに来てから毎日食事も出てお風呂も入れて、食費も光熱費もだいぶお世話になった。円滑な人間関係のためにはそこはきちんとしないとね。
「お前…どんだけしっかりしてんだよ。でも子供の独り暮らしなんて聞いたこと無いぞ。この事件が解決したところで危険は危険だ。子供一人と知られたら簡単に入られるぞ。何処にでも悪い大人はいるんだ」
えーと、そろそろ訂正した方がいいよね。ルーシーさんたちも何でわたしの実年齢隠してるのかよくわかんないけど、多分特に意味は無い気がするし。面白がってるだけでしょ…確実に!
「はい、注目!ちょっと訂正しますね。わたし、皆さんが思うほど子供じゃないです。自国では独り暮らししてましたし」
「それって…親の育児放棄じゃないのか?」
「じゃなくて。もうね、言っちゃいますけど、わたし二十一歳です!成人してます」
「「「?!!」」」
あ、ルーシーさん達「もうバラしちゃったの?つまんなーい」って聞こえてますよー!
「に…二十一歳…マジか…」
「いや、冗談だろ?」
「そんな嘘ついてまでこの作戦に参加したいのか?」
あ、あれ?カミングアウトしたのに誰も信じてない?そんな童顔じゃないんですけど…。ここまでくると逆にこの国の十三歳前後の子供見たいわ!どんだけ老けてんのよ…。
いや、身長か?!身長で子供と思われてるのか?!153センチ…馬鹿にすんなよー。
「皆さん、身長で子供と決めつけてますね…?」
自分のコンプレックスを抉られてジト目で睨んでしまった。これ、めっちゃ気にしてますからね!友達みんな百六十以上だったから余計にね!
「いやまぁ、体も小さいが…顔も十分幼い…ぐはっ!!」
「ジル、あなたは少し空気をよんだほうがいいわよ」
おおう…久しぶりに見たルーシーさんの攻撃…。細い腕で強烈な腹パンチ…。
そうか、この国ではわたしは幼く見えるのね。よくある東洋人は年齢がわからないというやつか。
「とにかく、二十一歳です。ので、この囮捜査も問題ありません!」
「いやいやいや、歳の問題でもないでしょうよ…」
ああっもう!段々イライラしてきた。別にそれでいいっていってるんだから。
わたしも人目を避けて与えられたものをただただ甘受して…本当にもう無理。この生活限界。
好きな時に好きな場所を散歩したいし、非現実的だけど現実に異世界にいるわけだから食べ歩きなんかもしたい。賑やかな街を買い物して歩きたい。仕事もここでしか出来ない環境で働いてみたい。
最初は勝手に連れて来られて、実際は穴に落ちたようなものだけど、早く帰りたくて、でも過ごす内に冷静に「留学先がフランスから異世界に変更なっただけ」と思えるようになって、むしろラノベ世界キター!って感じでちょっと楽しめそうだと考えてた。でも誰にも会わないように、限られた空間だけで過ごすのは思った以上に辛い。ホームシックです。
一度気持ちが落ちると次々と浮かんでくる未練といったら…。
食事もそろそろ素麺が恋しい。キリッと冷えた炭酸飲みたい。ちょっと高級なアイス食べたい。…好きなものに囲まれた自分の部屋に帰りたい…。
「まあ…あれだ、お嬢ちゃんも年頃だし窮屈なのはわかった。今着てるその服は故郷の装束か?」
「はい。やっぱり変ですか?」
「いや?かなり珍しいが別におかしくはない。が、きっとこの国の衣装も似合うはずだ」
「は…はぁ」
「お嬢ちゃんが自由に服屋に行けるようにしよう」
「?」
「つまりだ、俺たちを信じてくれるか?」
何が言いたいのかよくわからない。
「囮捜査に協力してくれ。必ず守る!」
「え?!本当?!やってもいいの?!」
ブラボー!マッチョさん!分かりやすく沈んだわたしが不憫になったのだろうか。なんでもいい、とにかく自由になりたい。
あれ?レイナルドさんの反応が無いな。そう思ってチラりと彼の方を見たら見事に固まったままだった。ごめん、それどの箇所の反応なの?年齢のくだり?それとも囮捜査の許可が出たくだり?
五分後やっとレイナルドさんの意識が戻ってきた。
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