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冒険者編

入学 05

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 ロックが解除された扉を潜ると一転して小さな部屋になっている。

「なんじゃこの部屋は? てっきりボスを倒したら勝利報酬の宝箱でもあるのかと思ったんだがの……」

 リリアはガッカリしているように見えるが、俺やフレーナから見ればコンピュータールームに見えなくも無い。
 中央にあるデスクの操作パネルっぽい部分に触れるとディスプレイが点灯する。

「エイジ殿、それが何だかわかるのですか?」

「あぁ、まぁ、何となく分かる」

 適当に操作していると、どうやらリリアの言ったとおりボスを倒した報酬として先程の戦操兵ウォーレムの設計データが手に入るようだ……いらねぇ。

「妾もエイジのえくすてぃたーんを見ていなければ、この戦操兵ウォーレムでも大喜びをしておったのじゃがの」

「この戦果を我が物とするも中央学院セントラルアカデミーに提供して戦果とするかは自由です」

「そういえばそうだったな……これは戦果として提供で良いな」

 提供された戦果は全ての国が使用出来るようになる。つまり、先程戦った戦操兵ウォーレムを他国が作る事が出来るようになるって事だな。

「まぁ、あの程度なら問題ないね~それよりも素材が欲しいね」

「何機か作れる素材は手に入るらしい。今、さっきのボスルームに搬出されるように操作した。あと、ダンジョンの更に先に進む転送ゲートもアクティベートされた」

 他にも何か無いか調べてみたが情報は最低限しか閲覧出来なかった。それどころか戦操兵ウォーレムのデータと素材、転送ゲートを出現させたら役目を終えたとばかりに何も表示されなくなってしまった。
 それにしてもリリア達はこれが何かわからなかったようだが、他の学生はボスを倒してもこの端末の操作をできるに手ぶらで帰る事になったりしないのか?

「そうならないために、失われし技術ロストテクノロジーに詳しい技術者を雇って連れて行くのが常識なのですが……まさか、それすらも必要ないとは」

「優秀な技術者は大国が長期の契約を結んだりするのじゃ。ワレワールにも妾が入学するまでフリーでいて貰う為に継続的に報酬を払っている者がおるわ」

「なるほど、そういう人材確保も王の資格を得るために大事という訳なんだな」

あるじ、床から四角い塊がたくさん出てきてるぞ」

「そうか、俺達にとっては真の報酬が出現というわけだな」

 小部屋を出ると巨大な金属の塊や、電子部品っぽい物など様々なパーツが床に置かれていた。俺はそれを片っ端からDSに収納していく。

「本来これだけの物を輸送する手段の確保も大変なんじゃがのう」

「余所は余所、うちうちです」

 なんて話している内に素材の収納は完了した。この転送ゲートは先に進む事も中央学院セントラルアカデミーに戻る事も出来るようだ。
 サクッと入学資格を得るために帰るとするか……などと思っていると、ボスルーム入口側の扉が開いた。
 そこから5機ほどの戦操兵ウォーレムと20人ほどの人間が現れる。

「なっ、何も無いだと、それにワレワールの姫共々無事だと!?」

 ここに来る前にイチャモン付けていたおっさん……ゲイオンだったか? が、ボルスームの様子を見て驚きの声を上げている。
 本来なら入学試験の優しいダンジョンではなく激戦区の深層エリアに転送されて殺されるよう仕向けたはずが、結果はこの状態だからな……狼狽えはするだろう。

 戦操兵ウォーレムは俺達を囲むように移動してくる。そして5人ほどボスルームの奥の小部屋に入っていった。

「貴様ら、何故ここにいる……ルームガーダーはどうした?」

「言っている意味がわからんな。入学試験はここにいる奴らを倒すって事で良かったんだろう? 入学試験らしく優しい内容だったな」

「ふざけるな!! ここは我らファーガスの……学院アカデミートップクラスだけが挑める深層エリアだぞ!!」

「あ? どういう事だよ、俺達は学院アカデミーから言われたとおり試験をクリアしただけだって言っているだろう? なんだ? それともここは入学前の人間じゃクリア出来ないダンジョンでそれをわかってて俺達を向かわせたってのか?」

「そ、それは何かの手違いがあったのかもしれんが……と、とにかくお前らが深層エリアのボスを倒すなどあり得ん、一体どんな手を使ったんだ!! 何の痕跡すらも無いなどあり得ん!!」

 ゲイオンが顔を真っ赤にして怒鳴ってくる。こいつにとってこれは許容しがたい事態らしい。

「手の内を見せる必要は無いだろう……それより、そっちこそそんな大所帯で何しに来たんだよ。俺達が死んだかの確認にでも来たのか?」

「ぐっっ!? な、何を言っている……手違いがあったから救援に来たのだ」

「その割にはのんびりしたご到着だな。俺達ものんびり休憩出来るくらいの時間は経っているし、随分頼もしい救助隊だぜ」

「おのれ、度重なる無礼な物言い……貴様、覚悟は出来ているんだろうな」

「おいおい、何で俺が悪い事を言ったみたいになってるんだよ。ありのままの事実を述べただけだろう。
 間違いを指摘されてそれを認められないなんて成人した大人の対応とはとても思えないな」

「ゲイオン様、モノリスには何の反応もありません、全て回収済みのようです」

 ゲイオンが白熱している最中、小部屋に入った何人かが戻ってくると報告してくる。まさか、あわよくば成果を横取りしようとしていたのか?

「なんだと……まさか、貴様、失われし技術ロストテクノロジーの知識まであるというのか?」

「何が言いたいかわからんが手の内を見せる必要は無いよな?」

「言え、ここで何を手に入れた!!」

「答える必要も無いよな?」

 ゲイオンが手を振り上げると俺達を包囲している戦操兵ウォーレムが武器を構える。

「ここは元々ファーガスの探索している深層エリアだ、その報酬を受ける権利があるのは我々ファーガスにあるのだ!! もう一度言うぞ、答えろ……命が惜しければ」

「やれやれ、俺達を罠に嵌めて自称”難しいダンジョン”に送って殺そうとしただけでは飽き足らず、その成果まで奪おうってか? だとしてもしっかりと状況判断した方が良いぞ」

「負け惜しみを……この状況で軽口をたたける事は褒めてやる。ふん、最初からこうしておけば面倒が無かったわ。もういい、れ」

 その声を合図に小部屋から出てきた5人以外の人間も武器を構えた。

「抜いたな? そっちから手を出してきたって事で良いな?」

「何を言おうとお前達はここから帰らぬ人間だ……死んで後悔しろ」

 その途端に俺達を囲んでいたうち後方にいる2体の戦操兵ウォーレムが転倒すする。倒れた戦操兵ウォーレムの足が円形状にゴッソリと削られていた。

「な、何だ!! 何が起こった!!」

「まともな状況判断が出来ないお前に教えてやろう……そもそもこの部屋にいた戦操兵ウォーレムを倒せる実力がある相手だと言う事になんで気づかないんだ?」

「そうだね、この程度の防御力ならボクの魔法で普通に壊せるしね~」

「ぐあっ」「ぎゃあ、足が!!」「後ろから!?」


 フレーナの魔法で戦操兵ウォーレムが転倒している隙に、アナチャパの投げたククリが縦横無尽に飛んで行き武器を構えている何人かが倒れていく。

「な、いつ攻撃を!?」

「それがわからない時点で実力差があるという事だ……勉強になったか? もっと今学んだ事を生かす場面がこの後には無い」

「いでぇ」「ぎゃ!」「魔法か!?」

 DSから取り出した 二丁拳銃ケルベロスで残りの人間を攻撃していく。

 戦操兵ウォーレムは包囲を抜けてきた人間を攻撃する予定だったのか、味方の誤射を恐れて俺達の戦いに介入出来ないでいた。

「だからといってボーッとしているのは悪手だけどね」

 フレーナが残りの戦操兵ウォーレム闇の球体を放つと、その巨大な頭を消し飛ばしていった。

「ばかな、入学前の若造が何故こんなにも!! 戦操兵ウォーレムを破壊出来る魔法などあり得ない!!」

「あなた達は動かないで下さい」

「ほれほれ、妾を暗殺するんじゃ無かったのか?」

 エイシャは技術者っぽい人間を制圧していた。リリアは自分が目標だというのに積極的に攻撃に参加している。迂闊と言えば迂闊なのだがこの実力差なら問題ないだろう。



 敵を制圧するのにはそれから5分もかからなかった。

 全員縛って拘束した……もちろん戦操兵ウォーレムはボッシュートだ。

「きさま、こんな真似をしてただで済むと思っているのか」

「なんでお前らってテンプレな反応しか出来ないんだ? あと、拘束されて殺されないとわかった途端に粋がるがの笑える」

「おのれっ!! 貴様、このまま戻ればどうなるか……」

「あーはいはい、自分の方が信用があるから俺達が罰せられるとか言いたいんだろう? そういう面倒くさい主張とかどうでもいいから、さっさと歩け」

「くそっ、絶対に許さん」

 俺はごちゃごちゃ言っているゲイオン達を小突いてゲートまで移動させる。



 ……ゲート脇にある端末を操作して中央学院 セントラルアカデミーへ帰還を選ぶと地面が輝きだして視界が光に包まれた。



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