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エネミースレイヤーズ
2-22「まさかダンスのお相手が待ち構えているんじゃ無いだろうな」
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しっかりとアイシャをキャッチした僕は2度目の対岸の階段へ……壁にぶつかりながらの……着地を成功させる。上からはプリンス・オブ・ホーンが追いかけるように落ちてくる。足には先程投擲したダガーがしっかりと刺さっているけれども、まだまだ元気なようだ。
奴の落下軌道は階段に着地出来ないはずだけれど、嫌な予感がしてアイシャを抱えたまま階段を駆け下りる……すると後ろでは破壊音と共に長い手を階段に引っかけて外壁に組み付いていた。
「器用な奴だ」
「ねぇ、もう、下ろして貰っても大丈……」
「喋るな、舌をかむぞ」
「きゃっ!?」
やつは直ぐに階段に上がると追いかけてくる。とにかく階段での戦闘は不利だよ、平らな地面ならまだ何とかなる……気がする。
奴との距離が少しずつ縮まってくるのが【サーチ】で分かる。背筋が震えたタイミングで身をかがめると、頭上を何かが風を切りながら通り過ぎていく。もちろん僕はそれが何かを分かっていて、その何かはそのまま壁を破壊する。
もう倒せないタイプの追跡者から逃げるのはゲームの中だけで良いよ!! 今後しばらくの間はサバイバルホラーはやめて美少女いっぱいのアドベンチャーゲームを遊ぼうと心に決めた。
少し距離が稼げたけれど人を抱きかかえて走っているせいか、直ぐに追いつかれる。今度は足下を攻撃してくる……僕もそれを予知して高くジャンプする。
「~~~っっ!!」
アイシャが僕にぎゅっとしがみつく……あふん、頬に柔らかく暖かい肌を感じる。きっとこの状況で無ければ色々な妄想をしていたのだろうけれど、不幸中の幸いか生存本能が上回った。
足をもつれさせる事も無くうまく着地すると、そのまま勢いを落とさずに駆け下りる。【サーチ】で確認すると奴はその場で動いていない……やばい、このパターンはさっきあったよね?
それが何かを思い出す前に巨大な魔獣が足下の階段を破壊しながら目の前に落ちてきた!!
僕は奴の目の前で90度向きを変えると、螺旋階段の対岸に向けて飛び降りる……【身体強化】が無ければとっくの昔に足を複雑骨折していたのじゃ無いかな? 【身体強化】万歳!!
先程と同じ要領で何とか着地すると、当然奴も飛び降りて追ってくる……僕は落下中に回避出来ない事を利用して【ハイスロー】で投擲!!
ちょ、剣身の側面……刃のついていない方……を叩いてダガーを弾き飛ばした!? 本当に目が良すぎじゃない?
僕はその事実に驚く時間も惜しんで走り出したが、再び奴に追いつかれる……状況は先程の焼き増し状態だ。
そんな追いかけっこもようやく終わりが見え始める。さっきまで遙か下に見えた床だが今では絨毯の模様も見える……この高さなら着地出来る!! そう判断すると直ぐ様床に向かって飛び降りる。落下中に……
「アイシャ、着地と同時に奴の視界を妨げられるか?」
「っっ!? やってみる!!」
……首にしがみついていた彼女は直ぐに自分のポーチを探る。着地した途端に彼女が何かを地面にぶつけると煙があふれ出した。僕も【アイテムボックス】から出した物を床に置くと、そのまま中央に続く通路に走りだす。
煙で視界が塞がれている中、後ろに大きな落下音を追いかけるように凄まじい爆発音が鳴り響いた。床にセットした【ファイヤーボム+3】が発動したのだ。
……ふふん、爆弾漢と呼んで良いよ。
そのまま通路までやって来ると【サーチ】で索敵をした……反応は無い。よし、なんとか倒せたようだ。多分ユニークスキル以外では一番ダメージが見込める攻撃だったしね。
「何とかなったな」
安全が確認出来たのでアイシャ下ろす……なんとなく名残惜しそうな顔をしているように見えるのは僕のギャルゲー脳のせい?
「中央エントランス……こちらと反対側の奥に真田巧美の妹がいたが、檻に閉じ込められている……鍵を探したい」
「分かったわ、捜し物なら任せてちょうだい」
「頼もしいな」
僕等は中央エントランスに向かって再び走り出すと、自然と今回のダンジョンの話となった。
「知っているかもしれないけれど、発現したばかりのダンジョンは基本的に階層が浅いわ」
「聞いたことはあるが、入ったのは初めてだ」
「攻略しやすい事はメリットだけれど、デメリットもあるわ」
話によると発現後のダンジョンは階層が浅く、敵のレベルも低いのがメリットなのだが、ダンジョン内のモンスターを一気に倒すと、ダンジョン自体の防衛システムらしき力が働き、モンスターのレベルが一気に上がるらしい。
「それはすまないな、遭遇した奴は全て殲滅した」
「責めているんじゃ無いの、救助者もいたし必要な事だったと思うわ……だけどもう一つ……」
発現したばかりのダンジョンが急激に攻略されると、名前付きが高い確率で出現するらしい。
「今後、出現する敵を倒すと、もしかしたらまた出るかもしれないわ……」
オウ、シット!! 何度倒しても追いかけてくる追跡系ボスとか、本格的にサバイバルホラー染みてきたよ。ここはロマンティックな愛の城であって、追跡してくる凶悪なモンスターから逃走するパニックホラーな城では無かったはずなのに!!
「中央に着いたわ……ここは静かね」
「ちなみにお前が探索していた先には何があったんだ?」
「さっきの螺旋階段の最上階に、通路があってね……」
やはり建物の作りは反対側と同じようだ。檻は存在せず通路の先に光り輝く砂時計が置いてあったらしい……それって美百合が言っていたやつかな?
「調べてみようと手に取ろうとしたらあの名前付きが登場という訳」
「映画『魔獣と美少女』は観た事あるか?」
「昔のアニメムービー? 無いわね……」
「劇中でヒロインが砂時計に触れようとすると魔獣が現れるシーンがある」
「もしかしたら、この劇場迷宮で魔獣が出現する鍵だったのかしら?」
「そうかもしれないな……ここを無事に出られたら観てみるといい」
「あら? それにしてもナタクって恋愛ものなんて観るの?」
しまった!! ついつい巧美の調子で話してしまったよ!! 孤高の戦士のイメージが崩れてしまう!!
「……そろそろ行くぞ」
「あん、もうちょっとくらい、良いじゃない」
僕は誤魔化すために中央エントランス最後の通路を走り出した。アイシャも笑顔だった顔を引き締めてついてくる。
中央通路を進むと大きな扉があり、両脇に控えている槍の甲冑騎士を倒す……LVが40だった。本来なら強敵のはずだが相変わらず連携はしてこないので楽に倒せた。
「敵のレベルが上がっているな」
「そうなの? ナタク……あなたも魔道具を使わずに鑑定出来るのね。さっきも一目で名前付きと言い当てていたし」
あ、迂闊だったかな? まぁいっか、ナタクは何でもアリな超万能戦士でいいや。っていうか、特にアイシャに説明していなかったけれど巧美が魔道具無しで【鑑定】使えるってバレてるっぽい?
「想像に任せる」
そう言って扉を抜けるとかなり広い部屋に出た……天井には夕暮れ空を描いた美しい絵画、その中央に大きく豪華で綺麗なシャンデリア、煌びやかな壁の装飾……ここはダンスホールかな? そして何故か流れているムーディーなBGM……まるで映画の1シーンだ。
「素敵ね……こんな状況じゃ無ければ1曲踊っていきたかったわ」
こっちを見ながらそんな感想を述べるアイシャ……へぇ、普段あまり趣味とかの話をしないけれど、こういう場所を見るとお嬢様みたいな感想が出るんだね。
「お前でもそんな事に興味あったのか」
「ちょっと、あたしをなんだと思っているのよ! あと、お前じゃ無くてアイシャよ……さっきは呼んでくれたのに」
しまった、これはデリカシーに欠ける発言だったよ。なんとなくナタクなら言いそうだと思ったけれど、失礼な事を言ってはいけないね。あれ? でも名前で呼んだっけ?
「そいつは悪かったが、俺達がするべきはダンスでは無く鍵を探す事だ」
「わかってるわ、2階のテラスの方に隠し部屋がありそうよ」
「流石だな……行ってみようか、アイシャ」
アイシャの助言に従い、ダンスホールを見渡す事が出来る2階テラスへ上がった。彼女は大きな窓のあちこちを触りながら調べる。そしてレバーを引くと窓が開いた……ガラス越しに外の景色を映していた窓の向こうには、まっすぐ通路が伸びている。
「どうやら俺はこれまでかなりの隠し通路を見逃していたようだな」
「無理も無いわね、こんなに美しいお城に見えてもダンジョンよ……常識は通用しないわ」
「肝に銘じておこう」
「それに言ったでしょう? 一緒に仕事したいって……あたしの力が必要な時は言って」
「そうだな、その時は相談しよう」
ノリで話しているけれど、連絡先とか要求されたらどうしよう? あとでセカンドならぬサードスマホをナタク用に用意するべきか? でもこの時点で手遅れ感ハンパないよね。
そのまま通路を進んで行くと扉があり、先にアイシャが罠の有無を調べた後に部屋に入った。そこは書斎のような作りになっていて、壁一面が本棚になっている……試しに本を読んでみようと手を伸ばす……あれ? ただの飾りのようでピクリとも動かなかった。
中央にある大きなデスクの引き出しは飾りでは無いみたい。罠は無く普通に引き出す事が出来たので一段ずつ調べていくと、お目当ての物が見つかった。
「鍵の束ね……これで牢を開けられるかは試してみないと分からないけれど」
「そうだな、一度、妹のところへ向かおう」
引き返そうと思った矢先に、元来た通路の向こうから大きな音が聞こえる……すっごくやな予感。
「まさかダンスのお相手が待ち構えているんじゃ無いだろうな」
「そうね、困った事に相手のドレスコードだけは守られていたかしら」
……ダンスホールに戻ると、ホール中央に……身に付けた服だけはその場に相応しい……ワイルドすぎる王子が立っていた。
_________________________________________________
第15回ファンタジー小説大賞にエントリーしました。
面白いと感じていただけたら投票お願いいたします。
火、木、土(ストックにゆとりがあれば日)の週3~4回更新となります。
お読みいただきありがとうございます。
もしも面白いと感じていただけたら是非いいね! お気に入り登録をお願いします。感想もお待ちしております。
奴の落下軌道は階段に着地出来ないはずだけれど、嫌な予感がしてアイシャを抱えたまま階段を駆け下りる……すると後ろでは破壊音と共に長い手を階段に引っかけて外壁に組み付いていた。
「器用な奴だ」
「ねぇ、もう、下ろして貰っても大丈……」
「喋るな、舌をかむぞ」
「きゃっ!?」
やつは直ぐに階段に上がると追いかけてくる。とにかく階段での戦闘は不利だよ、平らな地面ならまだ何とかなる……気がする。
奴との距離が少しずつ縮まってくるのが【サーチ】で分かる。背筋が震えたタイミングで身をかがめると、頭上を何かが風を切りながら通り過ぎていく。もちろん僕はそれが何かを分かっていて、その何かはそのまま壁を破壊する。
もう倒せないタイプの追跡者から逃げるのはゲームの中だけで良いよ!! 今後しばらくの間はサバイバルホラーはやめて美少女いっぱいのアドベンチャーゲームを遊ぼうと心に決めた。
少し距離が稼げたけれど人を抱きかかえて走っているせいか、直ぐに追いつかれる。今度は足下を攻撃してくる……僕もそれを予知して高くジャンプする。
「~~~っっ!!」
アイシャが僕にぎゅっとしがみつく……あふん、頬に柔らかく暖かい肌を感じる。きっとこの状況で無ければ色々な妄想をしていたのだろうけれど、不幸中の幸いか生存本能が上回った。
足をもつれさせる事も無くうまく着地すると、そのまま勢いを落とさずに駆け下りる。【サーチ】で確認すると奴はその場で動いていない……やばい、このパターンはさっきあったよね?
それが何かを思い出す前に巨大な魔獣が足下の階段を破壊しながら目の前に落ちてきた!!
僕は奴の目の前で90度向きを変えると、螺旋階段の対岸に向けて飛び降りる……【身体強化】が無ければとっくの昔に足を複雑骨折していたのじゃ無いかな? 【身体強化】万歳!!
先程と同じ要領で何とか着地すると、当然奴も飛び降りて追ってくる……僕は落下中に回避出来ない事を利用して【ハイスロー】で投擲!!
ちょ、剣身の側面……刃のついていない方……を叩いてダガーを弾き飛ばした!? 本当に目が良すぎじゃない?
僕はその事実に驚く時間も惜しんで走り出したが、再び奴に追いつかれる……状況は先程の焼き増し状態だ。
そんな追いかけっこもようやく終わりが見え始める。さっきまで遙か下に見えた床だが今では絨毯の模様も見える……この高さなら着地出来る!! そう判断すると直ぐ様床に向かって飛び降りる。落下中に……
「アイシャ、着地と同時に奴の視界を妨げられるか?」
「っっ!? やってみる!!」
……首にしがみついていた彼女は直ぐに自分のポーチを探る。着地した途端に彼女が何かを地面にぶつけると煙があふれ出した。僕も【アイテムボックス】から出した物を床に置くと、そのまま中央に続く通路に走りだす。
煙で視界が塞がれている中、後ろに大きな落下音を追いかけるように凄まじい爆発音が鳴り響いた。床にセットした【ファイヤーボム+3】が発動したのだ。
……ふふん、爆弾漢と呼んで良いよ。
そのまま通路までやって来ると【サーチ】で索敵をした……反応は無い。よし、なんとか倒せたようだ。多分ユニークスキル以外では一番ダメージが見込める攻撃だったしね。
「何とかなったな」
安全が確認出来たのでアイシャ下ろす……なんとなく名残惜しそうな顔をしているように見えるのは僕のギャルゲー脳のせい?
「中央エントランス……こちらと反対側の奥に真田巧美の妹がいたが、檻に閉じ込められている……鍵を探したい」
「分かったわ、捜し物なら任せてちょうだい」
「頼もしいな」
僕等は中央エントランスに向かって再び走り出すと、自然と今回のダンジョンの話となった。
「知っているかもしれないけれど、発現したばかりのダンジョンは基本的に階層が浅いわ」
「聞いたことはあるが、入ったのは初めてだ」
「攻略しやすい事はメリットだけれど、デメリットもあるわ」
話によると発現後のダンジョンは階層が浅く、敵のレベルも低いのがメリットなのだが、ダンジョン内のモンスターを一気に倒すと、ダンジョン自体の防衛システムらしき力が働き、モンスターのレベルが一気に上がるらしい。
「それはすまないな、遭遇した奴は全て殲滅した」
「責めているんじゃ無いの、救助者もいたし必要な事だったと思うわ……だけどもう一つ……」
発現したばかりのダンジョンが急激に攻略されると、名前付きが高い確率で出現するらしい。
「今後、出現する敵を倒すと、もしかしたらまた出るかもしれないわ……」
オウ、シット!! 何度倒しても追いかけてくる追跡系ボスとか、本格的にサバイバルホラー染みてきたよ。ここはロマンティックな愛の城であって、追跡してくる凶悪なモンスターから逃走するパニックホラーな城では無かったはずなのに!!
「中央に着いたわ……ここは静かね」
「ちなみにお前が探索していた先には何があったんだ?」
「さっきの螺旋階段の最上階に、通路があってね……」
やはり建物の作りは反対側と同じようだ。檻は存在せず通路の先に光り輝く砂時計が置いてあったらしい……それって美百合が言っていたやつかな?
「調べてみようと手に取ろうとしたらあの名前付きが登場という訳」
「映画『魔獣と美少女』は観た事あるか?」
「昔のアニメムービー? 無いわね……」
「劇中でヒロインが砂時計に触れようとすると魔獣が現れるシーンがある」
「もしかしたら、この劇場迷宮で魔獣が出現する鍵だったのかしら?」
「そうかもしれないな……ここを無事に出られたら観てみるといい」
「あら? それにしてもナタクって恋愛ものなんて観るの?」
しまった!! ついつい巧美の調子で話してしまったよ!! 孤高の戦士のイメージが崩れてしまう!!
「……そろそろ行くぞ」
「あん、もうちょっとくらい、良いじゃない」
僕は誤魔化すために中央エントランス最後の通路を走り出した。アイシャも笑顔だった顔を引き締めてついてくる。
中央通路を進むと大きな扉があり、両脇に控えている槍の甲冑騎士を倒す……LVが40だった。本来なら強敵のはずだが相変わらず連携はしてこないので楽に倒せた。
「敵のレベルが上がっているな」
「そうなの? ナタク……あなたも魔道具を使わずに鑑定出来るのね。さっきも一目で名前付きと言い当てていたし」
あ、迂闊だったかな? まぁいっか、ナタクは何でもアリな超万能戦士でいいや。っていうか、特にアイシャに説明していなかったけれど巧美が魔道具無しで【鑑定】使えるってバレてるっぽい?
「想像に任せる」
そう言って扉を抜けるとかなり広い部屋に出た……天井には夕暮れ空を描いた美しい絵画、その中央に大きく豪華で綺麗なシャンデリア、煌びやかな壁の装飾……ここはダンスホールかな? そして何故か流れているムーディーなBGM……まるで映画の1シーンだ。
「素敵ね……こんな状況じゃ無ければ1曲踊っていきたかったわ」
こっちを見ながらそんな感想を述べるアイシャ……へぇ、普段あまり趣味とかの話をしないけれど、こういう場所を見るとお嬢様みたいな感想が出るんだね。
「お前でもそんな事に興味あったのか」
「ちょっと、あたしをなんだと思っているのよ! あと、お前じゃ無くてアイシャよ……さっきは呼んでくれたのに」
しまった、これはデリカシーに欠ける発言だったよ。なんとなくナタクなら言いそうだと思ったけれど、失礼な事を言ってはいけないね。あれ? でも名前で呼んだっけ?
「そいつは悪かったが、俺達がするべきはダンスでは無く鍵を探す事だ」
「わかってるわ、2階のテラスの方に隠し部屋がありそうよ」
「流石だな……行ってみようか、アイシャ」
アイシャの助言に従い、ダンスホールを見渡す事が出来る2階テラスへ上がった。彼女は大きな窓のあちこちを触りながら調べる。そしてレバーを引くと窓が開いた……ガラス越しに外の景色を映していた窓の向こうには、まっすぐ通路が伸びている。
「どうやら俺はこれまでかなりの隠し通路を見逃していたようだな」
「無理も無いわね、こんなに美しいお城に見えてもダンジョンよ……常識は通用しないわ」
「肝に銘じておこう」
「それに言ったでしょう? 一緒に仕事したいって……あたしの力が必要な時は言って」
「そうだな、その時は相談しよう」
ノリで話しているけれど、連絡先とか要求されたらどうしよう? あとでセカンドならぬサードスマホをナタク用に用意するべきか? でもこの時点で手遅れ感ハンパないよね。
そのまま通路を進んで行くと扉があり、先にアイシャが罠の有無を調べた後に部屋に入った。そこは書斎のような作りになっていて、壁一面が本棚になっている……試しに本を読んでみようと手を伸ばす……あれ? ただの飾りのようでピクリとも動かなかった。
中央にある大きなデスクの引き出しは飾りでは無いみたい。罠は無く普通に引き出す事が出来たので一段ずつ調べていくと、お目当ての物が見つかった。
「鍵の束ね……これで牢を開けられるかは試してみないと分からないけれど」
「そうだな、一度、妹のところへ向かおう」
引き返そうと思った矢先に、元来た通路の向こうから大きな音が聞こえる……すっごくやな予感。
「まさかダンスのお相手が待ち構えているんじゃ無いだろうな」
「そうね、困った事に相手のドレスコードだけは守られていたかしら」
……ダンスホールに戻ると、ホール中央に……身に付けた服だけはその場に相応しい……ワイルドすぎる王子が立っていた。
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