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―――早いもので、俺ら三人が正式に親子になって一年経った。
やはりリオンは通常のホムンクルスとは違うらしい。
この間、四歳になって少しは我慢が効くようになったからと少し長めの検査をすることになった。
以前までは簡易検査でも待ち時間が長いと暇をしてぐずることがあったのだが、最近はちゃんとお利口さんにしている時間が長くなったし、ディクセル様も一緒に居る時は二人であの手この手と気を引けるので少し楽になっていた。
「うーん。どっちかと言えば、普通の人間だね。」
「何言ってんだ、お前。」
「まぁまぁ、ガキは黙って大人の話を聞きなさいな。」
ソラリス様はそう言うと、検査結果が書かれた紙を見ながら一つ一つ説明してくれた。
ソラリス様のホムンクルスと平均的な人間のデータ比較も説明されたけど、正直良く分からなかった。
ディクセル様は真剣な顔で見比べてたり、質問したりしているから多分理解出来ているんだろう。
凄いな、ほんと。
「前々から言ってたけど、ホムンクルスとは全然違う。時間もゆっくりだしね。本来ならもう死んでるよ。」
うちの子達も、顔ぶれが違うでしょ?
そう言われて、リオンが本当にホムンクルスじゃなくて良かったと思ってしまった。
この子をそんなに早く喪ったら、気が狂うかもしれない。
「こうして見比べても人間に近いね。でも所々はホムンクルスに近い箇所もあるから、定期検査が必要なのは変わらない。」
もしかしたら人間よりは寿命が短いかもしれないってことか………。
俺に抱っこされた状態で、話に着いて行けずきょとんと首を傾げるリオン。
この子が一分一秒でも、笑って生きてくれるならばそれで良い。
でももし我儘を許されるのならば、俺達が老いて死ぬまでは生きていて欲しい。
「おそとあそびできない?」
「出来るよー。寧ろいっぱい遊んで体力付けようねー。」
良く分からないけど検査が必要という言葉で、お外遊びが出来ないんじゃないかという懸念だけは出来たらしい。
二歳の頃から三歳の最初の方は身体が弱かったし検査も多かったから、検査すること=お外で遊べないなのかもしれない。
でももう体調は安定しているし、ソラリス様の言う通り体力をつけて欲しいからお外遊びはたくさんして欲しい。
あんまり怪我するようなことはして欲しくないけど、やんちゃな位には元気で居て欲しい。
「じゃあ、今日の診察はこれでお終い。リオンくん、飴要るー?」
「いらない。ごはんたべる。」
「がーん!」
大袈裟に悲しがる素振りを見せるソラリス様だったが、多分、八割本気だ。
親戚のおじさんばりにリオンのことを可愛がって甘やかしてくれるもんな………でもね、タイミングが悪い。
「すいません、これから外で昼食食べようかって話になってて。」
「親子水入らずだからな。邪魔すんじゃねぇぞ。」
「ケチ!まぁ、いいけど。リオンくん、またねー。」
「せんせー、ばいばい!」
またね、とは言わないのが我が子の素直な所。
グイグイとディクセル様の手を引いて出来ればもう行きたくないオーラビンビンだけど、そういう訳にもいかないので許して欲しい。
一秒でも長く、幸せな時間を味わって欲しいから。
「今日何にしようか。」
「ぱすた!」
「パスタか。じゃあそこの食堂行くか。」
そう言ってディクセル様が指したのは、街の住人向けの食堂。
冒険者向けの食堂と違って賑やかさは無い分、子供連れでも落ち着いて食べれる空間になっている。
お値段がリーズナブルなのに味も美味しくメニューも豊富で、ディクセル様も俺もお気に入りの食堂だ。
「良いね!行こう行こう!」
「いこー!」
「はいはい。リオン、危ないから引っ張るな。おいで。」
時間はお昼時、人通りは多い。
抱っこばかりしてたら抱き癖ついちゃうから最近は控えめにしていたけど、この状況ならば仕方ない。
ディクセル様に抱っこされて幸せそうにしているリオンのほっぺを撫でて、俺達は食堂へと足を運んだ。
やはりリオンは通常のホムンクルスとは違うらしい。
この間、四歳になって少しは我慢が効くようになったからと少し長めの検査をすることになった。
以前までは簡易検査でも待ち時間が長いと暇をしてぐずることがあったのだが、最近はちゃんとお利口さんにしている時間が長くなったし、ディクセル様も一緒に居る時は二人であの手この手と気を引けるので少し楽になっていた。
「うーん。どっちかと言えば、普通の人間だね。」
「何言ってんだ、お前。」
「まぁまぁ、ガキは黙って大人の話を聞きなさいな。」
ソラリス様はそう言うと、検査結果が書かれた紙を見ながら一つ一つ説明してくれた。
ソラリス様のホムンクルスと平均的な人間のデータ比較も説明されたけど、正直良く分からなかった。
ディクセル様は真剣な顔で見比べてたり、質問したりしているから多分理解出来ているんだろう。
凄いな、ほんと。
「前々から言ってたけど、ホムンクルスとは全然違う。時間もゆっくりだしね。本来ならもう死んでるよ。」
うちの子達も、顔ぶれが違うでしょ?
そう言われて、リオンが本当にホムンクルスじゃなくて良かったと思ってしまった。
この子をそんなに早く喪ったら、気が狂うかもしれない。
「こうして見比べても人間に近いね。でも所々はホムンクルスに近い箇所もあるから、定期検査が必要なのは変わらない。」
もしかしたら人間よりは寿命が短いかもしれないってことか………。
俺に抱っこされた状態で、話に着いて行けずきょとんと首を傾げるリオン。
この子が一分一秒でも、笑って生きてくれるならばそれで良い。
でももし我儘を許されるのならば、俺達が老いて死ぬまでは生きていて欲しい。
「おそとあそびできない?」
「出来るよー。寧ろいっぱい遊んで体力付けようねー。」
良く分からないけど検査が必要という言葉で、お外遊びが出来ないんじゃないかという懸念だけは出来たらしい。
二歳の頃から三歳の最初の方は身体が弱かったし検査も多かったから、検査すること=お外で遊べないなのかもしれない。
でももう体調は安定しているし、ソラリス様の言う通り体力をつけて欲しいからお外遊びはたくさんして欲しい。
あんまり怪我するようなことはして欲しくないけど、やんちゃな位には元気で居て欲しい。
「じゃあ、今日の診察はこれでお終い。リオンくん、飴要るー?」
「いらない。ごはんたべる。」
「がーん!」
大袈裟に悲しがる素振りを見せるソラリス様だったが、多分、八割本気だ。
親戚のおじさんばりにリオンのことを可愛がって甘やかしてくれるもんな………でもね、タイミングが悪い。
「すいません、これから外で昼食食べようかって話になってて。」
「親子水入らずだからな。邪魔すんじゃねぇぞ。」
「ケチ!まぁ、いいけど。リオンくん、またねー。」
「せんせー、ばいばい!」
またね、とは言わないのが我が子の素直な所。
グイグイとディクセル様の手を引いて出来ればもう行きたくないオーラビンビンだけど、そういう訳にもいかないので許して欲しい。
一秒でも長く、幸せな時間を味わって欲しいから。
「今日何にしようか。」
「ぱすた!」
「パスタか。じゃあそこの食堂行くか。」
そう言ってディクセル様が指したのは、街の住人向けの食堂。
冒険者向けの食堂と違って賑やかさは無い分、子供連れでも落ち着いて食べれる空間になっている。
お値段がリーズナブルなのに味も美味しくメニューも豊富で、ディクセル様も俺もお気に入りの食堂だ。
「良いね!行こう行こう!」
「いこー!」
「はいはい。リオン、危ないから引っ張るな。おいで。」
時間はお昼時、人通りは多い。
抱っこばかりしてたら抱き癖ついちゃうから最近は控えめにしていたけど、この状況ならば仕方ない。
ディクセル様に抱っこされて幸せそうにしているリオンのほっぺを撫でて、俺達は食堂へと足を運んだ。
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