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時が経つのは早い。
それが楽しい時間ならば、尚更。
気が付けば後二日で休暇が終わる………つまり、託児所で開催されるミニお祭りの当日だということだ。

「ママ、パパ!はやく!」
「ちょっと待ってリオン!パパかフィニスおじさんのどっちかと手を繋いで!」

今にも走り出してしまいそうなリオンを慌てて止める。
とっ捕まえるのは不機嫌にさせてしまうけど、こういう言い方をするとまず勝手に止まってくれる。
その間に誰かが抱っこをして自然に捕まえるのが、今の所は正しいやり方だ。

「リオン、久しぶりにおじさんが抱っこしようか。」
「うん!」

今日はフィニス様が抱っこしてくれた。
俺はホッと息を吐き、お出かけ用のリュックを背負う。
お財布とか保護者用チケットとかは、スムーズに出せるようにディクセル様のボディバッグに入れてもらった。

「忘れ物は無いか?」
「大丈夫。最悪、チケットと財布があれば何とかなる。」

兄さんからの問いにそう返せば、じゃあリュックは要らないんじゃないかという視線を感じる。
いや、それはそれで要るんだよ。
主にリオンに必要になる道具が沢山入ってるんだ。
カッコイイを目指して自立し始めたとはいえ、まだまだ一人じゃできないことが多いしね。

「きょうねー、おまつりなの!でね、くものあめたべるの!」
「そうなのか。リオンは物知りだね。」

ちょいちょいとフィニス様がリオンのほっぺを突けば、リオンが楽しそうに甲高く笑った。
パパパパ期だけど、やっぱりフィニス様は大好きらしい。
そもそもフィニス様に憧れてカッコイイになりたがってた位だしね。

「ディクセル様もカッコイイだから、カッコイイへの憧れはまだ続くだろうねー。」
「ディクセルがカッコイイ?」
「俺は常にカッコイイだろうが、ぶっ飛ばすぞ。」

俺の言葉に兄さんが首を傾げ、その態度にディクセル様が苛ついたようにそう声を荒げた。
でもリオンには聞こえないくらいの音量で言ってるから流石だなと思う。
この数日で思ってたけど、ディクセル様カッコイイしかっこつけなんだよね。
そういう所が可愛いって思っちゃうのは、所謂惚れた弱みってやつだろうか。

「ディクセル様は恰好良いよ。」

俺がそう言うと、ディクセル様はそらみたことかと言わんばかりの得意げな顔を披露した。
その瞬間、あ、と声が出そうになる。
気付いてしまった。
リオンとディクセル様、こういう時の顔そっくりだ。
やっぱり親子なんだな。
リオンの顔のパーツは俺にそっくりだけど、目の色とかだけじゃなくてこういう細かい所もそっくりなんだ。
目から鱗というか、なんというか………

「俺の、大好きな旦那様だ。」

ぽろりと、言う予定じゃなかった言葉が零れる。
一瞬、自分が何を言ったのか分からなかったけど、兄さんの心底呆れたような表情とディクセル様の嬉しそうな表情で何を言ったか後からじわじわと実感して照れてしまう。

「ママ―、パパ―?」
「どうした?早く行くぞ?」

すっかり足を止めてしまった俺達に、リオンとフィニス様が不思議そうに声を掛けた。
でもごめん、もうちょっとだけ待って欲しい。
恥ずかしくて頭が追い付かない。
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