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―――なかなかに激動だった一日目は、大きな変化を齎した。

まず兄さんとフィニス様の距離感が変わった。
よそよそしいって訳じゃないけど、でも少しぎこちない気がして。
でもそれ、悪い意味には思えないんだよな。
ディクセル様はそれ見て呆れてるだけで特に何も言わなかったし、多分、大丈夫なんだろうなとは思う。

そして部屋の模様替えをすることも決まった。

というのも、リオンがパパとママと寝たいと言い出したからだ。
元々ある程度大きくなったら一人寝はさせるつもりだったので、ベッドはそう大きくない。
なんなら子供部屋を別で用意しているので、部屋だって大きくない。
一番大きな部屋は倉庫にするにも大きいもんだから空っぽだ。

「じゃあその大きい部屋を夫婦の寝室にしないか?」

ベッドも大きいのを買おう。金ならある。俺はミリとリオンと一緒に寝たい。
狭いベッドの中。
三人で身を寄せ合って寝転んでいる時に、ディクセル様はなんてことないようにそう言った。
そっか、部屋を移動するって手もあったな。
目から鱗だ。

「ミリが構わないなら、明日からボチボチ片付けたり家具買いに行ったりしないか?」

お祭りの日まではどうせ時間がある。
リオンはもうディクセル様がこの家に居ると疑ってもないし、俺も正直ディクセル様はずっとこの家に居てくれるって思ってるからどの道家具とかは揃えるつもりだった。
ただでさえこのベッドは体格の良いディクセル様にとってはかなり狭い。
ゆっくり眠れるように、ベッド位は早く買いたい。

「じゃあ明日、家具屋さん行きましょう?オーダーメイドもしてくれるらしいんです。」
「良いな。サイズ測ってから行こうか。」

寝転んだまま、明日のことについて話す。
俺達の間にはちょっと涎を垂らして眠るリオンが居て、まるで絵に描いたような親子みたいだ。
ずっと夢に見ていた光景。
それがまさか本当に手に入るなんて思わなかった。

「大きいベッド、買おうね。」
「小さくても良いけどな。こうやって身を寄せ合える。」

ディクセル様はそう言ってギュッと俺とリオンを抱き寄せた。
あったかくて、逞しい身体。
確かに精神的には狭くても良いのかもしれないけど、肉体的な疲労は蓄積されるだろう。

「健康に悪いから、ダメです。」
「ふふっ、そうだな。」

冒険者は肉体労働だ。
しっかり休めて欲しいから首を横に振れば、ディクセル様は心底楽しそうに笑って俺の頬にキスをしてくれた。
そうか。
これからいっぱい、キスをしてもらえるのか。
いっぱい、キスして良いのか。

「………っ!ミリ!?」

そう思うまま、俺もディクセル様の頬にキスをしてみる。
そんな俺の行動は予想出来なかったらしく、ディクセル様の顔がみるみる真っ赤になる。
可愛い。
でも、ちょっと恥ずかしい。

「もう寝ましょっ!」
「ちょっと待ってもう一回!」
もうおしまいですー。ほら、リオンが起きちゃいますから。」

ウソ。
リオンはこの騒動でも起きる様子なくすやすやと寝息を立てていて、起きる様子はない。

ってことは、?」

少し寂しそうな表情でそんなことを聞くものだから、ちょっと罪悪感。
でも、そんなことわざわざ聞かないで欲しいなんて、捻くれた考えも出ちゃう。

「明日も明後日もその先もずっと、ですよ。」

俺の言葉に、ディクセル様は目を丸くさせた後に本当に嬉しそうに微笑んだ。
俺ばっかり幸せだなって思ってたけど、俺もディクセル様を幸せに出来るのかもしれない。
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