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「ただいまー。」
「あ!フィニスおじさん!ただいま!!」
「おかえり三人共、どうだった?」

案の定、玄関まで出迎えに来てくれたフィニス様にリオンのテンションは更に上昇した。
子供特有の甲高い叫びを上げないだけ奇跡だ。
そのテンションのままフィニス様に手を伸ばして抱っこを強請ろうとするものだから、俺は慌てて止めた。

「リオン、先にお風呂だよ。どろんこでしょ?」
「えー!」

俺の言葉にリオンは唇を尖らせて拗ねた。
でも仕方ないよ。
正直よく見たらディクセル様に抱っこしてもらうのも申し訳ない位には泥ついてるんだよ。
ぽろぽろ乾いた泥落ちてるし。

「パパと一緒に入る約束だろ?」
「うん、パパとおふろー!」
「じゃあその後に抱っこしてもらおうな。」

すっかり拗ねてしまったかと思ったのだけど、ディクセル様の言葉に再びテンションが上がりなおす。
パパっ子になってなによりだ。
俺が今まで不安に思っていたことが馬鹿らしくなってしまう位には、もっともっとパパっ子になって欲しい所だ。

「すっかりパパになって何よりだ。じゃあ、服は洗濯しておこうか。」
「え?流石にそこまでは………」
「気にしなくて良いよ。砂遊び後の服の洗濯は慣れてるし、何なら今からやる。」

フィニス様の言葉の意味が分からず首を傾げたのだけど、ディクセル様は意味が分かったのか少しげんなりとした顔をしながら、至って普通にお着替えが入ったリュックをフィニス様に手渡した。

「あれが砂遊びってレベルかよ。」
「俺にとっては砂遊びだよ。ほら、お風呂沸かしてるから入っておいで。」

一番じゃないけどという補足で、漸く分かった。
………兄さん、我慢できなくてフィールドワークに出たな。
そしてこの短時間で泥まみれになって帰って来たと。

「あ、おかえり。早かったな。先に頂いた。悪いな。」
「あー!オルフェおじさん!!」

案の定、兄さんはその美しい金糸を雑にタオルで拭きながら風呂場から出て来た。
大好きな兄さんを見付けて、リオンのテンションはもう最高潮だけどディクセル様がしっかり抑えてくれたからお風呂上りの兄さんが汚れる心配はなさそうだ。
その辺はもう、ディクセル様に任せておこう。
俺にそんな技量と体幹は無い。

「おかえり、可愛いリオン。今からお風呂か?」
「うん!パパといっしょにはいるのー!」
「そうかそうか。あがったらおじさんとご飯食べような。」

兄さんはそう言うと、ガシガシと乱暴に髪を拭きながらリビングへと歩いて行った。
和解してから知ったのだが、兄さんは自分自身に関しては雑な人だ。
さらさらと指通りの良さそうな髪はろくな手入れされていないし、白くきめの細かい肌も特にメンテナンスはしていない。
暑い日でも長めの袖の服を着るが、それは日焼け対策じゃなくて肌露出による虫や怪我の予防なだけだ。
当然、生活能力も雑だ。無いんじゃなくて、ひたすらに雑。
多分、俺の方が丁寧なんじゃないかなと思ってる。

「さ、俺達もお風呂行こうか。」

気を取り直して、うちの砂まみれちゃんの頬を撫でて三人で風呂場に向かう。
………俺、ディクセル様と一緒にお風呂入るの!?
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