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「おまっ………えは!もっと真剣に考えろ!!」
「落ち着けオルフェ、外だぞ。」
テーブルをバンッと叩いて立ち上がった兄さんを、フィニス様が宥めようと声を掛ける。
腕を掴んで、多分引き寄せようとしたんだろうけどテーブルで阻まれて掴むだけに終わっていた。
けど兄さんの注意を引くには十分だったらしく、今にも怒鳴り散らそうした兄さんは一気に勢いが小さくなった。
それを見て何故かドヤ顔をするディクセル様。
なんで?
「俺は真剣に考えてる。まぁ俺の遺伝子が混じっているのは気に食わないが、ミリと俺の遺伝子で出来てるならまごうことなき俺とミリの子だろ。強いて気になることを述べるのならそうだな………」
うーんと、ディクセル様が唸る。
何を言われるんだろうか。
ここまでくると、俺はいっそ不安だけじゃなくて期待までしてしまう。
だって、どう見ても嬉しそうだから―――
「なぁ、ミリ。」
「は、はい!」
「ホムンクルスは出来た時から成長した姿らしいが、その子はどうなんだ?」
「あ、えっと一歳位で、二年経った今は三歳位の大きさです。」
成長していない訳じゃないし、急激な成長をしている訳じゃない。
普通に他の子と同じように成長していて、ただちょっとお喋りが他の子より上手なだけ。
それだって、そういう子は稀に居るから誰も気にしない。
その程度の違いだ。
「じゃあ尚更、俺が認知する。お前ら全員難しく考え過ぎなんだよ。」
ディクセル様はニコニコと上機嫌に笑いながら、すっかり冷めているだろうコーヒーを飲んだ。
何が言いたいのか分からず俺とフィニス様は首を傾げたし、兄さんはものすごく怪訝そうな顔を見せる。
そんな俺達にディクセル様はグッと伸びをして、そして俺に向かってピッと指を向けた。
「俺はミリを愛してて、ミリも俺を愛してる。そしてそんな俺らの遺伝子を持った三歳児が居る。認知して一緒に育てる以外に選択肢なんかあるかよ。」
自信満々に言われてしまうと、そうなのかもしれないと思ってしまう。
いや、でも俺はディクセル様の同意無く子供を造ったんだよ?
しかもただの子供じゃなくて、禁忌の子だ。
「まぁ、俺にもっと早く教えて欲しかったけど、ミリも悩んだんだよな。ごめんな。後、ありがとう。」
俺とミリの子を、造ってくれて。
ディクセル様にそう言われて、何かもう、色んな感情がぶわっと押し寄せてきた。
本当は、愛して欲しいってずっと思ってた。
本当は、仕事で仕方ないとはいえカミラに構わないで欲しかった。
本当は、俺とリオンを抱き締めて欲しかった。
本当は、本当は―――
「お、おれだ、け………みてほしかったぁ………!」
ぽろぽろと零れる、涙と本音。
人前なのに。
兄さん達の前なのに。
俺は止まらなかった。
止め方が、分からなかった。
「ごめんね、伝わってなかったね。俺はミリを見掛けたその日から、ミリのことしか見てないよ。」
子供みたいに泣き出す俺に、ディクセル様は一生懸命腕を伸ばしてくれた。
ずっと、こうして欲しかった。
そしてずっと、この腕を取りたかったんだ。
あの家に俺の味方なんて居ないって思ってたから、みんなみんな、敵だって思ってたから。
そっと、ディクセル様の指に触れる。
微かに震えているのは、俺かそれともディクセル様なのか。
「落ち着けオルフェ、外だぞ。」
テーブルをバンッと叩いて立ち上がった兄さんを、フィニス様が宥めようと声を掛ける。
腕を掴んで、多分引き寄せようとしたんだろうけどテーブルで阻まれて掴むだけに終わっていた。
けど兄さんの注意を引くには十分だったらしく、今にも怒鳴り散らそうした兄さんは一気に勢いが小さくなった。
それを見て何故かドヤ顔をするディクセル様。
なんで?
「俺は真剣に考えてる。まぁ俺の遺伝子が混じっているのは気に食わないが、ミリと俺の遺伝子で出来てるならまごうことなき俺とミリの子だろ。強いて気になることを述べるのならそうだな………」
うーんと、ディクセル様が唸る。
何を言われるんだろうか。
ここまでくると、俺はいっそ不安だけじゃなくて期待までしてしまう。
だって、どう見ても嬉しそうだから―――
「なぁ、ミリ。」
「は、はい!」
「ホムンクルスは出来た時から成長した姿らしいが、その子はどうなんだ?」
「あ、えっと一歳位で、二年経った今は三歳位の大きさです。」
成長していない訳じゃないし、急激な成長をしている訳じゃない。
普通に他の子と同じように成長していて、ただちょっとお喋りが他の子より上手なだけ。
それだって、そういう子は稀に居るから誰も気にしない。
その程度の違いだ。
「じゃあ尚更、俺が認知する。お前ら全員難しく考え過ぎなんだよ。」
ディクセル様はニコニコと上機嫌に笑いながら、すっかり冷めているだろうコーヒーを飲んだ。
何が言いたいのか分からず俺とフィニス様は首を傾げたし、兄さんはものすごく怪訝そうな顔を見せる。
そんな俺達にディクセル様はグッと伸びをして、そして俺に向かってピッと指を向けた。
「俺はミリを愛してて、ミリも俺を愛してる。そしてそんな俺らの遺伝子を持った三歳児が居る。認知して一緒に育てる以外に選択肢なんかあるかよ。」
自信満々に言われてしまうと、そうなのかもしれないと思ってしまう。
いや、でも俺はディクセル様の同意無く子供を造ったんだよ?
しかもただの子供じゃなくて、禁忌の子だ。
「まぁ、俺にもっと早く教えて欲しかったけど、ミリも悩んだんだよな。ごめんな。後、ありがとう。」
俺とミリの子を、造ってくれて。
ディクセル様にそう言われて、何かもう、色んな感情がぶわっと押し寄せてきた。
本当は、愛して欲しいってずっと思ってた。
本当は、仕事で仕方ないとはいえカミラに構わないで欲しかった。
本当は、俺とリオンを抱き締めて欲しかった。
本当は、本当は―――
「お、おれだ、け………みてほしかったぁ………!」
ぽろぽろと零れる、涙と本音。
人前なのに。
兄さん達の前なのに。
俺は止まらなかった。
止め方が、分からなかった。
「ごめんね、伝わってなかったね。俺はミリを見掛けたその日から、ミリのことしか見てないよ。」
子供みたいに泣き出す俺に、ディクセル様は一生懸命腕を伸ばしてくれた。
ずっと、こうして欲しかった。
そしてずっと、この腕を取りたかったんだ。
あの家に俺の味方なんて居ないって思ってたから、みんなみんな、敵だって思ってたから。
そっと、ディクセル様の指に触れる。
微かに震えているのは、俺かそれともディクセル様なのか。
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