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待ち合わせ場所の喫茶店に着いたのは、待ち合わせ時間の10分程前。
兄さん達は馬車で来るらしいから、もしかしたら遅れるかもしれない。
でも早く着く場合もあるから、まだ少し余裕があるとはいえちょっと遅くなったかもという気持ちで喫茶店の中に入る。

「いらっしゃいませ。」

喫茶店のマスターが俺に気付いてにこやかに挨拶をしたから、俺は軽く会釈をしてサッと中を見渡す。
はたして、三人は居た。
一番奥まった、見えにくい席に座って何か飲み物を飲んでいる。
やっぱり、待たせてしまったようだ。

「ごめんなさい!遅くなりました………」
「ミリ!」

慌てて駆け寄ると、ディクセル様が真っ先に俺に気付いて立ち上がってくれた。
駆け寄ろうとしてはくれたみたいだけど、席順的に兄さんとテーブルで阻まれて動くことが出来なかった。
でも目が、顔が、俺に会えて嬉しいって言っているように思えた。
世間知らずだった頃は疑っていたけれど、沢山の人に触れた今なら、分かる。
この人、どういう意味であったとしても本当に俺のことを好いてくれていたのかもしれない。

「あの、お久しぶりです………」
「久しぶりだな、ミリ。座りなさいディクセル。オルフェが困っているだろう。」
「邪魔だ、ディクセル!座れ!久しぶりだな、ミリ。………一人か?」
「お久しぶりです!………うん、今は。」

立ち上がったディクセル様を子供のように叱り飛ばしつつ、二人も挨拶をしてくれたから俺も挨拶を返す。
兄さんの質問には、曖昧に答えるだけに留めた。
まだ、ディクセル様には伝えれてないしね。

「ミリ、ミリ………久しぶり、会いたかった………」

泣きそうな顔で、ディクセル様が俺に手を伸ばす。
それを嘘だと撥ね退けることは、俺には出来なかった。
………だって、そっくりなんだ。
パパに会いたいって言った、リオンに。

「ディクセル様、ごめんなさい。待ってるって、約束したのに。」
「………取り合えず、座りなさい。」

兄さんに促されるまま、俺は兄さんの隣に座る。
席はL字になっていて、一番隅からフィニス様ディクセル様兄さん俺という順番だ。
とは自惚れじゃなくディクセル様が俺しか見てなくて、兄さんが何度も鬱陶しそうにディクセル様の腕を叩いていた。

「あの、ディクセル様………聞いて欲しいことがあるんです。」
「なに?」

話し掛けられて嬉しいと、言わんばかりの瞳。
ダメだ。
顔立ちは俺そっくりでも瞳がディクセル様そっくりな所為で、ディクセル様がリオンにしか見えなくなってしまってる。
撫でながら話したくなる………。

「あの、俺が約束守れなかった理由、なんですけど………」

でもちゃんと、話さなくては。
上手く話せるかどうかも分からないけれど。
正直、受け入れてなんてくれないだろうけど、それでも―――

「俺、あの日。貴方に助けてもらった日。俺は………」
「助けてもらった日?ああ、だろう?」
「「「は?」」」

懺悔をする気持ちで告げようとした俺だったが、被せるようにディクセル様が言った言葉に言葉を失う。
それは兄さん達も同じだったらしい。
けど、それはそうだろう。
俺とディクセル様が結ばれたって、なにそれ?
初耳なんだけど?
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