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「えー!なんで誘ってくれないのさー!」
「何でと言われましても………親族限定なので………しかも二名だけ。」

朝食の後、定期検診も兼ねて俺はリオンを連れてソラリス様の研究所へ行った。
何もかもが未知数なリオンに何かあっては大変だということで、ソラリス様のご好意で毎月検査してもらっている。
申し訳ないなとは思うけど、こればかりは好意に甘えさせてもらっている状態だ。
だって、リオンに何かあったら大変だから。

「そうだけどー。私だって、リオンとお祭り楽しみたかったー!ねぇ、リオン。」
「リオンねー、オルフェおじさんと一緒にくものあめたべるの!」
「ううーん、見たことない程に素敵な笑顔。先生、オルフェに妬いちゃうよぉ。」

診察の準備をしながらそういうソラリス様に、よく分かってないリオンはニコニコとお祭りの計画を話す。
普段、診察中は嫌な顔をしているんだけど、よっぽどお祭りで兄さんと会えるのが嬉しいのか満面の笑みだ。
確かに最初は人見知り発症してソラリス様にあまり懐かなかったし、診察があんまり好きじゃないからかいつも研究所では緊張した顔をしている。
………今考えたら、ソラリス様がリオンの笑顔見たの今日が初めてかも。

「でもオルフェこっちに来るんだねー。先輩も?」
「はい。フィニス様も親族枠で。」
「えー!あの二人付き合ってすらないのに!?先輩ズルくない!?」

今は付き合ってないかもだけど、いつか結婚するんだ。
多分、婚約期間とかすっ飛ばして結婚してくれる。
俺は知ってる、詳しいんだ。

「はい、リオンくん。検査始めるよー。」
「………はぁい。」

ソラリス様が宣言すると、さっきまでのにこにこ笑顔は一転して難しい顔になった。
ギュッと眉根を寄せて、ちょっと唇を尖らせている。
………親ばかで申し訳ないけど、可愛い。

「あー!その顔可愛いねー!」
「やだ!かっこいーがいい!」

ソラリス様の言葉に、リオンがますます唇を尖らせる。
そう。
託児所で何かあったのか、今まで可愛いという言葉に大喜びだったリオンは、逆に可愛いという言葉に嫌悪感を示すようになった。
その拗ね方も可愛いから、つい可愛いって言っちゃうんだけど。

「なんで?ママも可愛いから、ママにそっくりなリオンは可愛いの方が良くない?」

いや、俺は可愛くないから。
聴診器を当てながら言ったソラリス様の言葉に、俺は内心つっこんだ。
確かに俺に良く似ているリオンは可愛いが、俺は可愛くない。
可愛いなんて言葉、言われたことないし。

「そうだけどぉ………かっこいーじゃないと、ママのヒーローになれないもん。」
「どういうこと?」

唇を尖らせたままリオンが言った言葉に、ソラリス様と二人で首を傾げる。
どっから出て来た、ヒーロー。

「リオンはパパがいないから、パパのかわりにママをまもらなきゃなのに、シュリくんがおひめさまになってって。」
「「うわぁお。」」

思わずソラリス様と声を揃えてしまった。
今時の子ってすごいな。
ストレートなんだな。

「シュリくん、ヒーローみたいでかっこいーから、ぼくもかっこいーになれば、フィニスおじさんみたいにヒーローになれるでしょ?」

うーん、うーん。
やっぱりパパが居ないことを気にしてたんだと悲しむべきか、ヒーローになりたいという夢を可愛いと思うべきか。
そしてシュリくんをヒーローみたいに思ってても、一番のヒーロー像はフィニス様なのね。
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