25 / 78
幕間4
しおりを挟む
「………ミリに会いたい!!!」
オルフェの部屋に雪崩れ込むなり、お気に入りのソファに寝転びながらそう叫び出した。
カミラに聞かれたらどうするつもりだとオルフェは頭を抱えたくなったが、そこはグッと堪える。
ディクセルをデコイとしてカミラの下に送り込んでから早一ヶ月。
惚れた人間にそんなにも長い期間会えないのは辛いというのは、オルフェにも分かる。
ましてディクセルはオルフェとは違い相手の肌の熱を知ってるので、尚更辛いだろう。
とはいえ、ホムンクルスが日々大きくなりつつある今、カミラのことがあろうがなかろうが会わせる訳にはいけない。
「だったら早く本来の目的を完遂しろ。何をちんたらしているんだ。」
オルフェは誤魔化すように、叱るような口調でそう言った。
拗ねたような瞳でディクセルがちらりと見たので少しばかり誤魔化しが強引だったかと焦ったが、そこで表情に出す程オルフェは馬鹿ではない。
涼し気な表情をしたまま、紅茶を一口飲み込んだ。
「………カミラが急に警戒し出した。先輩がミリに近付いたからか?」
「いや、カミラは昔から先輩を嫌っている。学生時代に先輩に叱り飛ばされたからな。」
学生時代、オルフェや自分のクラスメイトに無茶難題を押し付けて暴れていたカミラは、一度だけオルフェを庇ったフィニスにこっぴどく叱られたことがあった。
今まで甘やかされて育ってきたカミラにとって、それは自尊心を砕くような出来事だった。
それ以降、カミラはひどくフィニスを嫌い避けている。
「先輩の悪口でも言って警戒心を解いてみたらどうだ。」
「は?嘘でも先輩の悪口とか嫌だが?」
反抗的ではあるが、ディクセルはフィニスを尊敬していた。
分かりにくい男だと思いながら、オルフェはそっと窓見た。
そこには人目を避けながら、ミリに栄養満点な弁当を運ぶフィニスの姿が見えた。
ホムンクルスはオルフェにとって全く興味はなかったので、ミリに役に立つ知識を何一つ与えることは出来なかった。
それでも与える血液には栄養がある方が、ホムンクルスにの為にもミリの為にもなるからと、こんな簡単なことしか出来ない事実が悔しくて仕方ない。
「あと少し、なんだけどなぁ………」
「アレは小賢しさだけはあるからな。とは言え、所詮は甘やかされて育った世間知らずだ。詰めは甘い。」
「お前の話?」
「そうか、お前よっぽどミリに学生時代の恥をバラされたいらしいな。」
「止めろ。ぶっ殺すぞ。」
ミリとオルフェが和解したことを知っているディクセルは、少しばかり焦った様子でそう言った。
学生時代から生意気だと思いつつも口でも知力でも勝てなかったディクセルを言い負かしたような気分がして、オルフェは少しだけ溜飲を下げた。
オルフェは努力を重ねる秀才型なので、天才型だがそこに胡坐をかくカミラを超えることは出来ても、天才型な上に日々努力を忘れないディクセルには元々付いている差を広がらないようにするだけで精一杯だから。
「あー、マジで可愛げが欠片もねぇ。可愛い俺のミリに会いたい………」
「貴様にミリをやった覚えはない。」
さめざめと………かなりわざとらしく顔を覆って泣き真似を始めるディクセルに呆れつつも、オルフェは少しばかり罪悪感を抱いた。
こんなにも愛してくれているのならば、やはりホムンクルスのことは話すべきなのでは?
しかし、確かにミリの言う通り、ディクセルがどういう反応を取るのかが分からない。
ミリ自身を傷付けることないだろうが、事故に装ってホムンクルスを傷付ける可能性はあった。
ホムンクルスは、生まれた瞬間から膨大な知識と成人の身体を持つ。
ミリに対しての様々な感情を拗らせたディクセルが、はたしてミリの傍にいきなり現れた存在を許すだろうか?
ましてや自分の遺伝子を持っているのならば、尚更。
オルフェの部屋に雪崩れ込むなり、お気に入りのソファに寝転びながらそう叫び出した。
カミラに聞かれたらどうするつもりだとオルフェは頭を抱えたくなったが、そこはグッと堪える。
ディクセルをデコイとしてカミラの下に送り込んでから早一ヶ月。
惚れた人間にそんなにも長い期間会えないのは辛いというのは、オルフェにも分かる。
ましてディクセルはオルフェとは違い相手の肌の熱を知ってるので、尚更辛いだろう。
とはいえ、ホムンクルスが日々大きくなりつつある今、カミラのことがあろうがなかろうが会わせる訳にはいけない。
「だったら早く本来の目的を完遂しろ。何をちんたらしているんだ。」
オルフェは誤魔化すように、叱るような口調でそう言った。
拗ねたような瞳でディクセルがちらりと見たので少しばかり誤魔化しが強引だったかと焦ったが、そこで表情に出す程オルフェは馬鹿ではない。
涼し気な表情をしたまま、紅茶を一口飲み込んだ。
「………カミラが急に警戒し出した。先輩がミリに近付いたからか?」
「いや、カミラは昔から先輩を嫌っている。学生時代に先輩に叱り飛ばされたからな。」
学生時代、オルフェや自分のクラスメイトに無茶難題を押し付けて暴れていたカミラは、一度だけオルフェを庇ったフィニスにこっぴどく叱られたことがあった。
今まで甘やかされて育ってきたカミラにとって、それは自尊心を砕くような出来事だった。
それ以降、カミラはひどくフィニスを嫌い避けている。
「先輩の悪口でも言って警戒心を解いてみたらどうだ。」
「は?嘘でも先輩の悪口とか嫌だが?」
反抗的ではあるが、ディクセルはフィニスを尊敬していた。
分かりにくい男だと思いながら、オルフェはそっと窓見た。
そこには人目を避けながら、ミリに栄養満点な弁当を運ぶフィニスの姿が見えた。
ホムンクルスはオルフェにとって全く興味はなかったので、ミリに役に立つ知識を何一つ与えることは出来なかった。
それでも与える血液には栄養がある方が、ホムンクルスにの為にもミリの為にもなるからと、こんな簡単なことしか出来ない事実が悔しくて仕方ない。
「あと少し、なんだけどなぁ………」
「アレは小賢しさだけはあるからな。とは言え、所詮は甘やかされて育った世間知らずだ。詰めは甘い。」
「お前の話?」
「そうか、お前よっぽどミリに学生時代の恥をバラされたいらしいな。」
「止めろ。ぶっ殺すぞ。」
ミリとオルフェが和解したことを知っているディクセルは、少しばかり焦った様子でそう言った。
学生時代から生意気だと思いつつも口でも知力でも勝てなかったディクセルを言い負かしたような気分がして、オルフェは少しだけ溜飲を下げた。
オルフェは努力を重ねる秀才型なので、天才型だがそこに胡坐をかくカミラを超えることは出来ても、天才型な上に日々努力を忘れないディクセルには元々付いている差を広がらないようにするだけで精一杯だから。
「あー、マジで可愛げが欠片もねぇ。可愛い俺のミリに会いたい………」
「貴様にミリをやった覚えはない。」
さめざめと………かなりわざとらしく顔を覆って泣き真似を始めるディクセルに呆れつつも、オルフェは少しばかり罪悪感を抱いた。
こんなにも愛してくれているのならば、やはりホムンクルスのことは話すべきなのでは?
しかし、確かにミリの言う通り、ディクセルがどういう反応を取るのかが分からない。
ミリ自身を傷付けることないだろうが、事故に装ってホムンクルスを傷付ける可能性はあった。
ホムンクルスは、生まれた瞬間から膨大な知識と成人の身体を持つ。
ミリに対しての様々な感情を拗らせたディクセルが、はたしてミリの傍にいきなり現れた存在を許すだろうか?
ましてや自分の遺伝子を持っているのならば、尚更。
128
お気に入りに追加
178
あなたにおすすめの小説
甥っ子と異世界に召喚された俺、元の世界へ戻るために奮闘してたら何故か王子に捕らわれました?
秋野 なずな
BL
ある日突然、甥っ子の蒼葉と異世界に召喚されてしまった冬斗。
蒼葉は精霊の愛し子であり、精霊を回復できる力があると告げられその力でこの国を助けて欲しいと頼まれる。しかし同時に役目を終えても元の世界には帰すことが出来ないと言われてしまう。
絶対に帰れる方法はあるはずだと協力を断り、せめて蒼葉だけでも元の世界に帰すための方法を探して孤軍奮闘するも、誰が敵で誰が味方かも分からない見知らぬ地で、1人の限界を感じていたときその手は差し出された
「僕と手を組まない?」
その手をとったことがすべての始まり。
気づいた頃にはもう、その手を離すことが出来なくなっていた。
王子×大学生
―――――――――
※男性も妊娠できる世界となっています
婚約破棄したら隊長(♂)に愛をささやかれました
ヒンメル
BL
フロナディア王国デルヴィーニュ公爵家嫡男ライオネル・デルヴィーニュ。
愛しの恋人(♀)と婚約するため、親に決められた婚約を破棄しようとしたら、荒くれ者の集まる北の砦へ一年間行かされることに……。そこで人生を変える出会いが訪れる。
*****************
「国王陛下は婚約破棄された令嬢に愛をささやく(https://www.alphapolis.co.jp/novel/221439569/703283996)」の番外編です。ライオネルと北の砦の隊長の後日談ですが、BL色が強くなる予定のため独立させてます。単体でも分かるように書いたつもりですが、本編を読んでいただいた方がわかりやすいと思います。
※「国王陛下は婚約破棄された令嬢に愛をささやく」の他の番外編よりBL色が強い話になりました(特に第八話)ので、苦手な方は回避してください。
※完結済にした後も読んでいただいてありがとうございます。
評価やブックマーク登録をして頂けて嬉しいです。
※小説家になろう様でも公開中です。
純情将軍は第八王子を所望します
七瀬京
BL
隣国との戦で活躍した将軍・アーセールは、戦功の報償として(手違いで)第八王子・ルーウェを所望した。
かつて、アーセールはルーウェの言葉で救われており、ずっと、ルーウェの言葉を護符のようにして過ごしてきた。
一度、話がしたかっただけ……。
けれど、虐げられて育ったルーウェは、アーセールのことなど覚えて居らず、婚礼の夜、酷く怯えて居た……。
純情将軍×虐げられ王子の癒し愛
ヒロイン不在の異世界ハーレム
藤雪たすく
BL
男にからまれていた女の子を助けに入っただけなのに……手違いで異世界へ飛ばされてしまった。
神様からの謝罪のスキルは別の勇者へ授けた後の残り物。
飛ばされたのは神がいなくなった混沌の世界。
ハーレムもチート無双も期待薄な世界で俺は幸せを掴めるのか?
竜王陛下、番う相手、間違えてますよ
てんつぶ
BL
大陸の支配者は竜人であるこの世界。
『我が国に暮らすサネリという夫婦から生まれしその長子は、竜王陛下の番いである』―――これが俺たちサネリ
姉弟が生まれたる数日前に、竜王を神と抱く神殿から発表されたお触れだ。
俺の双子の姉、ナージュは生まれる瞬間から竜王妃決定。すなわち勝ち組人生決定。 弟の俺はいつかかわいい奥さんをもらう日を夢みて、平凡な毎日を過ごしていた。 姉の嫁入りである18歳の誕生日、何故か俺のもとに竜王陛下がやってきた!? 王道ストーリー。竜王×凡人。
20230805 完結しましたので全て公開していきます。
【完結】だから俺は主人公じゃない!
美兎
BL
ある日通り魔に殺された岬りおが、次に目を覚ましたら別の世界の人間になっていた。
しかもそれは腐男子な自分が好きなキャラクターがいるゲームの世界!?
でも自分は名前も聞いた事もないモブキャラ。
そんなモブな自分に話しかけてきてくれた相手とは……。
主人公がいるはずなのに、攻略対象がことごとく自分に言い寄ってきて大混乱!
だから、…俺は主人公じゃないんだってば!
婚約破棄された悪役令息は従者に溺愛される
田中
BL
BLゲームの悪役令息であるリアン・ヒスコックに転生してしまった俺は、婚約者である第二王子から断罪されるのを待っていた!
なぜなら断罪が領地で療養という軽い処置だから。
婚約破棄をされたリアンは従者のテオと共に領地の屋敷で暮らすことになるが何気ないリアンの一言で、テオがリアンにぐいぐい迫ってきてーー?!
従者×悪役令息
婚約破棄が始まる前に、割と早急にざまぁが始まって終わる話(番外編あり)
雷尾
BL
魅了ダメ。ゼッタイ。という小話。
悪役令息もちゃんと悪役らしいところは悪役しています多分。
※番外編追加。前作の悪役があんまりにも気の毒だという人向け
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる