落ちこぼれ元錬金術師の禁忌

17

「………え？」

材料だったホムンクルスに変化が起きたのは、この子を作ってから3・0・日・目・のことだった。
レシピには40日と書いてあったのに、10日も早い………。
それに、確かに胎児のようなカタチにはなったけれど、透明じゃなくて白く濁っている。

「あ！血をあげなきゃ！」

レシピに書かれたカタチとも違うけど、もうこうなった以上はちゃんと造りあげよう。
俺はこの子のお母さんなんだから。
そう思いながら装置に表示されている温度に注意をしながら、用意していた刃物で指先を切って数滴垂らす。
大きな装置だけれど、本当にホムンクルスを造る為だけの装置だったのでちゃんと血液を注ぐ部分が作られていた。
どの程度あげたら良いのは分からなかったけれど、垂らし続けていると少しだけ胎児が赤く濁り出したからそのタイミングで止めてみる。

―――多かったり少なかったりしないかな？

不安だったけど、どの位量が必要なのかまでは記載されてないから勘でやるしかない。
兄さんは何か分かるだろうか？
小隊長さん経由で兄さんに聞いてみよう。
時間は掛かるにしても、兄さん達がやってることを無駄にしたくないから。

「………と、いう訳なので兄さんに聞いて欲しいです。」
「良いよ。それより、早熟なのが少し気になるね。」

小隊長さんにお願いすると快く引き受けてくれたけど、やっぱり俺と同じことが気になっていた。
人間にも早産というものはあるんだと教えてくれたけど、産まれて来る子は小さく身体が弱い子が多いらしい。
全部全部って訳じゃないよと直ぐフォローしてくれたけど、不安になってしまう。

「そこも含めてオルフェに聞いて来るよ。すぐに返信出来なくて申し訳ないけど。」

小隊長さんはそう言って、俺の話を纏めたメモを持って兄さんの所へ戻って行ってくれた。
ホムンクルスの様子を見てみる。
お魚に似たソレが本当に人間の胎児に似ているのかは分からない。
でも急にカタチが出て来たから、多分これが胎児なんだと思う。

「元気に大きくなぁれ。」

じんわりと、赤っぽくなっていた胎児っぽいモノの色が薄くなっていく。
俺の血から栄養取ってるのかな？
だとしたら俺自身も栄養不足だから良くないんじゃないかな？
ご飯………しっかり食べないと………

「でもどうやって栄養満点なご飯を手に入れよう。」

流石に小隊長さんに持って来てもらうのは違うと思うんだよなぁ………。
でも薄い血液だと、ホムンクルスの栄養にならないかもしれない。
そう思うと、自分が如何に見切り発車で動いているか、嫌と言う程分かってしまった。

「ごめんね、赤・ち・ゃ・ん・。」

俺はこれから一人親になるんだから、しっかりとしないと。