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ディクセル様が立ち去ったのを確認して、俺はひっそりと地下への扉を開けた。
地下の階段はけっこうな角度があるから、落ちて台無しにしたりしないように慎重に道具を運んで行く。
「………ふぅ」
音が立たないように置いて、一息を吐く。
結構な数があるから時間は掛かるけれど、頑張らなきゃ。
ディクセル様が手伝ってくださったおかげで、もう運び込むだけで済むのはありがたい。
ありがたいけど、もう来ないで欲しい。
ディクセル様が居ると地下に行けないし、俺は馬鹿だから勘違いを進ませてしまう。
さっきだって勘違いしてしまって凄く恥ずかしかったのに。
いや、勘違いしたのは俺が悪いんだけどさと思いながら首を横に振って、ゆっくりと振り返る。
地下室はそう広くはないが、狭くもない。
けれどもどこか圧迫感を与えるのは、部屋の隅に設置された大きな筒状の装置の所為だろう。
俺よりも背が高いそれは、地下室の三分の一を占領する程の大きさだ。
何をする装置なのかは知らない。
ただ、すごく大事な装置なんだろうという事は何となく分かっていたから毎日拭いていた。
兄だったら、この装置が何なのか分かるのだろうか?
「………ん?何か書いてある?」
ゴシゴシと強過ぎず弱過ぎずな力加減で装置を拭いていると、頑固だった埃がとうとう剥がれて下に書いてあった文字が見えた。
この装置の名前だろうか。
もっともっとキレイにすれば、兄が使う時にヒントになるかもしれない。
俺は真剣になって埃を拭った。
「ホムン………クルス………?」
出て来た文字に、心臓が高鳴る。
ホムンクルス。人造人間。
数多の錬金術師が挑戦しては敗れ去った、秘術中の秘術。
父も挑戦していたのか………。
「れ、レシピ………」
俺は別に錬金術師としての名誉なんて欲しくない。
今更、兄達に認めて欲しいとも思ってない。
それでもこの秘術に興味を抱いてしまったのは、家族が欲しかったからだ。
父も兄も弟も、便宜上や血の繋がり上そう言っているけれど俺の家族じゃない。
父と兄と弟だけが家族で、俺に家族は居ないのだ。
人造人間。
哀れで短命な、造られた命。
それは倫理に反した行為ではあるけれど、だからこそ、俺みたいに何も持っていないような奴には相応しいとも思った。
父が遺したレシピは書物に纏めてあって、俺は納屋から見つけ出す度にこっそり虫干しをして保管していた。
いつか、兄に渡す為だ。
錬金術師の遺産は、同じ路を志す家族が持つに相応しい。
この装置だってそうだ。
でも俺は、兄よりも先に使うことに決めた。
どうせ失敗するだろう。
そんなケチが付いた道具なんて、いくら綺麗にした所で兄だって使いたくない筈だ。
今まで兄は弟や父と違って暴力を奮わなかったけれど、今度こそ殴られるかもしれない。
それでも、俺はどうしても試してみたかった。
「あった………!」
幸か不幸か、レシピに記載された材料にあった数種類のハーブは近くに自生していたからすぐにでも集められる。
しかし、そうそうすぐに集められない材料が一つだけあった。
精液と血液だ。
最初に見た時は自分のを使えば良いと思ったが、使用する精液と血液はそれぞれ違う人間のモノではないといけないらしい。
困った………。
血液は毎日使用するモノだし、新鮮なやつじゃないとダメだから俺のを使う以外の選択肢はないが、そうなると問題は精液だ。
俺ではない人間の精液なんて、どうやって手に入れれば―――
『ミリ。』
「………っ!」
頭に浮かんできた人物に、俺は思いっきり首を横に振って振り払った。
そんなの、夢のまた夢だ。
地下の階段はけっこうな角度があるから、落ちて台無しにしたりしないように慎重に道具を運んで行く。
「………ふぅ」
音が立たないように置いて、一息を吐く。
結構な数があるから時間は掛かるけれど、頑張らなきゃ。
ディクセル様が手伝ってくださったおかげで、もう運び込むだけで済むのはありがたい。
ありがたいけど、もう来ないで欲しい。
ディクセル様が居ると地下に行けないし、俺は馬鹿だから勘違いを進ませてしまう。
さっきだって勘違いしてしまって凄く恥ずかしかったのに。
いや、勘違いしたのは俺が悪いんだけどさと思いながら首を横に振って、ゆっくりと振り返る。
地下室はそう広くはないが、狭くもない。
けれどもどこか圧迫感を与えるのは、部屋の隅に設置された大きな筒状の装置の所為だろう。
俺よりも背が高いそれは、地下室の三分の一を占領する程の大きさだ。
何をする装置なのかは知らない。
ただ、すごく大事な装置なんだろうという事は何となく分かっていたから毎日拭いていた。
兄だったら、この装置が何なのか分かるのだろうか?
「………ん?何か書いてある?」
ゴシゴシと強過ぎず弱過ぎずな力加減で装置を拭いていると、頑固だった埃がとうとう剥がれて下に書いてあった文字が見えた。
この装置の名前だろうか。
もっともっとキレイにすれば、兄が使う時にヒントになるかもしれない。
俺は真剣になって埃を拭った。
「ホムン………クルス………?」
出て来た文字に、心臓が高鳴る。
ホムンクルス。人造人間。
数多の錬金術師が挑戦しては敗れ去った、秘術中の秘術。
父も挑戦していたのか………。
「れ、レシピ………」
俺は別に錬金術師としての名誉なんて欲しくない。
今更、兄達に認めて欲しいとも思ってない。
それでもこの秘術に興味を抱いてしまったのは、家族が欲しかったからだ。
父も兄も弟も、便宜上や血の繋がり上そう言っているけれど俺の家族じゃない。
父と兄と弟だけが家族で、俺に家族は居ないのだ。
人造人間。
哀れで短命な、造られた命。
それは倫理に反した行為ではあるけれど、だからこそ、俺みたいに何も持っていないような奴には相応しいとも思った。
父が遺したレシピは書物に纏めてあって、俺は納屋から見つけ出す度にこっそり虫干しをして保管していた。
いつか、兄に渡す為だ。
錬金術師の遺産は、同じ路を志す家族が持つに相応しい。
この装置だってそうだ。
でも俺は、兄よりも先に使うことに決めた。
どうせ失敗するだろう。
そんなケチが付いた道具なんて、いくら綺麗にした所で兄だって使いたくない筈だ。
今まで兄は弟や父と違って暴力を奮わなかったけれど、今度こそ殴られるかもしれない。
それでも、俺はどうしても試してみたかった。
「あった………!」
幸か不幸か、レシピに記載された材料にあった数種類のハーブは近くに自生していたからすぐにでも集められる。
しかし、そうそうすぐに集められない材料が一つだけあった。
精液と血液だ。
最初に見た時は自分のを使えば良いと思ったが、使用する精液と血液はそれぞれ違う人間のモノではないといけないらしい。
困った………。
血液は毎日使用するモノだし、新鮮なやつじゃないとダメだから俺のを使う以外の選択肢はないが、そうなると問題は精液だ。
俺ではない人間の精液なんて、どうやって手に入れれば―――
『ミリ。』
「………っ!」
頭に浮かんできた人物に、俺は思いっきり首を横に振って振り払った。
そんなの、夢のまた夢だ。
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