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嵐の前の静けさだと、高城も吉塚も思っていた。
アレからなんのアクションもない。
高城も警戒して吉塚には気取られないように盗聴器やカメラの類いを探してみたけれど、それすら無い。
しかしあんな目をしておきながら、お二人はお付き合い始めたのですねならストーカー辞めますだなんてなるとはどうしても思えなかったのだ。
実害が無い以上警察に動いてもらうことも出来なくて、高城も吉塚も悶々とした日々を過ごす事になった。
「諦めてくれたのかな。」
ベッドに寝そべる高城の身体に乗り上げて、ぺっとりと胸板に頬をつけながら吉塚はそう言った。
高城の心音が聞こえて落ち着く。
重くはないのだろうかと吉塚は思ったけれど、高城は寧ろ軽過ぎて心配しているくらいだ。
吉塚は食べるのが遅いし少食だ。
しかも肉よりも野菜の方が好きなので、年齢よりも摂取カロリーが低いことの方が高城の悩みだったりする。
「それはない。今日もめっちゃ睨まれたし。」
………そう、高城に対して睨んではくるのだ。
毎朝毎朝、飽きもせず掃除するフリをしては正門付近に立ち、高城と吉塚の姿が見えなくなるまであの不穏な目付きで睨む。
しかし、それ以上何をするということもない。
ただ憎々しげに高城を睨むだけ。
それはそれで気持ちが悪い。
「恋人がモテると大変だわ。」
「それは俺のセリフー。」
吉塚の髪を撫でながら溜息を吐く高城の鼻を、吉塚は軽く摘む。
高城と吉塚が付き合ったという話は噂話として瞬く間に広がり、その真偽を確かめに来た女子達に高城も吉塚も当たり前のように真実だと認めた。
しかしそんなの認めたくはない一部の女子達は当然のように吉塚に嫌がらせをしようとしたが、吉塚自身黙って受け入れるようなタイプの人間でもないし、そもそも高城のプライドに居る四人がそれを許しはしない。
日々水面下で繰り広げられる攻防に、恋人がおモテになると大変だなと思っているのはどちらかといえば吉塚の方であった。
暇潰しになるので嫌いではないのだが。
「それについてはごめんなさい。」
「いいよ。レオンが悪い訳じゃないし、今レオンが出てきたら拗らせるだけだし。」
本日も高城くんを脅したのかとか本当に好きなら真っ当な道にうんぬんと言われたが、そんなのは知らない。
吉塚が高城を好きだと思いそこで終わっているのならばそれは正論だろうが、他の誰でもない高城自身が吉塚のことを好きだと言い、吉塚をただのメスではなく恋人の位置に置いているのだから他人に文句言われる筋合いはないのだ。
「そもそも俺気にしてない。」
「だろうとは思ったけどね。無理してない?」
「してない。ウザくなったら言うかもしれないけど、今は平気。」
ふわりと一つ欠伸をしながら、吉塚は完全に高城を敷布団にしてしまう。
恋人特権だ。
「俺の恋人が男前過ぎて可愛い」
「なんだそれ。」
高城がへらへらと笑いながら言えば、吉塚も楽しそうに笑う。
この時間を手放したくはない。
ご機嫌な吉塚に腕を回しそのまま横に転がれば、吉塚にとってはちょっとしたアトラクションだったらしく声を上げて笑った。
男前で凶暴で、それでいて可愛い。俺だけのメス。
奪われてなるものかと、高城は唸りながら吉塚に深くキスをした。
吉塚に選ばれたのは自分だという確固たる自信はあるが、その理屈が分かるのはケモノである自分達だけだということを高城は理解している。
だからこそ、例え吉塚を貪っている最中でも警戒を怠ることはない。
喘ぎながら自分を呼ぶ吉塚の声だけが、高城にとっての癒しであった。
アレからなんのアクションもない。
高城も警戒して吉塚には気取られないように盗聴器やカメラの類いを探してみたけれど、それすら無い。
しかしあんな目をしておきながら、お二人はお付き合い始めたのですねならストーカー辞めますだなんてなるとはどうしても思えなかったのだ。
実害が無い以上警察に動いてもらうことも出来なくて、高城も吉塚も悶々とした日々を過ごす事になった。
「諦めてくれたのかな。」
ベッドに寝そべる高城の身体に乗り上げて、ぺっとりと胸板に頬をつけながら吉塚はそう言った。
高城の心音が聞こえて落ち着く。
重くはないのだろうかと吉塚は思ったけれど、高城は寧ろ軽過ぎて心配しているくらいだ。
吉塚は食べるのが遅いし少食だ。
しかも肉よりも野菜の方が好きなので、年齢よりも摂取カロリーが低いことの方が高城の悩みだったりする。
「それはない。今日もめっちゃ睨まれたし。」
………そう、高城に対して睨んではくるのだ。
毎朝毎朝、飽きもせず掃除するフリをしては正門付近に立ち、高城と吉塚の姿が見えなくなるまであの不穏な目付きで睨む。
しかし、それ以上何をするということもない。
ただ憎々しげに高城を睨むだけ。
それはそれで気持ちが悪い。
「恋人がモテると大変だわ。」
「それは俺のセリフー。」
吉塚の髪を撫でながら溜息を吐く高城の鼻を、吉塚は軽く摘む。
高城と吉塚が付き合ったという話は噂話として瞬く間に広がり、その真偽を確かめに来た女子達に高城も吉塚も当たり前のように真実だと認めた。
しかしそんなの認めたくはない一部の女子達は当然のように吉塚に嫌がらせをしようとしたが、吉塚自身黙って受け入れるようなタイプの人間でもないし、そもそも高城のプライドに居る四人がそれを許しはしない。
日々水面下で繰り広げられる攻防に、恋人がおモテになると大変だなと思っているのはどちらかといえば吉塚の方であった。
暇潰しになるので嫌いではないのだが。
「それについてはごめんなさい。」
「いいよ。レオンが悪い訳じゃないし、今レオンが出てきたら拗らせるだけだし。」
本日も高城くんを脅したのかとか本当に好きなら真っ当な道にうんぬんと言われたが、そんなのは知らない。
吉塚が高城を好きだと思いそこで終わっているのならばそれは正論だろうが、他の誰でもない高城自身が吉塚のことを好きだと言い、吉塚をただのメスではなく恋人の位置に置いているのだから他人に文句言われる筋合いはないのだ。
「そもそも俺気にしてない。」
「だろうとは思ったけどね。無理してない?」
「してない。ウザくなったら言うかもしれないけど、今は平気。」
ふわりと一つ欠伸をしながら、吉塚は完全に高城を敷布団にしてしまう。
恋人特権だ。
「俺の恋人が男前過ぎて可愛い」
「なんだそれ。」
高城がへらへらと笑いながら言えば、吉塚も楽しそうに笑う。
この時間を手放したくはない。
ご機嫌な吉塚に腕を回しそのまま横に転がれば、吉塚にとってはちょっとしたアトラクションだったらしく声を上げて笑った。
男前で凶暴で、それでいて可愛い。俺だけのメス。
奪われてなるものかと、高城は唸りながら吉塚に深くキスをした。
吉塚に選ばれたのは自分だという確固たる自信はあるが、その理屈が分かるのはケモノである自分達だけだということを高城は理解している。
だからこそ、例え吉塚を貪っている最中でも警戒を怠ることはない。
喘ぎながら自分を呼ぶ吉塚の声だけが、高城にとっての癒しであった。
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