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愛していると泣き叫ぶ獣

ストーカーの思考はよく分からん。

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「………僕は、怖かったです。」

蹲る秋元に、恐る恐ると康介は近付いていく。
近付かなくて良い、とは思うが、康介が何を言いたいのかが気になるから様子を見ることにした。
もし秋元が何かしようものなら、真っ先に庇えるように警戒は怠らないがな。

「愛してるというのなら、尚更コミュニケーションを取って欲しかった。」

悲しさや苦しさを携えながら康介がそう言えば、秋元は今気付いたかのように顔を上げた。
名乗りもしてない、喋ったこともない奴が、一方的に自分を知っているだけではなくてまるで恋人かのように振る舞う。
それは恐怖でしかなかっただろうし、もしも俺と付き合ってなかったら、多分知らない間に外堀全部埋められて当然のように既成事実を作られていただろう。

「僕は多分、貴方のことを一生そういう意味で好きにはなれないと思います。今回みたいな行為を好きな人や恋人にならしていいと思うような危険性を持ってる人を、恋人にはしたくない。」

キッパリと切り捨てたのは、一種の優しさなんだろうな。
変に甘やかしたら、また暴走するだろうし。

「………でも、」
「「でも?」」
「ちゃんとコミュニケーション取ってくれるなら、ちょっと親しい知人位になら、なれます。」

………なぁんでそこで中途半端なことするんだよと思わないこともないが、だが完全に切ってしまうとそれこそ暴走する恐れがあるのか?
ストーカーの思考はよく分からん。

「ほ、本当に………?」
「ええ。でも僕は絶対に貴方を愛さない。好きにもならない。それでも………」
「それでもいい!貴方の傍に居れるなら!」
「傍に居て良いとは一言も言ってねぇぞ。」

まーた過大解釈を始めた秋元には、しっかりと釘を刺しておく。
ちょっと親しい知人程度なんだよ。
友人以下なんだからほいほい傍に寄ってくんな。

「お前に言ってない。」
「うるせぇ、実際言われてないだろうが。」

ガラリと雰囲気を変えて、秋元がそう言った。
なんだコイツ、腹立つ。
何一つ反省してねぇだろ。

「康介、康介!」
「はいはい、耀司くんは僕の代わりに言ってくれたんだもんね。ありがとう。」
「………蘭、お前ね。子供じゃないんだから………藤代も甘やかさないの。」

たまらず康介を呼ぶ俺に課長が呆れたようにそう言ったが、知るか。
俺は間違ったこと何一つ言ってねぇもん。
流石に課長の前だからかいつものように頭撫でてもらえないせいで、腹立つ気持ちも治まらない。

「………とにかく、僕の家の盗聴器とかその辺り全部外してくれません?」

至極真っ当な欲求。
秋元がその欲求さえ叶えればちじんになれるのかと期待で何度も頷くのを見ながら、俺は余計に不貞腐れた気持ちになる。
俺ん家で囲う言い訳、なくなるじゃん。
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