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二ヶ月目

ちょっと固めなのが最高に俺好み。

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コンビニで買った米は、なかなかに美味かった。
結局具材も何もないから、ついでに混ぜご飯の素も買って作ってもらったシンプルなワカメおにぎりは今まで恋人に作ってもらった飯の中で一番美味かった。

「美味かった。ご馳走様でした。」
「お粗末さまでしたー。って言ってもふっつーのおにぎりだけどね。」

その普通のおにぎりでも、そもそも米の炊き方から違うのか食感から違う。
握りやすさの都合なんだろうけど、ちょっと固めなのが最高に俺好み。
握ってもらった分を全て食べてしまったが、正直もっと食べたい所ではある。

「ねぇ、洗濯させてもらっていい?昨日パジャマに着替えないで寝たから、服着替えて洗濯したい。」
「良いぞ。俺も洗濯するヤツあるからついでに出せ。」

風呂も入ってなかったからと朝食の後に風呂入りながら二人分の洗濯物を回して、終わったら暖かな日差しの中で二人並んでベランダで洗濯物を干す。
あー、やべぇ。
めっちゃ幸せかもしれねぇ。

「ねぇねぇ。」
「ん?」
「何で耀司くんの家、こんなに広いの………?」

洗濯物を干し終わってさて中に戻るかという所で、何故か不安そうな顔をして康介がそう言い出した。
確かに俺ん家は元々ファミリー向けの間取りな為広い………が、何度も来ておいて今更聞くことか?

「見栄」
「え?見栄?」
「そ。誰か来た時、マウント取れるだろ?」
「まうんと」

まぁ、康介以外誰も来たことないんだけどな。
付き合ってた女達も、招く前に別れたし。
遠慮がちにシャツの袖を引く康介の手を掴んで離し、俺の腰に腕を回すように誘導しながらそう言えば、康介はクスクスと笑いながら俺の背中に顔を埋めた。
なんだそれ可愛い。

「僕だけ?」
「ああ。なんならその履いてるスリッパも、今日使った歯ブラシも、全部お前用だよ。」

もうここに康介が居てくれるなら、誰かを呼ぶ必要もない。
それならば康介はオンリーワンだから、もう康介だけの物にしても良いだろう。
このままなし崩しで同棲にならねぇかな。

「僕の………僕だけの。」
「気に食わねぇなら今度買いに行くか?」
「ううん!これが良い!」

俺から腕を離し、ぷらぷらと足を動かす。
スリッパの履き心地を試しているのか、それとも他に理由があるのか………。
ただまぁ、キラキラとした目でしているから多分ご機嫌な行動なんだろう。
康介がご機嫌なら、なんでも良いか。

「なぁ、今日昼に買い物行くか?」
「何を?」
「食器とか、色々。」

別にここに住んで欲しい訳じゃない。
いや、住んで欲しいとは思うけど、今すぐの話じゃない。
俺だってまだ【お試し】な訳だし。
でも本当の恋人になった時に、この見栄と虚しさだけのただ広い部屋に康介がずっと居てくれるなら、それはきっと幸せな事だと思うから。

「………うん!」

今はこの返事に、この笑顔に。
ただ期待だけをしていたい。
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