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二ヶ月目

コイツは絶対猫なんだ

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結局泣いた。
俺も泣いたし、康介も静かに涙を流していた。

「胸が痛い………」
「分かる………ちょっと退け。ティッシュ取って来る。」

膝の上に乗せたままだった康介を降ろして、俺は少し離れた場所に置いていたティッシュを取りに行く。
鼻水出てきて気持ちが悪い。
取り敢えず箱ごとティッシュを持ってソファの場所まで戻れば、康介はいつものソファベッドにうつ伏せになって鼻を鳴らしながら泣いていた。
クッションに鼻水付けんなよー。

「ほら。」
「ありがと………うーん、あそこまで心抉ると思ってなかった………」

ティッシュで思いっきり鼻をかみながら、康介は涙で充血した瞳でそう言った。
俺が泣くって言った時点で、察しろよ。
そう言いたいが、毎回ダイレクトに心抉られている俺が笑えた義理じゃないので黙っておく。

「大丈夫か?」
「暫く無理かも。ホラーじゃないのにめっちゃ抉られた。」

まぁ、感受性高そうだもんな。
グロッキーのような状態でソファに寝転ぶ康介からゴミを受け取って捨てて、俺もブランケットを装備しながら同じようにソファに寝転ぶ。
ちょっといつもより遅いが、昼寝でもするか。

「おいで、抱っこしてやる。」

いつもは俺が康介の腕枕で寝てるが、今回は逆にした方が良いだろう。
そう思いながらした提案だったがどうやら正解だったらしく、康介は大人しく俺の腕の中に収まった。
ガチで元気無くしてやんの。
………悪かったな。

「ホラー観れんの?」
「観れない。怖いもん。お風呂入れなくなる。責任取ってもらうからね。」
「観せねぇよ。」

風呂入れなく責任とやらは是非とも取らせてもらいたいが、俺も実はホラーがそう得意な訳じゃないしな。
………格好悪ぃから暫くは黙っておくけど。
もぞもぞと康介を抱えたままブランケットを肩までかける。
俺の肩までかけたから康介はブランケットの中に入り込んでしまうが、嬉しそうにぷすぷす鼻を鳴らしてるから多分大丈夫だろう。

「暑くないか?」
「寒い。あっためて。」

落ち着け、落ち着け俺。
今コイツが言った言葉には、何の他意も無い。
あるとしたらガチで寒いって思ってる感情と、抱きしめてもらったら人肌で温まれるというもっともな打算だ。
つまり、大人のアレやコレは一切考えてない。

「じゃあもうちょいこっち来い。」
「ん。」

擦り寄ってきた康介を抱き締めて、コイツは猫なんだと自分自身に言い聞かせる。
猫だから寒いときに人間をあったかい棒だと思ってるし、猫だから平気で抱き着いてくるんだ。
猫だから仕方ない。
うん、仕方ない。
別に可愛くねぇ顔なのに可愛いと思っちまうのも、猫だから仕方ねぇ訳だよ納得。

「あったかい。」
「おう。よかったよかった。」

ぎゅうぎゅうと抱き着いてくる康介の額にキスをする。
嬉しそうに目を細めたから、コイツは絶対猫なんだと思うことでなんとか………なんとか俺の股間を落ち着かせることに努めた。
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