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Fの嘘

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さて、問題はシューヤの人見知りとそれに伴うストレスだったが、以前のシューヤを知らない奴らばかりなのとほぼ年寄りというのが良かったのか、案外あっさりと村に馴染んだ。
まぁ、シューヤは真面目で良い子だから元々年寄り受けが良い。
寧ろ地元民の筈の俺がシューヤに迷惑かけてないだろうなと言われる始末だ。

「フィル、見て。アジェルばあさまに、貰った。」

シューヤはまだカタコト感は抜けなかったが、だいぶ言葉はスムーズになった。
うちの村の年寄り達はゆっくりとした性格なのが幸いだったのだろう。
今も隣家のばあさんから両手いっぱいに貰った野菜を嬉しそうに掲げて俺の所に来た。
お人好しなじいさんばあさんに可愛がられてるおかげか、最近のシューヤは毛艶が良い。
痩せっぽちなのは、相変わらずだが。

「おー。随分立派なの貰って来たな。アジェルばあさんにうちに卸せって言っとけ。」
「………って、フィルが言ったら、余計な、お、お世話って、言っておいでって。」
「おおう。見透かしてやがる。」

大事そうに野菜を外の洗い場の盥の中に並べながら、シューヤはにこにこと楽しそうに笑う。
俺はそんなシューヤを後ろから抱き締めながら、陽に当たったからか少し赤くなっている項に鼻を寄せた。
日焼け止め仕入れるか。
ばあさん共もおしゃれしてぇだろ。

「フィル、ダメ。」
「んー。何で。」
「俺、今汚い。」

恥ずかしそうにイヤイヤと首を横に振るシューヤの項に汗が光る。
それを認めた瞬間、ぞくぞくとした興奮が走った。
俺は嘘を吐いたままだしシューヤは痩せっぽちのままだが、実はここに移り住んで二ヶ月経つか経たないかという時に俺はあっさりと手を出した。
無理だろ。
改装の間に借りてた借家は狭く、二人で寄り添って眠らないといけない程なんだぞ?
惚れた相手と二人きり、邪魔するモノは何もなく静かなベッドの上。
しかも嘘であれ恋人同士だ。
ぶっちゃげ手を出さない方が失礼なレベルだと、言い訳をさせて欲しい。

「それにまだお昼、だから。」
「はいはい。」

野菜を置き終わったシューヤは身体を捩って俺と向き合うような体制になると、思いっきり腕で俺の身体を押した。
全然ビクともしないんだが、俺も仕事があるのは事実だ。
名残惜しいが腰を抱き寄せてキスをして、家に戻るよう促す。
陽はまだ長いし、俺もまだ終わらない。

「お昼寝しててくれないか?今日は飯食いに行こう。」
「うん。」

額にキスをして、名残惜しいが身体を離す。
にこにこと手を振って家へと戻って行く背中を見送りながら、今日は早めに閉めるかと考える。
どうせじいさんばあさん共も日が暮れる前に家に帰っちまうからな。
こういう風に時間に融通が利くのが、クソ田舎の自営業の利点だ。
そう思いながら俺は一つ伸びをした。

この後起きる絶望に気付かずに、のんびりと。
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