君の好きなものを、全部

かかし

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閑話:友人が婚約したらしい

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「は?ユージーンが結婚?」
「結婚はまだですが、婚約はされたそうですよ。」

なんてことない風で学友であり、次期宰相候補でもあるサフィアは言った言葉に私は食べようとしていたクッキーを落としかけた。
寸での所で掴み直したのでセーフだと思うが、サフィアは厳しい顔を向けたからギリギリアウトよりのセーフなのだろう。
王太子である私がセーフって言うんだからセーフだ。

それよりも、あのユージーンが婚約………。
ユージーンと私達は身分さこそあるも、何の気兼ねなく年相応な悪巧みから国政をかけたディベートまで行えるような仲だった。
所謂、友人だ。
ユージーンだけにね!

………閑話休題。
ユージーンは男爵家だから所謂下級貴族ではあるが、腐りきった貴族達で溢れ返っている昨今の貴族や貴族令息には珍しく、領民を深く愛する貴族令息だ。
あまりにも深く愛しすぎて、婚約者は絶対に領民を愛する女性じゃないと嫌だと駄々を捏ね続けていたのだが………

「あの条件を呑んだ女性が居るのか?それとも持参金目当ての詐欺?」
「アレでも一応友人だったのでは?………まぁ、相手がフィルナンド商会の次女らしいので、詐欺の可能性も半分ですかね。」
「フィルナンド商会の次女ぉ?」

巷ではずれと噂されている女性のことか。
なんでも長女は美人なのに、次女は醜女でその上幽鬼のようだと。
………ばっかみてぇな話。
おっと、口が滑った。
恐らくはその美人と評判の長女が一枚嚙んでいるんだろうが、そんなことはどうだって良い。

「あの噂を、誰よりもずる賢く危機回避能力が高いユージーンが真に受けているとでも?」
「貴方のユージーンに対する評価が高いのか低いのか分かり兼ねますが、正直領民以外はどうでも良いと思っている人間なのでありえないことはないですね。」

バッサリと切り捨てるサフィアもどうかと思うのだが、だが確かに、領民の為だとするとアイツは自分自身すら安売りするのかもしれない。
そして領民以外の他人の気持ちを慮る姿も想像つかないので、やはり持参金詐欺が最有力候補だな。
婚約者の子も可哀想に………
名前知らないけども。

「取り敢えず………」
「はい?」
「フィルナンド商会の次女と、フィルナンド商会自体を調べようか。」

友人から弄ばれて捨てられるのも可哀想だし、逆に友人を騙しているんじゃなかろうか説も0.00001%程存在する。
………アイツが騙されるような繊細さがあるかどうかは知らない。
そう言えばこの間オールフェンド領に来た詐欺目的の商人から、逆に金を巻き上げたらしいけれども。
でも奇跡が起きて騙されるかもしれない。

「無いと思いますけどね。」

サフィアはそう言うが、私はたまにはアイツが痛い目見るのだと、信じたいのだ。
だってそちらの方が、面白いだろう?
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