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序章

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「あ!そうだね!ごめんね、ずっと立たせててごめんね!」

僕の言葉にルイスは慌ててそう言うと、僕をお家の中に招待してくれた。
急かしたみたいになって図々しいなと我ながら思うけど、ルイスが騎士様みたいなことしだした辺りから街の人達が何事かとチラチラ見てて恥ずかしかったから、仕方ないと思って欲しい。
ごめんね………。

「ううん、大丈夫!おじゃまします!」
「うん、いらっしゃい。」

ルイスのお家は薬草屋さんだけど、居住スペースはお店の奥にあって裏口が玄関みたいになってる。
本当はちゃんと表から入ってご両親にご挨拶すべきなんだろうけど、ルイスのご両親は元々お父さんとお母さんと一緒に働いていたらしくとっても仲が良い。
養子とはいえ、お父さんとお母さんの子供だから、遊ぶときは裏から入って勝手に遊んでて良いよと言われてるので、お言葉に甘えてる感じだ。

「あ!ウィリアムだ!いらっしゃい!」

ちょっぴり恥ずかしいけどルイスにエスコートしてもらいながら家の中に入ると、まさに鈴を転がすようなという表現がふさわしい程に可愛い声が聞こえた。
声の方を見るとふわふわのウェーブかかったツインテールと、まるでお姫様みたいにフリルがふんだんに使われたワンピースを愛らしく揺らしながらこっちに駆け寄って来る一人の人物。
ルイスによく似た、でもルイスよりも目が大きくて丸っこいから可愛らしい印象を与えるその人物は―――

「キャロル!久しぶり!」
「久しぶり!兄貴もおかえり!」

ルイスの双子の弟の、キャロルだ。
キャロルはルイスと同じくらいの身長だけど、ルイスよりも細いから似合わないし可愛いのが着たいという理由でいつもふわふわひらひらしたお姫様みたいな服を着ている。
かと言って女の子になりたいかと言われるとそうじゃないらしく、単純により似合う服を着たいといいう考えらしい。
だから大きくなってもし似合わなくなったら着ないしより似合う服を着ると言ってた。

「あれ?そっちも可愛いけど、朝着てた服と違うね。」
「兄貴………すっごく良いこと言ってるけど、朝着てたの寝間着だからね。」

僕の手を取りながら、マイナスポイントって呟いてたけど何の話なんだろう。
ところで僕の家はお母さんの故郷での風習に合わせて靴をぬぐ文化だから、よそのお家に行くと毎回手間取ってしまう。
ついついクセで靴をぬいでしまいそうになるんだ。
毎回毎回あわあわとしてしまう僕に、それでもルイスもキャロルもゆっくり待ってくれるから助かる。
いつもありがとう。

「待って、キャロル。ウィリアムの左側は俺だから。」
「は?ここに来るまでの間、兄貴が居たんでしょ?じゃあ俺にゆずってよ。」

さっきまで仲良かった筈なのに、何故か急にケンカ………とまではいかないけどなんだか嫌な雰囲気になるのか………僕の左側なんて、なんなら壁でも良いのよ?
そう思うけど、なんだか言えない雰囲気。

「ウィリアムと約束したから。俺が居たら俺優先なの。」
「へぇ、じゃあ遊び行ってくれば?兄貴、そもそも今日イザベラ達と約束してたんじゃないの?」
「えっ!?本当!?」

イザベラはこの街でキャロルの次に可愛いと有名な女の子だ。
多分、ルイスのことが好きみたいで、僕とルイスが一緒に居るとにらみつけてくるから、僕は正直イザベラのことがあんまり好きじゃない………。
一番可愛いはキャロルだからか、キャロルのこともにらんでくるし。

「約束してない。誘われたけど、イザベラと遊ぶのは疲れるから嫌ってちゃんと言って断った。」
「うーん、マイナスポイント。分かるけどさ、言い方考えよう?」

またマイナスポイントされちゃった。
何のポイントがマイナスされたんだろう?
そこからもう少し言い合いしてたけど、最終的にルイスが左でキャロルが右に居るってことで落ち着いていた。
だから、僕の左側は壁でも良いんだよ?
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