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後編
信じれるものが何一つなかった!(※残虐描写有)
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「今からいう話は、到底信じられないかもしれないけれど………」
その前置きでドミニク様が話しだした内容は、確かに信じられないものだった。
それは、ドミニク様が僕と同じで巻き戻っていたから………というのも勿論あったのだけど、それ以上に信じられないと思ったのは、ドミニク様が語る僕への感情だ。
手紙が処分されているんだろうなということは、何となく察してはいた。
普通に考えて、恋人のストーカーのクセに伴侶の座に収まっているような男が送った手紙を、恋人に渡したくなんかないよねって思ってた。
『私が留守を任されているの。メイド長も家令も皆知ってるわ。』
『どんな手を使ったのか知らないけど、私は学生の頃からドムの恋人だったのよ!?なんでアンタみたいな奴が………!』
あの人は美しい顔を歪ませて、僕を何度も何度も箒で叩いた。
それを使用人の人達は、楽しそうに見ていた。
誰も僕に手を差し伸べてくれなかった。
やがて箒が折れてしまったタイミングで、僕は王令を持った兵士達に連れ去れた。
そして訳も分からないまま、僕の目の前で王は僕の家族を、家族同然に接してくれていた使用人達を全員殺していった。
王は何かを言っていたけれど、何を言っていたのかは分からなかった。
分かりたくも、なかった。
ただ潰えていく命を見ていられなくて抵抗すれば、兵士に殴られ、王の目の前で嬲られた。
学生の頃、友人だと思い込んでいた王は、そんな僕を見て楽しそうに笑った。
―――嗚呼、僕は皆から嫌われていたんだな。
僕がそう思うには、十分過ぎた。
ドミニク様が、僕じゃない人を愛していたのが苦しかった。
学友になれていたと思っていたレオナルド王が、僕を笑って楽しんでいるのが悲しかった。
何より、顔も名前も知らないドミニク様じゃない人に、家族達の死体の前で僕の身体が好きにされていることが、死にたくなる位に嫌だった。
それなのに、それなのに………!
「そんなの信じない………」
「ルイ、私は………」
「それじゃあ僕の家族は、そして僕は、何の為に殺されたの!?」
レオナルド王が言ってたことは覚えてないけど、でもきっと、ドミニク様の為だと思っていた。
友人の恋の為に、邪魔な僕を排除する。
先王の命令で結ばれた結婚なのだから、何もおかしくない話だ。
でもドミニク様が僕を好きだったのだとしたら、何もかも前提が崩れてしまう。
「彼女が来た日、誰も僕を助けてくれなかった。皆僕を笑っていた!」
「まさか、お前も………」
「彼女と貴方は愛し合っているのだと、誰も彼もが言っていた!」
「違う!俺はずっと、ルイ、君だけを………」
「知らない!だって、貴方が居なかったのだから、皆が言うことが真実になるじゃないか!」
加害されながら言われた言葉は、僕の心に深く沁み込んでいく。
傍に居ない、言葉も聞けない貴方に助けを求めることもできない。
否、助けを求めて送った手紙はあった。
しかし貴方に届かなかった。
でも僕は届くことすらなかったことを知らなかったのだから、無視されたのだとしか思えないじゃないか。
信じたかったけど、信じれるものが何一つなかった!
「すまない。本当に、申し訳ないと思ってる。俺を恨んでも、仕方ないと分かってる。今でも君の死に顔を思い出しては、後悔している。君に頼られたい、格好良い所を見せたい。そんな無粋な理由で出陣要請を受けたことを、本当に後悔している………君に相応しい雄になりたいと、君に初めて会った時からずっと思っていたのに………」
そんなのは知らない。
聞きたくないと首を横に振る。
「俺という存在そのものが君に相応しくないと理解して、時間が巻き戻った今世で関わることすら出来なくなって。それでも我慢すべきだと。そうすることで君は幸せになれるからと。でも、でもどうしても………」
ドミニク様が涙を流す。
僕も泣いていた。
ずるずると、力を失ったようにドミニク様はしゃがみ込んだ。
「君に俺の手紙を、受け取って欲しかった………」
僕だって、受け取りたかった。
僕だって、受け取って欲しかった。
その前置きでドミニク様が話しだした内容は、確かに信じられないものだった。
それは、ドミニク様が僕と同じで巻き戻っていたから………というのも勿論あったのだけど、それ以上に信じられないと思ったのは、ドミニク様が語る僕への感情だ。
手紙が処分されているんだろうなということは、何となく察してはいた。
普通に考えて、恋人のストーカーのクセに伴侶の座に収まっているような男が送った手紙を、恋人に渡したくなんかないよねって思ってた。
『私が留守を任されているの。メイド長も家令も皆知ってるわ。』
『どんな手を使ったのか知らないけど、私は学生の頃からドムの恋人だったのよ!?なんでアンタみたいな奴が………!』
あの人は美しい顔を歪ませて、僕を何度も何度も箒で叩いた。
それを使用人の人達は、楽しそうに見ていた。
誰も僕に手を差し伸べてくれなかった。
やがて箒が折れてしまったタイミングで、僕は王令を持った兵士達に連れ去れた。
そして訳も分からないまま、僕の目の前で王は僕の家族を、家族同然に接してくれていた使用人達を全員殺していった。
王は何かを言っていたけれど、何を言っていたのかは分からなかった。
分かりたくも、なかった。
ただ潰えていく命を見ていられなくて抵抗すれば、兵士に殴られ、王の目の前で嬲られた。
学生の頃、友人だと思い込んでいた王は、そんな僕を見て楽しそうに笑った。
―――嗚呼、僕は皆から嫌われていたんだな。
僕がそう思うには、十分過ぎた。
ドミニク様が、僕じゃない人を愛していたのが苦しかった。
学友になれていたと思っていたレオナルド王が、僕を笑って楽しんでいるのが悲しかった。
何より、顔も名前も知らないドミニク様じゃない人に、家族達の死体の前で僕の身体が好きにされていることが、死にたくなる位に嫌だった。
それなのに、それなのに………!
「そんなの信じない………」
「ルイ、私は………」
「それじゃあ僕の家族は、そして僕は、何の為に殺されたの!?」
レオナルド王が言ってたことは覚えてないけど、でもきっと、ドミニク様の為だと思っていた。
友人の恋の為に、邪魔な僕を排除する。
先王の命令で結ばれた結婚なのだから、何もおかしくない話だ。
でもドミニク様が僕を好きだったのだとしたら、何もかも前提が崩れてしまう。
「彼女が来た日、誰も僕を助けてくれなかった。皆僕を笑っていた!」
「まさか、お前も………」
「彼女と貴方は愛し合っているのだと、誰も彼もが言っていた!」
「違う!俺はずっと、ルイ、君だけを………」
「知らない!だって、貴方が居なかったのだから、皆が言うことが真実になるじゃないか!」
加害されながら言われた言葉は、僕の心に深く沁み込んでいく。
傍に居ない、言葉も聞けない貴方に助けを求めることもできない。
否、助けを求めて送った手紙はあった。
しかし貴方に届かなかった。
でも僕は届くことすらなかったことを知らなかったのだから、無視されたのだとしか思えないじゃないか。
信じたかったけど、信じれるものが何一つなかった!
「すまない。本当に、申し訳ないと思ってる。俺を恨んでも、仕方ないと分かってる。今でも君の死に顔を思い出しては、後悔している。君に頼られたい、格好良い所を見せたい。そんな無粋な理由で出陣要請を受けたことを、本当に後悔している………君に相応しい雄になりたいと、君に初めて会った時からずっと思っていたのに………」
そんなのは知らない。
聞きたくないと首を横に振る。
「俺という存在そのものが君に相応しくないと理解して、時間が巻き戻った今世で関わることすら出来なくなって。それでも我慢すべきだと。そうすることで君は幸せになれるからと。でも、でもどうしても………」
ドミニク様が涙を流す。
僕も泣いていた。
ずるずると、力を失ったようにドミニク様はしゃがみ込んだ。
「君に俺の手紙を、受け取って欲しかった………」
僕だって、受け取りたかった。
僕だって、受け取って欲しかった。
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