30 / 50
中編
ちゃんと、理解してる
しおりを挟む
「ら、らぶれたーだ………」
あの青色の手紙を見終わって、僕は顔が真っ赤になるのを感じた。
以前の僕も含めて、生まれて初めてこんな愛の溢れる手紙を貰った。
どうしよう。
誰かと間違えてるのかなと思ったけど、名前をハッキリと書かれてるから間違いないだろう。
でも話したことあるって、一体誰なのだろうか………。
ベッドの上に便箋を広げて、推理してみる。
あ、因みに便箋の色は封筒と同じく淡い青色だった。
まずは【遠くから】って表現と何度も出てくる【許されない】ってワード。
多分なんだけど、この人はご学友候補の子供じゃないのだろうか。
基本的にご学友候補の子はご学友候補の子とのみ交友関係を広げていく。
勿論、学園卒業後にそこから広げていくパターンもあるけど。
でも学園の中に居る時は、王族が優先だ。
一般学生に構ってる暇なんてない。
更に言うなら恋愛とか婚約とか、そういう将来に関わることは尚更ご学友候補の子達同士でやるものだ。
だって、王族に仕える才能が無いものを王族に引き入れる訳にはいかないから。
でもそれを前提にしてしまうと今度はこの手紙はイタズラか、若しくは誰かと勘違いしているかという線が浮上するのだ。
だって僕がこの学園で、或いはこの学園に入学する前に名乗って会話したことあるのは二人だけ。
ドミニク様と、レオナルド王子様だけだ。
でもこの二人は、僕のことをとても嫌っている。
関わってないから嫌われてはないだろうけど好かれる筈がないし、こんなラブレターなんて貰える筈がない。
でもヘクターくんは【危害を加えるものじゃない】と言っていた。
【良いことが書かれている】とも。
だとしたらこれは悪戯じゃない可能性もある訳で………じゃあ、誰なんだろうか?
僕が覚えていないだけで、誰かと話した?
でもご学友候補になる程の人とお話して、覚えてないなんてそんなことある?
じゃあやっぱりそもそもご学友候補じゃないとか?
でもそれなら普通に話し掛けられる筈だ。
同じクラスの子達とは皆話してるし、違うクラスだからって話しかけちゃダメなんて決まりはない。
「どうしたら良いと思う?」
「結局僕に聞いちゃうのか。」
「だってヘクターくんなら助けてくれそうだから。」
暫くうんうん唸ってた僕だけど、結局どうしようもなくなってヘクターくんのスペースに突撃することにした。
甘え過ぎかなとも思ったけど、ベッドに座って本を読んでいたヘクターくんがいつもの笑顔でおいでと呼んでくれたので遠慮なくベッドに腰掛ける。
二人分の体重にベッドが軋んでビックリしたけど、ヘクターくんは何も言わないからそのまま居座ることにした。
「隣に来る?」
「ううん、ここで良い。」
一人用のベッドなのに隣に座っちゃうと狭いだろうから、足元で大人しくしておく。
ヘクターくんは他に何を言う訳じゃなく僕からお手紙を受け取ると、真剣な顔でその手紙を読み始めた。
可愛い垂れ耳が何かに反応してぴくぴくと動いて可愛いと思っちゃうのは、流石に失礼だろうか。
「ねぇ、君はこの手紙はカタルシス様やレオナルド王子ではないって言ってたね。」
「うん。」
「どうしてそう思うの?」
綺麗な琥珀色の瞳が、僕をジッと見つめる。
どうしてって、だって二人は僕のことが嫌いだから。
僕のことを、愛してくれなかったから―――
「二人が、そう言ってたの?」
ううん。
でも、分かるよ。
ちゃんと、理解してる。
ちゃんと、納得もしてるんだ。
だって僕は、役立たずだから。
「僕はそうは思わない。思ったことは、ないよ。」
沈みそうになる思考が、ヘクターくんの言葉でハッとクリアになる。
もう一度、今度は自分の意思でヘクターくんの瞳を見る。
何でだろう。
さっきはちょっと怖く見えたけど、今は全然平気だ。
「ありがとう。」
「ううん。意地悪してごめんね。ねぇ、お返事は書かないの?」
そう言われてハッとする。
そうだ。
お手紙貰ったんだから、お返事をしないといけない。
誰なのかが分からない以上気持ちにお応え出来ないけど、でもどんな人なのか気になるし………
「でも、どうやってお返事を送ったら良いのかな?」
「僕がなんとかしてあげる。でも、ナイショだよ?」
ヘクターくんはそう言って、僕にお手紙を返してくれた。
何で内緒なんだろうって思うけど、僕は素直に頷いて立ち上がる。
今は取り敢えず、ヘクターくんを信じよう!
「お返事書いてくる!」
「行ってらっしゃい。でも、夜更かしはダメだよ?」
「うん!ありがとう!」
ヘクターくんにお礼を言って、僕は自分のスペースに戻って机から便箋セットを取り出す。
クリーム色の、大量生産品。
それでも僕にとってはちょっとお高い買い物だったそれに、僕は僕の気持ちを綴っていく。
正直とっちらかって見難いだろうとは思う。
でも、是非とも読んで欲しいんだ。
もしかしたら、君を傷付けてしまうのかもしれないけど。
あの青色の手紙を見終わって、僕は顔が真っ赤になるのを感じた。
以前の僕も含めて、生まれて初めてこんな愛の溢れる手紙を貰った。
どうしよう。
誰かと間違えてるのかなと思ったけど、名前をハッキリと書かれてるから間違いないだろう。
でも話したことあるって、一体誰なのだろうか………。
ベッドの上に便箋を広げて、推理してみる。
あ、因みに便箋の色は封筒と同じく淡い青色だった。
まずは【遠くから】って表現と何度も出てくる【許されない】ってワード。
多分なんだけど、この人はご学友候補の子供じゃないのだろうか。
基本的にご学友候補の子はご学友候補の子とのみ交友関係を広げていく。
勿論、学園卒業後にそこから広げていくパターンもあるけど。
でも学園の中に居る時は、王族が優先だ。
一般学生に構ってる暇なんてない。
更に言うなら恋愛とか婚約とか、そういう将来に関わることは尚更ご学友候補の子達同士でやるものだ。
だって、王族に仕える才能が無いものを王族に引き入れる訳にはいかないから。
でもそれを前提にしてしまうと今度はこの手紙はイタズラか、若しくは誰かと勘違いしているかという線が浮上するのだ。
だって僕がこの学園で、或いはこの学園に入学する前に名乗って会話したことあるのは二人だけ。
ドミニク様と、レオナルド王子様だけだ。
でもこの二人は、僕のことをとても嫌っている。
関わってないから嫌われてはないだろうけど好かれる筈がないし、こんなラブレターなんて貰える筈がない。
でもヘクターくんは【危害を加えるものじゃない】と言っていた。
【良いことが書かれている】とも。
だとしたらこれは悪戯じゃない可能性もある訳で………じゃあ、誰なんだろうか?
僕が覚えていないだけで、誰かと話した?
でもご学友候補になる程の人とお話して、覚えてないなんてそんなことある?
じゃあやっぱりそもそもご学友候補じゃないとか?
でもそれなら普通に話し掛けられる筈だ。
同じクラスの子達とは皆話してるし、違うクラスだからって話しかけちゃダメなんて決まりはない。
「どうしたら良いと思う?」
「結局僕に聞いちゃうのか。」
「だってヘクターくんなら助けてくれそうだから。」
暫くうんうん唸ってた僕だけど、結局どうしようもなくなってヘクターくんのスペースに突撃することにした。
甘え過ぎかなとも思ったけど、ベッドに座って本を読んでいたヘクターくんがいつもの笑顔でおいでと呼んでくれたので遠慮なくベッドに腰掛ける。
二人分の体重にベッドが軋んでビックリしたけど、ヘクターくんは何も言わないからそのまま居座ることにした。
「隣に来る?」
「ううん、ここで良い。」
一人用のベッドなのに隣に座っちゃうと狭いだろうから、足元で大人しくしておく。
ヘクターくんは他に何を言う訳じゃなく僕からお手紙を受け取ると、真剣な顔でその手紙を読み始めた。
可愛い垂れ耳が何かに反応してぴくぴくと動いて可愛いと思っちゃうのは、流石に失礼だろうか。
「ねぇ、君はこの手紙はカタルシス様やレオナルド王子ではないって言ってたね。」
「うん。」
「どうしてそう思うの?」
綺麗な琥珀色の瞳が、僕をジッと見つめる。
どうしてって、だって二人は僕のことが嫌いだから。
僕のことを、愛してくれなかったから―――
「二人が、そう言ってたの?」
ううん。
でも、分かるよ。
ちゃんと、理解してる。
ちゃんと、納得もしてるんだ。
だって僕は、役立たずだから。
「僕はそうは思わない。思ったことは、ないよ。」
沈みそうになる思考が、ヘクターくんの言葉でハッとクリアになる。
もう一度、今度は自分の意思でヘクターくんの瞳を見る。
何でだろう。
さっきはちょっと怖く見えたけど、今は全然平気だ。
「ありがとう。」
「ううん。意地悪してごめんね。ねぇ、お返事は書かないの?」
そう言われてハッとする。
そうだ。
お手紙貰ったんだから、お返事をしないといけない。
誰なのかが分からない以上気持ちにお応え出来ないけど、でもどんな人なのか気になるし………
「でも、どうやってお返事を送ったら良いのかな?」
「僕がなんとかしてあげる。でも、ナイショだよ?」
ヘクターくんはそう言って、僕にお手紙を返してくれた。
何で内緒なんだろうって思うけど、僕は素直に頷いて立ち上がる。
今は取り敢えず、ヘクターくんを信じよう!
「お返事書いてくる!」
「行ってらっしゃい。でも、夜更かしはダメだよ?」
「うん!ありがとう!」
ヘクターくんにお礼を言って、僕は自分のスペースに戻って机から便箋セットを取り出す。
クリーム色の、大量生産品。
それでも僕にとってはちょっとお高い買い物だったそれに、僕は僕の気持ちを綴っていく。
正直とっちらかって見難いだろうとは思う。
でも、是非とも読んで欲しいんだ。
もしかしたら、君を傷付けてしまうのかもしれないけど。
35
お気に入りに追加
190
あなたにおすすめの小説
これを愛だと呼ばないで
田鹿結月
BL
とある町にある喫湯店で働く犬獣人、ドナ。
ドナはとある理由から運命の番いというものを強く欲しており、町に暮らす全てのオメガは彼と付き合ったことがあるという噂が出るほどに様々なオメガと付き合ってきた。
だが、皆匂いが合わない。これまで交際した全てのオメガのフェロモンが、ドナにとっては酷い悪臭にしか思えなかった。
運命の番いは、この町や地方にはいないのかもしれない。そんな思いを抱え始めていたドナが出会ったのは、大衆食堂で働く一人の青年だった。
ホワイトスイスシェパードα×人間β(だと思い込んでいるΩ)
※モブレ表現・その他注意描写あり
ハッピーエンドです。
※ふじょっしー様にて2019年頃に投稿したものです。
※続編ではR-18となりますが、今回投稿するものは全年齢です。
僕のために、忘れていて
ことわ子
BL
男子高校生のリュージは事故に遭い、最近の記憶を無くしてしまった。しかし、無くしたのは最近の記憶で家族や友人のことは覚えており、別段困ることは無いと思っていた。ある一点、全く記憶にない人物、黒咲アキが自分の恋人だと訪ねてくるまでは────
恭介&圭吾シリーズ
芹澤柚衣
BL
高校二年の土屋恭介は、お祓い屋を生業として生活をたてていた。相棒の物の怪犬神と、二歳年下で有能アルバイトの圭吾にフォローしてもらい、どうにか依頼をこなす毎日を送っている。こっそり圭吾に片想いしながら平穏な毎日を過ごしていた恭介だったが、彼には誰にも話せない秘密があった。
言ってはいけない言葉だったと理解するには遅すぎた。
海里
BL
クラスの人気者×平凡
クラスの人気者である大塚が疲れてルームメイトの落合の腰に抱き着いていた。
落合からある言葉を掛けられるのを期待して――……。
もしも高一まで時間が巻き戻せるのなら、絶対にあんな言葉を言わないのに。
※エロしかないような感じ。
現代高校生の書いてないなぁと思って、チャレンジしました。
途中で大塚視点になります。
※ムーンライトノベルズ様にも投稿しました。
甘い毒の寵愛
柚杏
BL
小さな田舎町の奴隷の少年、シアンは赤い髪をしていた。やたらと目立つためシアンには厄介な色だった。
ある日、シアンは見知らぬ男に説明もされずに馬車に乗せられ王族の住まう王宮へと連れてこられた。
身なりを綺麗にされ案内された部屋には金色の髪に紺碧色の瞳をした青年がいた。それはこの国の第三王子、ノアだった。
食事に毒を盛られて蝕まれている王子と、元奴隷で毒を中和する体液を持つ赤髪の少年の物語。
【完結】雨降らしは、腕の中。
N2O
BL
獣人の竜騎士 × 特殊な力を持つ青年
Special thanks
illustration by meadow(@into_ml79)
※素人作品、ご都合主義です。温かな目でご覧ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる