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第106話

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 それから数か月後。
 私は十八になった。今日はハドレー国でシャルの誕生日パーティー。そして王位継承式でもあある。

 問題なく式は行われ、皆が新しい王を祝福している。
 私も遠くからその様子を見届けてる。

 あれからシャルは積極的に政治関係にも意見を出すようになって、今の国の在り方を変えようと頑張っていた。
 おかげで父も娘を苦しめていたことに気付いて少し丸くなったみたい。たまにレベッカが報告してくれている。
 ロッシュやセンテッドは今でもシャルのことを狙っているらしいけど、見向きもされていないらしい。シャルは仕事に追われてて、まだそんな余裕もないんだろう。

「ベルお姉様!」
「…………なんで気付くのかしら」

 いつものように裏庭の木から部屋を見ていたら、シャルがバルコニーに出てきて私に話しかけてきた。
 魔法で気配を隠していたのに、正体がバレてから普通に気付かれるようになってしまったのよね。これじゃあ隠れてる私が何だか間抜けに見えない?

「ふふっ、お誕生日おめでとうございます」
「貴女もおめでとう、シャル」
「どうでしたか、式典。私、ちゃんとやれてました?」
「そうね。もう立派な女王様だわ」
「ありがとうございます!」

 シャルはバルコニーの手すりに手を置いて、満面の笑みを浮かべている。
 相変わらず可愛いこと。でも、今はすっかり大人な雰囲気を感じる。この子も成長しているってことね。

「お姉様、まだお城には戻ってきてくれませんの?」
「残念でした。私は罪人を攫った犯罪者よ? 戻ってこれると思う?」
「むう……」
「そんなことより、貴女も王になったんだからそろそろ結婚も視野に入れたらどうなの? 縁談の話も来てるんでしょ?」
「それはそうですけどー」

 口を尖らせ、シャルが不満そうな表情を浮かべた。そんな可愛い顔をしちゃって、しょうがない子ね。
 仕事中のシャルはいつもの雰囲気と違って、真面目でしっかりしているんだけどな。まぁ、たまにはこうして気を抜ける時間があっても良いか。
 でも私がずっと一緒にいられるわけじゃないから、早く良い人を見つけてほしいんだけどな。

「この数ヵ月でこの国も大分変わったわね。貴女を見世物にするような大人もいないし、シャルも外交とか頑張ってるみたいじゃない」
「はい。みんなが住みやすい国になるように、もっと頑張りますよ」
「あまり無理しすぎないようにね」
「お姉様もですよ。もしこれでお姉様がうっかり命を落とすようなことがあったらまた過去に戻ってしまうのでしょう?」
「そうね。十八の年に死ぬとルシエルの魔法が発動しちゃうからね」
「絶対絶対気を付けてくださいね!」
「大丈夫よ、私は強いんだから」

 私が自信満々な顔を浮かべると、シャルはふふっと噴き出すように笑った。
 そう。貴女はそうやって笑っててくればいいわ。そうすればみんなが喜ぶ。私も、貴女の笑顔が見れると嬉しいわ。

「私の心配より、自分のことを考えなさい。仕事もいいけど、貴女を大事にしてくれる相手を探さないと」
「またその話ですかー? でも、私……」
「なに?」

 シャルは手すりに肘をついて、両手の上に顎をそっと乗せて上目遣いで私を見た。

「お姉様よりもカッコいい人なんて知らないもの」

 どうやら私は妹の攻略対象になったままのようです。
 まだまだ前途多難。だけど、不思議と私は笑みを浮かべていた。


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