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第77話
しおりを挟む改めて気合いを入れ直し、翌日も私はハドレー国に侵入しています。
結界が張られているから忍び込むのも難しいと思ったけど、今まで通り普通に入ることが出来た。もしかしたらナイトが何かしてくれたのかもしれない。本人に直接聞きに行くことは出来ないから、そういう事にしておきましょう。
というか、後でツヴェルに確認取ればいいだけよね。
今日も話し相手としてレベッカが来ている。昨日一日で二人はすっかり仲良くなって、お茶をしながら会話に花を咲かせている。
こんな日がずっと続いてくれればいいんだけどね。魔術師が諦めてくれたら私も安心して山暮らしを満喫するのに。
「がう」
「ん?」
ノヴァが何かに気付き、小さな声で呼んだ。
誰か来たみたいね。私はノヴァの背中に乗って、城の入口の方へと移動した。
何やら街の人が集まっているわね。その中心には遠くからでも目立つ金色の髪が見える。
あ。あの人、人気投票第一位のキャラじゃない。まさかこんな急に他の王子様が出てくるとは思わなかったわ。
「ようこそいらっしゃいました、センテッド様」
「いえ。我が国も何か力になればと思いまして」
執事長が出迎えた相手。
センテッド・フロリック。この世界で最も大きな国であるフロリック国の第一王子で、金髪碧眼のドストレートな王子様キャラ。
攻略キャラの王子様全員と出会うことになるとは思ってたけど、彼は最後だと勝手に思っていたわ。
シャルが何者かに命を狙われているという噂を聞いてやってきたみたい。優しくて正義感に溢れる王子様は黙っていられなかったのね。
どうしましょう。どうにかしてシャルとセンが話をしてるところを見たいけど、下手に城内に侵入して捕まっても嫌だ。
私だとバレないように自然な形で内部に入れないかしら。
「……あ、そうだ」
そういえば、さっきツヴェルが城の外を見回りしていたはず。彼に手伝ってもらいましょう。
善は急げよ。ノヴァに乗って、ツヴェルがいる場所へとこっそり移動した。
ツヴェルは人気のない裏の森付近で警備をしていた。
彼の魔法特性的にこういう人が少ない場所の方が余計な音に邪魔されずに済むからいいのかもしれないわね。
「ツヴェル」
私は木の上から小声で彼に話しかけた。誰かに見つかっても面倒だし、一応警戒はしておかないと。
「ベル!? ど、どうしてそんなところに……」
「細かいことはいいから。それより、ちょっと頼みがあるのよ」
木の上にいるとは思わなかったのか、ツヴェルは少し驚いていたけど今はもっと大事なことがあるのよ。
センテッド王子がシャルと接触するからその様子を覗きたいとお願いすると、ツヴェルは目をパチパチと瞬きをして首を傾げた。
「何故、覗くのです? センテッド王子は怪しい人ではないですよ」
「知ってるわよ。でも姉として妹のことが気になるだけよ」
「は、はぁ……でも、うーん……ベルの変装ならバレないだろうけど、怪しまれずにとなると難しいかなぁ……」
「そこを何とか!」
ツヴェルは腕を組んで考えてくれている。
中に侵入して目立たないように出来れば、あとは私の魔法特性でどうとでもなる。
問題は目立たない格好。城内をうろついても平気な服装が手に入ればそれでいい。
「となると、メイドですかね。城内を歩いていても不思議ではないですし……」
「メイド! いいわね、それ!」
「……仕方ないですね。僕がどうにかしてメイド服を用意しますから、貴女は見つからないところで隠れていてください」
「了解! さすがツヴェル王子。頼りになるわね!」
「貴女の為ですからね」
それを言われると、何だかツヴェルの好意を利用しているみたいで罪悪感があるけど仕方ないわね。
それにメイド服は一度着てみたかったのよね。何だかワクワクしてきちゃった。
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