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第54話
しおりを挟む「先読みをする?」
「ええ。前に話したでしょう? 私は未来を予知して、それを回避するために家を出たと」
「あ、ああ。君がシャルロット姫を殺すという未来だね」
「そう。その未来はシャルが誰と恋仲になるかで分岐するの」
「ぶ、分岐!? 未来が複数存在するというこのですの?」
「そうよ。あまり本人を前に言いたくはないんだけど……キアノ王子と結婚する未来もあったわ。私はレベッカの気持ちを優先して、それを回避させた」
レベッカは当然だけど驚いた顔をしていた。
そりゃそうよね。未来が違っていたらキアノが別の国のお姫様と結婚しちゃうんだから。
「お姉様は、その未来を知って、私に協力をしてくださった、ということですか?」
「ま、まぁ……私はレベッカのことを気に入ってるし、一国の姫に手を出したものの末路は……あまり想像したくはないし」
「お姉様……ありがとうございます。お姉様にはどれほど感謝しても足りません」
「ああ、やめてやめて。別に感謝が欲しくてやったんじゃないの。正直、裏がなかったわけでもないし……」
「それでも、今の私があるのはお姉様がいてくれたからです。あのまま魔術師の思い通りに動いていたら、私は……」
確かに、それはそうなんだけど。私自身も魔術師のことが知りたくてレベッカを助けたようなものだし、素直にお礼をされるとなんだか複雑だわ。
「もしかして、僕の元に来たのも何か理由が?」
「お察しの通りよ。もしロッシュ王子とシャルが結婚する未来になれば、貴方が狙われるの。ロッシュと戦うように洗脳されてね……」
「……なるほど。僕がシャルロット姫と出逢っても恋慕を抱かないように、貴方が前に出てきたんですね?」
「まぁ、そのつもりだったんだけど……私、どうにもそういうハニートラップ的なのは苦手でね。だから素直に話して協力関係を築こうと思ったって訳よ」
「そうでしたか。でも、計画通りになったと思いますよ?」
「え?」
ツヴェルがソファから立ち上がり、私の前に跪いた。
あまりにも自然な流れで、彼の動きをただただ見ていることしか出来なかった。
スマートに私の手を取って、甲に口付けるその瞬間まで、私は映画を見てるような気分だったもの。
「僕は十分、貴女の魅力に心を奪われているのですよ?」
「へ!?」
「あらまぁ! お姉様はそう簡単に渡せませんよ!」
「おや。ベルを口説くのにレベッカ嬢の許可が必要なのですか?」
「当り前じゃないですか! 私のお姉様ですもの!」
貴女のモノになったつもりもないんだけど。
いやぁ、私もやるときはやるのね。ちゃっかりハニトラ大成功してるじゃない。そう思いながらノヴァの方を見ると、呆れたように顔を背けた。
何よ、その顔は。貴方の言ったとおりに誘惑出来ちゃったのよ。もう少し褒めて頂戴。
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