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45.アーネスト王太子の異世界チート講座【Side:アーネスト】

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 みんなエンジョイしてる!?
 俺は人生一番の最高にハッピー!!!レニたんと遂に結ばれたアーネストだよ!



 いや……ほんと、すごかったです。レニたん、公式で淫蕩な体って書かれるだけはある。悪とエロって相性いいから、だいぶやられたね、レニたん。
 もうね、やばいの。地球時代もこっちの世界でも回数は結構こなしてたけど、マジあんなの初めて。名器って言葉なんかじゃ全然足りないんじゃないってぐらい。そりゃあ経験値稼ぎまくったはずのオヤジも虜、抑圧された閉鎖空間の飢えた野獣なんかひとたまりもないよね。
 
 それでも、レニたん初めてだから、負担がないようにマリクから買ったエッチアイテムの香油も使った。システム的には、セックスした時の好感度アップが上昇するっていうやつなんだけど、リアルで使うと痛みとかちょっとした不快感とかが全くなくなって、気持ちよくなれるんだってさ。
 ていうか、それがわかったということは、使ったんだよね……マリク、お前ってやつは。

 おかげさまで、レニたんとの初エッチは大成功。
 ちょっとやりすぎちゃったけど、レニたんもエッチは割と嫌いじゃないっぽいから、これからにも期待できるんじゃないかなぁ。むふふふ。




 レニたんには色々アウト過ぎて話せなかったけど、俺は最初からルーリクが超要注意人物だとわかってた。というか、知ってた。
 あいつ、ゲーム中でレニたん断罪後に復讐に燃えてやって来て、アーネストのどてっ腹に穴開けようとするやつだから。バッドだと俺、普通に死ぬからね。
 今世でも俺とレニたんの周囲を探りに密偵送って来てたのわかったし、間違いなくレニたんに惚れてて俺は恨みを買ってると気付いてた。
 だから、最初に公爵家で顔を合わせた時も、ルーリクに接近して様子を探りたかったんだよね。あと、レニたんに近付けさせたくなかった。あの猛獣姫のがまだマシ。
 
 そんな奴が、俺と婚約維持して帰りますっていうレニたんを祝福してパーティー開いてくれるなんて、もう胡散臭さしかないでしょ?
 もうこれ、絶対なんかされるやつだって誰だってわかる。
 でも、まさかアウェイの俺が完全武装でパーティーに参加するなんてできるわけないし、俺はめちゃくちゃ悩んだ。

 そんなとき、超絶ジャストなタイミングであの露店商に出会った。
 ほんと、すごいよ。流石は流通の国ファンネってだけある。まさに、世界中の異国の珍品が並ぶ、最高のバザールだ。
 あの露店商は、こことは違う大陸から海を越えて、現地で取れた鉱石や樹脂なんかを運んできて売っていた。テレビン油は、油絵や香水の製造が盛んなイーズという国で仕入れて持ってきたらしい。
 
 『君アル』の世界観は基本的にライトな中世(ゲームだけあって一部テキトー)だ。
 基本的に魔法なし、メカなし、銃火器なし。
 それなのに何故かチョコレートとかあるけど(チョコレートは人力でカカオから作るのはめちゃくちゃ厳しい!)、それはもうゲームだからとしか言えない。恋愛ゲームとして、バレンタインは外せないもんね、しょうがないね。

 とにかく、この世界はまだ科学が全然発達してない。科学技術で空も飛べちゃう世界で生きてた俺から見れば、まるで赤ちゃんみたいにピュアだ。
 科学は爆発的に生活を豊かにするけど、かわりに爆発的に世界を壊す。だから俺は、表立って派手な異世界チートをするつもりはなかった。
 だけど、あくまで自分が使う範囲でのことなら、問題ない。

 俺は露店商から購入した材料を持って、鍛冶屋の工房を訪ねた。
 金を払って場所と製作補助を依頼し、そこでラバー製作に取り掛かる。

 ちょっと専門的な話になるから、しゃらくせーって人は、俺が買った材料でゴム作れるよってだけで大丈夫。
 興味あるって人だけ、ちょっと俺のオタトークにつきあってね。

 ゴムは、生ゴムに加硫剤を加え、成形、加熱、加圧を行うことで製造可能だ。
 加硫剤には種類もあるけど、基本的には硫黄でオッケー。硫黄加硫のゴムは伸びや柔軟性に優れているし、今回の用途とは相性がいい。
 今回はベースに露店で買った天然ゴムに、粉末状になるまで粉砕した硫黄を加えて捏ね、均一に混ざるまで伸ばし、丸め、練りの作業を繰り返した。ちょっと大変だけど、量が少ないからね。
 形状も、少々厚みを残して後は適当な太さで作れば大丈夫。長さは後でカットして調整可能なのがゴムの使い勝手のいいところだ。
 何度か炉の温度と加熱時間を変えて試して、まあまあ使い物にはなるレベルのラバーが出来上がった。
 あとは、金属のおはじきを溶接したり、武器屋に鉄球とスリングのボディ部分を作ってもらったりして、即席武器の完成。
 これ自体は見られても用途が何だかわからないから隠し持つこともできるし、何かと都合がいい。

 あとは、もしものときのための火炎瓶。これはほんとについで。超簡単にできるし。
 携帯できるほどサイズ小さくできないし、しかもちょっと危険だから、これは馬車に置いとくしかなかった。
 どっちみち、レニたんの身内が大勢集まってる店に火を付けたりできないしね。

 それで俺は、ある程度の準備をしてパーティーに臨んだ。
 レニたんがすごく楽しそうにウキウキしてるのとか見ると、ほんと心が痛む。これから多分めちゃくちゃになるよなんて、言えるわけない。
 それでも、できるだけ穏便に済ませたくって、俺はレニたんに張り付いていようと思ってた。
 最悪、ルーリクからは目を離したくない。アイツから目を離さなければ大丈夫のはずだったからね。

 でも、結果はご存知の通り。アイツのなりふり構ってない作戦に、俺は後れをとらされ、攫われたレニたんを助けに走ったってわけ。



 そんな感じだから、俺はわかっていながらむざむざとレニたんを攫われてしまった自分の無能さを責めていた。
 いくらレニたんの居場所は件の主人公御用達アイテム『月妖精の鏡』でわかるとはいえ、レニたんを怖い目に遭わせてしまったことは悔やんでも悔やみきれない。
 だから、レニたんが褒めてくれた時も、嬉しかったけど調子に乗る気にはならなかった。
 その結果、危うくレニたんのオッケーサインを見逃すところだったなんて、恐ろしい話だ。


 あんまりにもレニたんに夢中になりすぎて、完全にレニたんを抱き潰してしまった俺は、翌日マーガレット様とファンネ城を訪れることになった。
 ほんとは1人で行く予定だったけど、レニたんのいない俺が何を言い出すか不安もあったんだろう。
 馬車の中では、昨夜の閨事でレニたんをダウンさせたことに苦言を呈され、今後はレニたんの体を考慮して節度を持つよう厳命された。これは、仕方ないね。俺はマーガレット様のお言葉にひたすらハイとYESで答え続けた。

 王城に着くと、俺たちはさほど時間を取られず、すぐに王の間に通された。
 俺が責任を追及する立場というのもあるけど、多分マーガレット様のお力もあるんだろうね。なんたって、陛下の伯母様だから。
 ファンネの王様には今回のことを重く受け止めて、然るべき処罰を下すと謝罪された。
 俺は被害者であるレニたん自身が処罰を望んでいないことや、俺自身も婚約者の精神状況が不安定になる可能性を懸念していることを話して、確実に再発防止ができるなら、今回は国として問題にするつもりがない意志を明らかにした。
 マーガレット様は俺の意外な判断に驚いたようで、帰りの馬車では感謝されたけど、『これからはレニたんの幸せを最優先として一生尽くしていくと誓ったからなので、お礼を言われることではないです』って言ったら、目を細めて頷いてた。 やっぱり、レニたんのためにも、お身内には認めてもらいたいもんね。



 そんなこんなで翌日ファンネを後にし、俺達はハイランドへの帰路を辿った。
 レニたんと馬車で二人きり。イチャイチャし放題のお帰り旅、ほんと最高でした。ずーっとじゃれついてても怒られないし、ワンワンライフも悪くないですよ、ほんと。
 え?道中のお泊りはどうしてたかって?
 それだけは、秘密にしておこうと思うよ。レニたんのためにね!

 


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