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妖魔世界編

第21話 出発準備

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様々な野菜を買ってアースノアに戻ってくると、マリナ姐さん達が買って来た物を詰め込んでいた。

「あっ!おかえり~!」

俺らのことに気が付いたノアが声をかけてくれる。

「ただ、い…ま……」

返事を返しながら、ふとマリナ姐さん達の荷台を見てみると、2mはあるだろうマグロが横たわっていた。

「えっ、これ買ったんですか?」
「……ついね…」

マグロのことを聞くと、マリナ姐さんは小さな声で呟くように返事をした。

「そ、そう言えば遅かったわね。何かあったのかしら?」

胡麻化そうとマリナ姐さんは話の話題を変えた。

「まぁ色々とね」

サターン達と共に、荷物を乗せながら酒吞童子に会ってきたことと、ノアに神について話した。

「ねぇ、それならさ。私達怒られないの?」

神が世界を管理していると聞いたノアは、唐突にそういったことを聞いて来る。

「だってさ、言うならば人が作った家に勝手に入ってきているような物じゃん?」
「それもそうだな…よし、ここはサターン達に任せて、一回食堂車でお茶をしながら話すか」
「わーい!」

色々なことを教えるため、食堂車に全員で戻った。





「さてと、何処から話せばいいか…」

食堂車の席に着き、紅茶が入ったカップを手に取りながら最初に説明すべきこと考える。

「さっき言った通り、殆どの世界が神によって管理され、互いの世界が干渉しないように壁が作られている。そのため、何の力もない人間が異世界に行くには、極稀に発生する世界の歪みを見つけて飛び込むか、神の手によって異世界に行くかのどっちかだ。だが、それ以外の方法が二つある。なんだと思う…?」
「う~ん…」

俺からの質問に答えようと、ノアは両腕を組みながら考える。

「……その壁に穴を開ける…とか?」

考えに考えた末、ノアは自分の考えを言ってくれた。

「正解。大きな力を世界の壁に放ち、それで空間に世界を繋げる穴を開けるんだ」

正解したノアを称えながら、俺は説明を続ける。

「だがな、この方法は危険すぎる。まだ、上手い具合に調和が取れればいいが、取れなかった場合、繋がった二つの世界は混ざり合い消滅する。最悪な場合、他の世界も巻き込まれることになる」
「…」

ノアは俺の話に生唾を飲みながら、大人しく聞く。

「そしてもう一つの方法が、光を越えるタキオン粒子並みの速さで壁をすり抜ける方法だ。アースノアの次元跳躍がこれに当たる。違いとしては……ちょっと待っててくれ」

穴を開けるのと、次元跳躍の違いを分かりやすく説明するため、俺は針と布を探しに行った。
時間はかかったが、針と布を見つけることができたので、説明に戻ることにした。

「まず、世界の壁に無理矢理穴を開ける手段は…こういうことだ」

俺は布を刀で刺して、無理矢理穴を開けた。

「この布と同じように、大きな穴があれば、直すことはできなくなる。そして、この穴を中心に、崩壊が始まる可能性もあるんだ」
「神様の力で直せないの…?」

穴が開いている布を見せて説明しているとノアから質問が来る。

「神でも直すには相当な力が必要だし、最悪弱体化してしまう可能性が出てて来る」

俺は首を横に振った後、質問の答えを返す。

「それに比べて、次元跳躍は…こう」

俺は一本の針を布に刺し、そのまま貫通させた。

「ほんの僅かな小さな穴を開けて通るということだ。これなら世界の崩壊を導くこともないし、穴は時間が経てば完全に塞がるんだ」
「なるほど」

例で物を使ったのが良かったのか、ノアはしっかりと理解してくれたようだ。

「で、アースノアを出発させる際に、その世界の神に取り繕って貰って、特別に世界を移動できるようにしてくれたんだ」
「へ~…うん?」

余談を聞いていたノアは、何かに気が付いたようだ。

「出発させる際ってことは、何か目標があったの?」
「…」

ノアからの質問に俺は頭を抱える。
ノアって意外と頭がいいのか…?
そんなことを思いながら、質問に答えることにした。

「うーん…まぁ、とある世界を目指していると思ってくれ」

話すのがダルくなってきたため、俺は胡麻化そうと試みた。

「え~!気になるんだけど~!」

無論、ノアはそれで満足しようとしなかった。
よし逃げよう。

「じゃあ俺は機関の調子を見てくるから!」
「あっ!」

逃げることにした俺は、機関を見てくるという定で食堂車から逃げるように出て行った。





「機関の調子はどうだ?」
「オールグリーンです。いつでも行けます」

機関室を尋ねた俺は、サンに機関の様子を聞いた。
いつでも行けるなら…
サンの報告を受け、俺は無線機を手に取って、調理車に居るだろうヴィーナスとの回線を繋げた。

『こちらヴィーナス!』
「ヴィーナス?今日の晩は豪華に頼めるか?今日は宴と行きたいからな」
『お任せください!』
「ああ頼む」

美味い料理を作るように伝え、俺はアースノアから発車合図のチャイムを鳴らした。

「サン、機関始動」
「了解」

サンに機関の始動を頼み、俺は誰か取り残されていないか後方を確認する。
後方にはギアノイドや人影、更に荷台がないので、全部入れてくれたのだろう。

「後方よし、前方よし!」

前後の確認が終わるのと同時に、アースノアの機関が動き始める。

「アースノア、出発進行!」

アースノアは汽笛を鳴らし、ゆっくりと進み始め、宇宙に向けて走り始める。





「月に浮かぶ列車の影…いいねぇ~」

酒吞童子は自身の領域内に浮かぶ月を背に、宇宙へと向かって行くアースノアを見送っていた。

「んで、テメェは何の用だ?影の使者…」

酒を飲んでいた酒吞童子は、後ろに居る黒いローブで身を完全に覆っている者の方を振り向く。

「何故あの列車を潰さない」

男とも女とも取れるような声で影の使者は話す。

「俺はお前らのようなセコイことはしたくねぇし、それに俺は中立派だ。テメェーらのような過激派じゃねぇんだよ。さっさと帰れ、月見の邪魔だ」

軽く睨め付けながら、酒吞童子は影の使者に帰るよう促すが、

「何故。あの列車は全ての平行世界を滅ぼす存在・・・・・、何故放置すr「俺は中立派だ、テメェらのやることに文句を言うつもりはねぇ…だがな、テメェらの価値観を押し付けてくるんじゃねぇよ…殺すぞ」

影の使者が鬱陶しく思って来た酒吞童子は、刀を影の使者の首元に押し付ける。

「…酒吞童子の意見は良く分かった。では私はこれで失礼する」

そう言って影の使者は、闇の中へと消えて行った。

「…チッ、飲み直しだ」

茶々が入ったことに舌打ちをしながら、酒吞童子は再び酒を飲み始めた。
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