戦車で行く、異世界奇譚

焼飯学生

文字の大きさ
上 下
16 / 26
第二章 東方戦争篇

第16発目 名将の英断

しおりを挟む
『何? レオンが陽月国の使者と話し合いをしているだと?』

 第四騎士団が使用している炎陽村の食料庫にて、炊事兵の1人が水晶玉を通して、メフィストと報告を行っていた。
 炊事兵はメフィストの手の者で、この戦争中にレオンの監視、並びに暗殺を行うため、第四騎士団への潜入を命じられていたのだ。

「はい。使者の一名は、神使を名乗っているようですが、顔つきが明らか東洋人でした…」

『はっん! 奴め、これしきの嘘も見抜けぬようになったか……待て……』

 大翔の顔つきが陽月国の者と似ていたというだけで、嘘だと決めつけ鼻で笑ったメフィストは、あることを思いついた。

『そうだ、丁度良い! 事前に用意してあった毒を飲み物に仕込み、それを出せ! そして、上手い具合に陽月国の者に罪を擦り付けろ!』

「はっ!」

 今が暗殺する機会だと思ったメフィストは、炊事兵にレオンを毒殺するように命じた。

『では、頼むぞ?』

「お任せください!」

 2人はそのまま通信を切った。
 その会話を盗み聞きしている者が居るとは知らずに…


 〇


 大翔達を残し、別のテントに移動したレオンは、同伴していた部下達と集まっていた。

「…さて、神使様からの申し出…皆はどう思った?」

 テント内の椅子に座ったレオンは、部下達に意見を求めた。

「…怪しい、それが率直な意見です」

「そうです! そうやって騙し討ちをするつもりかもしれません!」

 多くの部下から、否定的な意見が出る。
 だが、

「……ですが、彼らが言っているのは、あくまでも現体制…王達の打倒であり、国そのものを滅ぼす訳ではありませんし、彼らの策に乗ってみるのもいいかもしれません…実際、我々は奴らから酷い仕打ちを受けてますし…」

 ミシェルは周りとは逆に、大翔達の手を取ってみることを提案する。

「ですが副団長! 彼らの策に乗って使い潰される可能性もありうるのですよ!」

「だが副団長の意見も正しい……国民と共に立ち上がるのも悪くないのでは…?」

 ミシェルの言葉により、賛成派の声も増えてくる。
 様々な意見が飛び交う中、レオンはその意見を全て聞き続けた。

「………己の信念を貫け…か……」

 昔、憧れの父から言われた言葉を思い出したレオンは、大翔の提案に乗るかどうか決断することにした。

「……今回の戦争…私は国民を守るために、この戦争に参加を決心した…だが、王族や貴族は戦争をダシに、国民を苦しめている…我々が戦えば戦うほど、国民は貧困に喘ぎ、王族や貴族は私腹を肥やす……なら、国民を守るためにはどうする? 政治体制を変えるしかない…敵国である陽月国が、その手助けをしてくれるというのであれば、共に戦うべきだろう……真の敵はコルッツ王族! 今こそ連中を打倒し、国民を守ろうではないか! 従えないという者は、国に戻ってよい! だが、共に戦ってくれる者は、私について来て欲しい…!!」

 レオンは大翔の提案に乗ることを伝え、共に戦って欲しいと部下達に話した。
 部下達は全員で顔を合わせたのち、

 ハイッ!!!!

 声を合わせてレオンと共に戦うことを決意した。


 〇


「お待たせ致しました……」

 話が纏まったのか、レオンがテントに入って来た。

「…永山様、我々も是非、コルッツ王国の現体制を倒すために、協力させてください…!」

 椅子に座ったレオンから良い返事が聞けて、俺は笑みを浮かべた。

「こちらこそ、よろしく頼むよ。ナパルト騎士団長」

「…はい!」

 俺が手の差し出すと、レオンはその手を取り、硬い握手を交わした。

「それじゃあ、陽月国に集まって、計画を練ろ「失礼します。お茶をお持ちいたしました」

 移動を提案しようとしたその時、テントの中に、ポットやカップが乗ったお盆を持った兵が入って来た。

「態々すまんな……」

「いえ、給仕として行っているだけです…」

 兵は二つのカップを並べ、俺から順にお茶を注ぎ始めたのだが、レオンの分を入れる時、気になる点があった。
 ……なんで、レオンの時持ち手の下部分を指で押さえてるんだ…?
 そう思った時、俺はネットで見たとある物を思い出した。

「失礼っ!!」

 あることに気が付いた俺は、レオンが呑もうとしていたカップを奪い取り、中身を兵士にぶっかけた。

「ぎぃやぁーーーーーー!!!!!!」

 中身が顔にかかった兵士は、悲鳴を上げる。

「永山様何を!?」

 全員が驚き俺に目線を向ける中、俺はお茶を出した兵士の方を見つめる。

「ぐがぁっ……!!」

 お茶の熱さではなく、別の何かで苦しんでいる兵士は、小瓶を取り出し、その中にある液体を顔に被った。

「…で、お前…ナパルト騎士団長に何を呑ませようとした?」

「あっ…! いや…っ!」

 俺は席から降りて、兵士に問い詰めた。

「あの、大翔くん…そろそろ説明してくれないと…皆訳が分からないんだけど…」

「あっ…ごめん…」

 ミハエルに説明を求められ、俺は兵士を押さえつけながら、説明することにした。

「まずは…ナパルト騎士団長、ポット切断してもよろしいですか?」

「…何かあると言うのであれば、どうぞやってください」

「ミハエル、お願いできる?」

「分かった」

 レオンから許可を取り、ミハエルに頼んでポットを切断することにした。

「大地の息吹よ、今こそ我が敵を斬れ倒せ…風魔法、疾風切断ウィンドスラッシュ!」

 地面に置いたポットに対し、ミハエルは魔方陣から斬撃を飛ばし、ポットを綺麗に真っ二つにした。
 二つに切れたポットからお茶が漏れ、地面に染み込む。

「そのポットを見てくれ、二重構造になっているはずだから…」

「副長」

「はっ…!」

 レオンに命じられ、一人の男が切れたポットを持ち上げ、内部が分かるように机の上に置いた。

「そのポットは、上と持ち手の下に穴がある特殊な奴で、上を塞げば仕切りの下の液体が出て、下を塞げば上の液体が出るという仕組みになっている…その男は、毒入りのお茶をナパルト騎士団長に飲ませようとしたんだと思う。実際、お茶を被った後、解毒薬みたいな物を顔に塗っていたしな…探せば出てくるんじゃないか? 毒が入っていた瓶が……」

「……」

 俺からの説明を受け、全員の目線が兵士へと注目され、兵士は冷や汗を流し始める。

「で、出まかせです! こんな嘘っぱちな東洋人を信じるのですか!?」

「それなら……これも出まかせですかなぁ…?」

 兵士が疑いを解こうと必死になっていると、テントに外で待っているはずの雪婆が入って来た。

「雪婆!? なんでここに!?」

「私の部下が気になる情報を手に入れたようでねぇ…それを届けに来たのさ…」

 雪婆に俺は驚きつつ、ここに来た理由を尋ねると、雪婆は懐からビー玉を1つ取り出し机の上に置いた。

「これがその情報です……」

 雪婆がそう言うと、ビー玉に映像映し出される。

『そうだ、丁度良い! 事前に用意してあった毒を飲み物に仕込み、それを出せ! そして、上手い具合に陽月国の者に罪を擦り付けろ!』

『はっ!』

 映像と共に音声が聞こえてくる。
 聞く限り、片方はこの兵士の声だと間違いないだろう…

「……やはり、メフィストの奴か…」

 映像を見たレオンは、兵士に命令している者が誰か分かっているようだった。

「さてと……決定的な証拠もあるようだが、どうする? まだ自分が無罪だと叫ぶか…?」

 取り押さえている兵士に、俺は抵抗するかどうか聞いた。

「……」

 俺の質問に対して、兵士は無言を貫いていたが、

「永山様、その者の身柄はこちらで預かろう……おい連れて行け!」

「「はっ!」」

 2名の部下が、俺が取り押さえていた兵士を抱えあげ、そのままテントの外へと連れて行った。

「永山様…助けてくださりありがとうございます。お陰で命が助かりました……」

「いえいえ、ああそれと、様付けだけやめてくれたら助かるんですが……」

「分かりました。では改めまして、永山殿…我々第四軍団は、陽月国に全面的に協力することをお約束致しましょう…!」

「ありがとうございます。それでは、コルッツ王国の国民達を助けるため、最善の手を尽くしましょう!」

「よろしく頼みます」

 暗殺未遂という予定外のことが起きた結果、レオン達からの信頼度は高まったようだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

不死の大日本帝國軍人よ、異世界にて一層奮励努力せよ

焼飯学生
ファンタジー
1945年。フィリピンにて、大日本帝国軍人八雲 勇一は、連合軍との絶望的な戦いに挑み、力尽きた。 そんな勇一を気に入った異世界の創造神ライラーは、勇一助け自身の世界に転移させることに。 だが、軍人として華々しく命を散らし、先に行ってしまった戦友達と会いたかった勇一は、その提案をきっぱりと断った。 勇一に自身の提案を断られたことに腹が立ったライラーは、勇一に不死の呪いをかけた後、そのまま強制的に異世界へ飛ばしてしまった。 異世界に強制転移させられてしまった勇一は、元の世界に戻るべく、異世界にて一層奮励努力する。

異世界で生きていく。

モネ
ファンタジー
目が覚めたら異世界。 素敵な女神様と出会い、魔力があったから選ばれた主人公。 魔法と調合スキルを使って成長していく。 小さな可愛い生き物と旅をしながら新しい世界で生きていく。 旅の中で出会う人々、訪れる土地で色々な経験をしていく。 3/8申し訳ありません。 章の編集をしました。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

異世界災派 ~1514億4000万円を失った自衛隊、海外に災害派遣す~

ス々月帶爲
ファンタジー
元号が令和となり一年。自衛隊に数々の災難が、襲い掛かっていた。 対戦闘機訓練の為、東北沖を飛行していた航空自衛隊のF-35A戦闘機が何の前触れもなく消失。そのF-35Aを捜索していた海上自衛隊護衛艦のありあけも、同じく捜索活動を行っていた、いずも型護衛艦2番艦かがの目の前で消えた。約一週間後、厄災は東北沖だけにとどまらなかった事を知らされた。陸上自衛隊の車両を積載しアメリカ合衆国に向かっていたC-2が津軽海峡上空で消失したのだ。 これまでの損失を計ると、1514億4000万円。過去に類をみない、恐ろしい損害を負った防衛省・自衛隊。 防衛省は、対策本部を設置し陸上自衛隊の東部方面隊、陸上総隊より選抜された部隊で混成団を編成。 損失を取り返すため、何より一緒に消えてしまった自衛官を見つけ出す為、混成団を災害派遣する決定を下したのだった。 派遣を任されたのは、陸上自衛隊のプロフェッショナル集団、陸上総隊の隷下に入る中央即応連隊。彼等は、国際平和協力活動等に尽力する為、先遣部隊等として主力部隊到着迄活動基盤を準備する事等を主任務とし、日々訓練に励んでいる。 其の第一中隊長を任されているのは、暗い過去を持つ新渡戸愛桜。彼女は、この派遣に於て、指揮官としての特殊な苦悩を味い、高みを目指す。 海上自衛隊版、出しました →https://ncode.syosetu.com/n3744fn/ ※作中で、F-35A ライトニングⅡが墜落したことを示唆する表現がございます。ですが、実際に墜落した時より前に書かれた表現ということをご理解いただければ幸いです。捜索が打ち切りとなったことにつきまして、本心から残念に思います。搭乗員の方、戦闘機にご冥福をお祈り申し上げます。 「小説家になろう」に於ても投稿させて頂いております。 →https://ncode.syosetu.com/n3570fj/ 「カクヨム」に於ても投稿させて頂いております。 →https://kakuyomu.jp/works/1177354054889229369

伯爵家の三男は冒険者を目指す!

おとうふ
ファンタジー
2024年8月、更新再開しました! 佐藤良太はとある高校に通う極普通の高校生である。いつものように彼女の伶奈と一緒に歩いて下校していたところ、信号無視のトラックが猛スピードで突っ込んで来るのが見えた。良太は咄嗟に彼女を突き飛ばしたが、彼は迫り来るトラックを前に為すすべも無く、あっけなくこの世を去った。 彼が最後に見たものは、驚愕した表情で自分を見る彼女と、完全にキメているとしか思えない、トラックの運転手の異常な目だった... (...伶奈、ごめん...) 異世界に転生した良太は、とりあえず父の勧める通りに冒険者を目指すこととなる。学校での出会いや、地球では体験したことのない様々な出来事が彼を待っている。 初めて投稿する作品ですので、温かい目で見ていただければ幸いです。 誤字・脱字やおかしな表現や展開など、指摘があれば遠慮なくお願い致します。 1話1話はとても短くなっていますので、サクサク読めるかなと思います。

「残念でした~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~ん笑」と女神に言われ異世界転生させられましたが、転移先がレベルアップの実の宝庫でした

御浦祥太
ファンタジー
どこにでもいる高校生、朝比奈結人《あさひなゆいと》は修学旅行で京都を訪れた際に、突然清水寺から落下してしまう。不思議な空間にワープした結人は女神を名乗る女性に会い、自分がこれから異世界転生することを告げられる。 異世界と聞いて結人は、何かチートのような特別なスキルがもらえるのか女神に尋ねるが、返ってきたのは「残念でした~~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~~ん(笑)」という強烈な言葉だった。 女神の言葉に落胆しつつも異世界に転生させられる結人。 ――しかし、彼は知らなかった。 転移先がまさかの禁断のレベルアップの実の群生地であり、その実を食べることで自身のレベルが世界最高となることを――

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!

やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり 目覚めると20歳無職だった主人公。 転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。 ”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。 これではまともな生活ができない。 ――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう! こうして彼の転生生活が幕を開けた。

処理中です...