33 / 57
33.傍にいたい
しおりを挟む
「カルナ、愛してる。一緒に幸せになろう」
酸欠気味のカルナが呼吸を整えていると、甘い声でシュラトがそう囁いた。
カルナは戸惑いながら、シュラトの顔を見つめ返す。
「おれは……」
「はい以外の返事は聞きたくない」
「……シュラト様は少し強引すぎますよ」
──それに、わざとじゃないとは思うけど、獣耳を出してるのも少しあざとい……
そんなことを考えながらカルナがむくれていると、何がおかしいのかシュラトはクスクスと小さな笑い声を立てた。
「カルナが素直じゃないからだ」
「俺はシュラト様のことを考えて……」
「ああ、わかってる。カルナは俺よりもずっと色々なことを考えていたんだな。正直、少し意外だった」
「……面倒くさいやつだって思いましたか?」
「まさか。ますます好きになった。あなたが俺を本当に愛してくれているんだってわかって嬉しいよ」
シュラトは心から幸せそうに微笑んで、再びカルナにそっとキスをした。お伽話に出てくるような、優しくて穏やかなキスだった。
本当に愛している。愛しているからこそ、離れなければとカルナは思った。
けれど、この幸福に満ちたシュラトの顔を見ていると、それが本当に正しいことなのか段々わからなくなってくる。
シュラトを不幸にしてしまうのが怖い。
しかし、そんな不幸なんて本当に訪れるのだろうか。
こうやって抱き合っているだけでシュラトはこんなにも幸せそうで、カルナも泣きそうなくらい幸せなのに──
「ほんとうに……」
「ん?」
「……本当に、俺が傍にいるだけでシュラト様は幸せになれますか……?」
「なれるよ」
迷いのない即答だった。
カルナはおずおずとシュラトの瞳を見つめる。
美しい深緑の瞳が、ただカルナだけを映して微笑んでいた。
「俺を幸せにしてくれる気になったのか?」
「……俺は……シュラト様を幸せにできる自信はないです……だけど、それでも傍にいてもいいのなら……」
「結婚してくれる?」
考えるように少しだけ黙ったあと、カルナは顔を赤らめてこくんとひとつ頷いた。
どうでもよくなったわけでも、シュラトの言葉に流されたわけでもない。
ただ、シュラトの言葉を聞いて、カルナ自身がそうしたいと思い直したのだ。
カルナが頷いた瞬間、シュラトの顔に満面の笑みが浮かぶ。普段のクールな顔からは想像もつかない、子どもみたいな笑顔だった。
「ありがとう、カルナ。愛してる。世界一幸せにする」
「俺もシュラト様のことを愛しています」
幸せにできるかはわからないけど……と続く言葉はシュラトに唇ごと奪われた。
差し込まれた舌に、今度はカルナの方からおそるおそると舌を絡ませる。ゆっくりと目を閉じながら舌を吸い合うと、気持ちよくて、幸せで、たまらなかった。
あれほど悩み、苦しんでいたのが嘘だったかのように、カルナは幸福で満たされていた。
……いや、本当はまだ少し怖い。
けれど、シュラトを幸せにできるのが本当にカルナだけなら、シュラトがそう言ってくれるのなら、カルナはシュラトの傍にいたい。
カルナがシュラトに与えられるものなど何もないが、シュラトへの愛だけなら有り余るほど持っているから。
酸欠気味のカルナが呼吸を整えていると、甘い声でシュラトがそう囁いた。
カルナは戸惑いながら、シュラトの顔を見つめ返す。
「おれは……」
「はい以外の返事は聞きたくない」
「……シュラト様は少し強引すぎますよ」
──それに、わざとじゃないとは思うけど、獣耳を出してるのも少しあざとい……
そんなことを考えながらカルナがむくれていると、何がおかしいのかシュラトはクスクスと小さな笑い声を立てた。
「カルナが素直じゃないからだ」
「俺はシュラト様のことを考えて……」
「ああ、わかってる。カルナは俺よりもずっと色々なことを考えていたんだな。正直、少し意外だった」
「……面倒くさいやつだって思いましたか?」
「まさか。ますます好きになった。あなたが俺を本当に愛してくれているんだってわかって嬉しいよ」
シュラトは心から幸せそうに微笑んで、再びカルナにそっとキスをした。お伽話に出てくるような、優しくて穏やかなキスだった。
本当に愛している。愛しているからこそ、離れなければとカルナは思った。
けれど、この幸福に満ちたシュラトの顔を見ていると、それが本当に正しいことなのか段々わからなくなってくる。
シュラトを不幸にしてしまうのが怖い。
しかし、そんな不幸なんて本当に訪れるのだろうか。
こうやって抱き合っているだけでシュラトはこんなにも幸せそうで、カルナも泣きそうなくらい幸せなのに──
「ほんとうに……」
「ん?」
「……本当に、俺が傍にいるだけでシュラト様は幸せになれますか……?」
「なれるよ」
迷いのない即答だった。
カルナはおずおずとシュラトの瞳を見つめる。
美しい深緑の瞳が、ただカルナだけを映して微笑んでいた。
「俺を幸せにしてくれる気になったのか?」
「……俺は……シュラト様を幸せにできる自信はないです……だけど、それでも傍にいてもいいのなら……」
「結婚してくれる?」
考えるように少しだけ黙ったあと、カルナは顔を赤らめてこくんとひとつ頷いた。
どうでもよくなったわけでも、シュラトの言葉に流されたわけでもない。
ただ、シュラトの言葉を聞いて、カルナ自身がそうしたいと思い直したのだ。
カルナが頷いた瞬間、シュラトの顔に満面の笑みが浮かぶ。普段のクールな顔からは想像もつかない、子どもみたいな笑顔だった。
「ありがとう、カルナ。愛してる。世界一幸せにする」
「俺もシュラト様のことを愛しています」
幸せにできるかはわからないけど……と続く言葉はシュラトに唇ごと奪われた。
差し込まれた舌に、今度はカルナの方からおそるおそると舌を絡ませる。ゆっくりと目を閉じながら舌を吸い合うと、気持ちよくて、幸せで、たまらなかった。
あれほど悩み、苦しんでいたのが嘘だったかのように、カルナは幸福で満たされていた。
……いや、本当はまだ少し怖い。
けれど、シュラトを幸せにできるのが本当にカルナだけなら、シュラトがそう言ってくれるのなら、カルナはシュラトの傍にいたい。
カルナがシュラトに与えられるものなど何もないが、シュラトへの愛だけなら有り余るほど持っているから。
47
お気に入りに追加
2,384
あなたにおすすめの小説
弱すぎると勇者パーティーを追放されたハズなんですが……なんで追いかけてきてんだよ勇者ァ!
灯璃
BL
「あなたは弱すぎる! お荷物なのよ! よって、一刻も早くこのパーティーを抜けてちょうだい!」
そう言われ、勇者パーティーから追放された冒険者のメルク。
リーダーの勇者アレスが戻る前に、元仲間たちに追い立てられるようにパーティーを抜けた。
だが数日後、何故か勇者がメルクを探しているという噂を酒場で聞く、が、既に故郷に帰ってスローライフを送ろうとしていたメルクは、絶対に見つからないと決意した。
みたいな追放ものの皮を被った、頭おかしい執着攻めもの。
追いかけてくるまで説明ハイリマァス
※完結致しました!お読みいただきありがとうございました!
婚約破棄されて捨てられた精霊の愛し子は二度目の人生を謳歌する
135
BL
春波湯江には前世の記憶がある。といっても、日本とはまったく違う異世界の記憶。そこで湯江はその国の王子である婚約者を救世主の少女に奪われ捨てられた。
現代日本に転生した湯江は日々を謳歌して過ごしていた。しかし、ハロウィンの日、ゾンビの仮装をしていた湯江の足元に見覚えのある魔法陣が現れ、見覚えのある世界に召喚されてしまった。ゾンビの格好をした自分と、救世主の少女が隣に居て―…。
最後まで書き終わっているので、確認ができ次第更新していきます。7万字程の読み物です。
【完結】魔法薬師の恋の行方
つくも茄子
BL
魔法薬研究所で働くノアは、ある日、恋人の父親である侯爵に呼び出された。何故か若い美人の女性も同席していた。「彼女は息子の子供を妊娠している。息子とは別れてくれ」という寝耳に水の展開に驚く。というより、何故そんな重要な話を親と浮気相手にされるのか?胎ました本人は何処だ?!この事にノアの家族も職場の同僚も大激怒。数日後に現れた恋人のライアンは「あの女とは結婚しない」と言うではないか。どうせ、男の自分には彼と家族になどなれない。ネガティブ思考に陥ったノアが自分の殻に閉じこもっている間に世間を巻き込んだ泥沼のスキャンダルが展開されていく。
推しの完璧超人お兄様になっちゃった
紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。
そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。
ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。
そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。
可愛くない僕は愛されない…はず
おがこは
BL
Ωらしくない見た目がコンプレックスな自己肯定感低めなΩ。痴漢から助けた女子高生をきっかけにその子の兄(α)に絆され愛されていく話。
押しが強いスパダリα ✕ 逃げるツンツンデレΩ
ハッピーエンドです!
病んでる受けが好みです。
闇描写大好きです(*´`)
※まだアルファポリスに慣れてないため、同じ話を何回か更新するかもしれません。頑張って慣れていきます!感想もお待ちしております!
また、当方最近忙しく、投稿頻度が不安定です。気長に待って頂けると嬉しいです(*^^*)
水の巫覡と炎の天人は世界の音を聴く
井幸ミキ
BL
僕、シーラン・マウリは小さな港街の領主の息子だ。領主の息子と言っても、姉夫婦が次代と決まっているから、そろそろ将来の事も真面目に考えないといけない。
海もこの海辺の街も大好きだから、このままここで父や姉夫婦を助けながら漁師をしたりして過ごしたいのだけど、若者がこんな田舎で一生を過ごしたいなんていうと遠慮していると思われてしまうくらい、ここは何もない辺鄙な街で。
15歳になる年、幼馴染で婚約者のレオリムと、学園都市へ留学しないといけないみたい……?
え? 世界の危機? レオリムが何とかしないといけないの? なんで? 僕も!?
やけに老成したおっとり少年シーラン(受)が、わんこ系幼馴染婚約者レオリム(攻)と、将来やりたい事探しに学園都市へ行くはずが……? 世界創生の秘密と、世界の危機に関わっているかもしれない?
魂は巡り、あの時別れた半身…魂の伴侶を探す世界。
魔法は魂の持つエネルギー。
身分制度はありますが、婚姻は、異性・同性の区別なく認められる世界のお話になります。
初めての一次創作BL小説投稿です。
魔法と、溺愛と、ハッピーエンドの物語の予定です。
シーランとレオリムは、基本、毎回イチャイチャします。
ーーーーー
第11回BL小説大賞、無事一か月毎日更新乗り切れました。
こんなに毎日小説書いたの初めてでした。
読んでくださった皆様のおかげです。ありがとうございます。
勢いで10月31日にエントリーをして、準備も何もなくスタートし、進めてきたので、まだまだ序盤で、あらすじやタグに触れられていない部分が多いのですが、引き続き更新していきたいと思います。(ペースは落ちますが)
良かったら、シーランとレオリムのいちゃいちゃにお付き合いください。
(話を進めるより、毎話イチャイチャを入れることに力をいれております)
(2023.12.01)
長らく更新が止まっていましたが、第12回BL大賞エントリーを機に再始動します。
毎日の更新を目指して、続きを投稿していく予定です。
よろしくお願いします。
(2024.11.01)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる