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8.ミルク
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カルナが唐突に尋ねると、木に額を押し付けたままのシュラトが目だけでカルナを見る。
そして、服の前をはだけさせたカルナを捉えたその目は、すぐに訝しむように細められた。
「……突然なんの話だ? あと、なんで急に服を脱ごうとしてるんだ……?」
完全に不審者を見る目である。
少しショックだったが、そんなことを気にしている場合ではない。
シュラトからの問い掛けには答えず、カルナは続けてシュラトに尋ねた。
「聞いたことはありませんか? 牛獣人のミルクはなんにでも効く万能薬だって」
「……ただの噂だろう……」
そう言われている。そういうことになっている。
だが、実際はそうではない。
カルナはゆっくりと首を横に振った。
「それが実は、ただの噂じゃない部分もあって……牛獣人の中には、本当にそういう効果があるミルクを出せる一族がいるんです」
「…………まさか、それがあなただとでも言いたいのか?」
「たぶん。母がそうだったので」
シュラトはハァと大きく息を吐いた。
呆れられたのかと思ったが、ただ単に傷の痛みで呼吸が荒くなっただけのようだった。
縋るように、カルナは尚も言い募る。
「父が毒蛇に噛まれた時、母が自分のミルクを飲ませて解毒させるのを見たことがあります。だから、たぶん魔物の毒にも効果があると思うんです!」
傍から見たら、自分のミルクを必死に飲ませようとしているカルナの姿は滑稽に映るかもしれない。
けれど、カルナはとにかくシュラトを助けたい一心だった。
シュラトから変なやつだと気持ち悪がられたとしても、それで命の恩人であるシュラトを助けられるのなら安いものだ。
カルナの言葉を信じているのかいないのか、シュラトは神妙な面持ちで黙り込んでいた。痛みのせいか、毒のせいか、鼻先と顎先からぽたぽたと汗が滴り落ちている。
そして、長い沈黙のあと、シュラトの目が静かにカルナを見やった。
「……それで、その……試してみてほしい、ということか……? 俺は構わないが、あなたはそれでいいのか……?」
シュラトの言葉に、カルナの表情は途端にパッと明るくなる。
「もちろんです! もう一族の秘密は言ってしまいましたし、むしろ飲んでもらえないほうが嫌です」
「そうか……」
シュラトはどこか困惑したような目でちらりとカルナの胸元を見つめた。
そのシュラトの表情に、カルナは不安そうに眉を下げる。
「牛獣人のミルクはお嫌いですか……?」
「いや、そういうわけではないんだが……なんというか、その……」
シュラトは小さな声でごにょごにょと何かを呟くが、カルナにはよく聞き取れなかった。
そして、先ほどよりも長い沈黙のあと、諦めたようにシュラトは浅く頷いた。
「……わかった、お願いしよう」
「ありがとうございます!」
カルナはいそいそとシャツを脱いで上半身裸になると、肌が触れ合いそうな距離までシュラトへと近づいた。
「それで、あの……」
「吸えばいいのか……?」
「え? あ、それでもいいですけど……」
もともとはカルナがシュラトの口の付近で乳を搾るつもりだったが、別にシュラトが吸う方でも構わない。
カルナにとって、どちらにせよ恥ずかしいことに変わりはないのだ。
「で、では……どうぞ……」
カルナは動けないシュラトのため膝立ちになって、自分から乳首をシュラトの唇まで近づけた。
シュラトは無言で、その淡いピンク色の乳首を間近で見つめている。
──これ、なにも知らない人が見たら、ただの変態だよな……。
今更ではあるが、カルナの顔は真っ赤になっていた。
毒のせいで元々赤らんでいたシュラトの顔が先ほどよりもいっそう赤く見えるのも、きっとカルナの気のせいではないのだろう。
それから数十秒後、ようやく意を決したらしいシュラトが、ぱくりとカルナの乳首を口に含んだ。
そして、服の前をはだけさせたカルナを捉えたその目は、すぐに訝しむように細められた。
「……突然なんの話だ? あと、なんで急に服を脱ごうとしてるんだ……?」
完全に不審者を見る目である。
少しショックだったが、そんなことを気にしている場合ではない。
シュラトからの問い掛けには答えず、カルナは続けてシュラトに尋ねた。
「聞いたことはありませんか? 牛獣人のミルクはなんにでも効く万能薬だって」
「……ただの噂だろう……」
そう言われている。そういうことになっている。
だが、実際はそうではない。
カルナはゆっくりと首を横に振った。
「それが実は、ただの噂じゃない部分もあって……牛獣人の中には、本当にそういう効果があるミルクを出せる一族がいるんです」
「…………まさか、それがあなただとでも言いたいのか?」
「たぶん。母がそうだったので」
シュラトはハァと大きく息を吐いた。
呆れられたのかと思ったが、ただ単に傷の痛みで呼吸が荒くなっただけのようだった。
縋るように、カルナは尚も言い募る。
「父が毒蛇に噛まれた時、母が自分のミルクを飲ませて解毒させるのを見たことがあります。だから、たぶん魔物の毒にも効果があると思うんです!」
傍から見たら、自分のミルクを必死に飲ませようとしているカルナの姿は滑稽に映るかもしれない。
けれど、カルナはとにかくシュラトを助けたい一心だった。
シュラトから変なやつだと気持ち悪がられたとしても、それで命の恩人であるシュラトを助けられるのなら安いものだ。
カルナの言葉を信じているのかいないのか、シュラトは神妙な面持ちで黙り込んでいた。痛みのせいか、毒のせいか、鼻先と顎先からぽたぽたと汗が滴り落ちている。
そして、長い沈黙のあと、シュラトの目が静かにカルナを見やった。
「……それで、その……試してみてほしい、ということか……? 俺は構わないが、あなたはそれでいいのか……?」
シュラトの言葉に、カルナの表情は途端にパッと明るくなる。
「もちろんです! もう一族の秘密は言ってしまいましたし、むしろ飲んでもらえないほうが嫌です」
「そうか……」
シュラトはどこか困惑したような目でちらりとカルナの胸元を見つめた。
そのシュラトの表情に、カルナは不安そうに眉を下げる。
「牛獣人のミルクはお嫌いですか……?」
「いや、そういうわけではないんだが……なんというか、その……」
シュラトは小さな声でごにょごにょと何かを呟くが、カルナにはよく聞き取れなかった。
そして、先ほどよりも長い沈黙のあと、諦めたようにシュラトは浅く頷いた。
「……わかった、お願いしよう」
「ありがとうございます!」
カルナはいそいそとシャツを脱いで上半身裸になると、肌が触れ合いそうな距離までシュラトへと近づいた。
「それで、あの……」
「吸えばいいのか……?」
「え? あ、それでもいいですけど……」
もともとはカルナがシュラトの口の付近で乳を搾るつもりだったが、別にシュラトが吸う方でも構わない。
カルナにとって、どちらにせよ恥ずかしいことに変わりはないのだ。
「で、では……どうぞ……」
カルナは動けないシュラトのため膝立ちになって、自分から乳首をシュラトの唇まで近づけた。
シュラトは無言で、その淡いピンク色の乳首を間近で見つめている。
──これ、なにも知らない人が見たら、ただの変態だよな……。
今更ではあるが、カルナの顔は真っ赤になっていた。
毒のせいで元々赤らんでいたシュラトの顔が先ほどよりもいっそう赤く見えるのも、きっとカルナの気のせいではないのだろう。
それから数十秒後、ようやく意を決したらしいシュラトが、ぱくりとカルナの乳首を口に含んだ。
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