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第6章 続・希望 ―無感情トレイン―

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第六章

あらすじ

ある晩、歌を歌う少年【希】とその歌を聴き
涙する少年【望】に出逢い
二人へはなしを始める黒い傘を差した男の物語。


登場人物

★ 柳 ジュンイチ 35歳

※アニメ 登場人物

・黒い傘をさした 男 ??歳 イケメン
・希(のぞみ)  男 12歳
・望(のぞむ)  男 12歳



〇ジュンイチの部屋 (夜中)
ソファに座ってボーっとテレビを観ているジュンイチ(35歳)
ジュンイチ「あれ、このアニメ……」
中学生の頃、友達と観た希望の続編をたまたま目にするジュンイチ。
ジュンイチ「続編、出来たんだ……」


アニメT 続・希望―無感情ト雨―


○テレビ(アニメのオープニングが流れる)
□オープニングの歌詞
【無感情トレイン】





無感情トレイン


背筋の伸びた 高層ビル
冷や汗をかいた タクシー
突然、なみだを流した いつかの大空

ポツリ…ポツリ…… 前が見えずとも……

君自身が希望となり 照らし続けろ
くっだらねぇー 時代を

毒を持て そう 真っ当になんて
バカバカしいだけだろ


速度を上げた 腕時計
無精髭の生えた カレンダー
突然、なみだを流した いつかの少年

ポロリ…ポロリ……前が見えずとも……

君自身が明かりとなり 照らし続けろ
くっだらねぇー 自分を

嘘を付け そう 真っ直ぐになんて
バカバカしいだけだろ


無感情と雨、明後日も雨……
だけど、君の心は…違うはず……


毒を持て そう 真っ当になんて
バカバカしいだけだろ

嘘を付け そう 真っ直ぐになんて
バカバカしいだけだろ

賢く生きるって そういう事でしょ…





※語り
ー 100年、続く雨の時代 ー
降り止まない雨は人々の心を蝕(むしば)んでいった。
生態系は崩れ
人間以外の生き物は半数以上が絶滅し、
そして……
ある者たちは耐え切れず自ら命を……
それでもある者たちは
“悲しいね”と口には出さず“苦しい顔”も見せず、笑いあっていた。

野らネコですら笑っていた。

野らネコ「ニャー」

〇男の自宅
リビングから一番近い窓のカーテンを開ける男。
左手の薬指の指輪が光る。
男「今日も雨か……」

〇同・台所
湯を沸かし、コーヒー豆を挽き、熱々なブラックコーヒーを飲む男。
男「アッチ」

〇同・玄関
黒い傘を持ち仕事に出掛ける男。
男「いってきます。って……だれも居ないっつーーの……」

〇地下鉄・ホーム
仕事帰り電車から降りて階段をのぼる男。
男「うん?広場の方からなにか聴こえてくるぞ」

〇駅の広場
ギターを弾きながら歌を歌っている少年【希】


□希の歌う歌詞 【IT‘S】





It’s


悲しいけれど笑ってる
楽しいけれど泣けてくる
どうナってんだろ

ひとつの言葉 【大丈夫。】 を癖にして
なにを言われても平気なフリしてた きみ

強いじぶんを演じきり
そして、ひとり叫ぶのだろう

寂しいけれど笑ってる
嬉しいけれど泣けてくる
どうナってんだろ

ひとつの仕草 【スマイル】 を楯にして
なにを言われても平気なカオしてた きみ

偉いじぶんを演じきり
そして、ひとり嘆くのだろう

それは月曜日の朝でした
叫びたくなった だから なりふり構わず
叫んだんだ。

ひとつの言葉 【大丈夫。】 を癖にして
なにを言われても平気なフリしてた きみ

強いじぶんを演じきり
そして、ひとり叫ぶのだろう

ア゛アァー ア゛ー ア゛ー ア゛ー




×   ×   ×

20人ほどの人だかりができている。
涙を拭う望。
歌い終えギターを片付け始める希。
希「集まってくれたけど、雨が強くなってきたし今日はもう帰ります」
散らばる観客。
一人、歌の余韻に浸っている男。
望が少年【希】に近寄る。
望「さっき歌ってた歌、最後に叫ぶところいいね。僕も一緒に叫びたくなっちゃった」
希「そう、じゃあ一緒に叫ぼうよ」
望「えっ……いや僕はいいや」
希「君も同じようなこと想ってたりするんでしょ……どうして我慢するの?想ったことを想ったままに吐き出せばいいじゃん」
望「うーん……」
希「辛い時には辛いって言えば、そう伝えればいいじゃん」
望「僕にはできないよ」
希「簡単じゃん……」
望「そんなこと言ったら父さんや母さんが心配する。それだけは嫌だ」
希「……」

※語り
そこへ黒い傘を差した、ひとりの男が希に近寄り言ったのだった。

男「自分の想いを貫き、自分の弱さを、さらけだせる……」
太くて低い声でいう男。
男「君の“強さ”が欲しい……」

※語り
そして黒い傘を差した、ひとりの男が望の方へ振り向き言ったのだった。

男「心配させないために自分を、偽れ、誤魔化せる……」
太くて低い声でいう男。
男「君の“強さ”は素晴らしい」
軽く頷く少年たち【希・望】
男「すまない。二人の話を立ち聞きするつもりはなかったんだ。許してくれ……」
希「……はい」
望「はい……」

男「君【希】の歌は自分の事を歌っているのか、それとも君【望】のような子の事を歌っているのか不思議な歌だな」
少年たちの顔をそれぞれ見る男。
右手で後頭部をかく希。
男「この雨はもう止むことはないだろう……きっと、これからも」
望「わかってる」
男「こんな時代を恨み続けて生きていくのか、それとも……こんな時代でも楽しんでみようと考えを変えてみるのか……みんな自分自身と戦ってる」
希「なんとなく、見てたらわかる」
望「……(無言で頷く)」
男「そうだろ……。ただ、そういった想いを口にするかしないかのことだけだ。君【希】の強さも君【望】の強さも間違ってなんかない!!ちゃんと二人とも自分自身のあるべき姿に気づいてる。俺は気づいてるフリして未だに 迷ってる、悩んでる。もういい歳こいた、オッサンだぞ」
苦笑いする少年たち【希・望】
男「そんなどうしようもない俺に、この雨はな……」
黒い傘を投げ捨てて雨に打たれる男。
男「いつか月の明かりを浴びてみたいと願うよりも……いつもそばに居てくれた、居てくれる人たちの明かりになってやれば良かったんだと……」
希「この雨が……」
男「いつか太陽のあたたかさを知りたいと願うよりも……いつもそばに居てくれた、居てくれる人たちのあたたかさに気づかせてくれたんだ……」
望「この雨で……」
男「だがな、アァーー、すべて亡くしてから気づいたってオセェーーっつーーの」
希「濡れちゃいますよーー(俺もやっちゃうけど……)」
男「それに、この雨はこんなオッサンの涙を隠してくれる……アハハ、もうこのセリフは使い古されてるか」ニヤリ
望「濡れちゃいますってーー(ダッサイな……)」
男「俺はこれからも迷い悩み続けていくだろう……」
望「あの……」
希「おじさんの過去にいったい何があったの」
男「それは……。察してくれ……」
少年たちは【希・望】顔と顔を見合わせる。
望「この雨でご家族を亡くされたとか……」
希「それとも恋人か、いや親友か……」
男「君たちが今抱えてる迷いや悩み、不安は輝き続けるための根源となるはずだから」

〇空
薄暗い雲から止むことのない雨が降る。
空を見上げ、突然、叫び出す男。
男「この見上げた空に何も見えずとも……君たちは誰かの心で輝き続ける人間でいろーーーー!!!!」
少年たち【希・望】「……え、」
男「変わらず……いてくれ……よ」
少年たち【希・望】「はっ、はい」

男「負けるなっ!少年たちよ!!
  負けるなーーーーーーーーーー!!!」



○テレビ(アニメのエンディングが流れる)
□エンディングの歌詞
【真夏の帰り道】

※歌詞は
希望ーそれぞれの強さー
に掲載



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