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第三章 明日へ
88. 内助
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返事は改めてと伝え、アルスラン殿下との会話を終えて屋敷に戻った後も、殿下の言葉が頭から離れなかった。
アルスラン殿下が嘘をつく必要は無い、けれど、あまりにも現実味の無い話だった。
(僕なんかで……役に立てるんだろうか……)
ぐるぐると思考が巡る。結局、その日は中々眠ることが出来なかった。
翌日、目が覚めると昨日の事が夢だったかのように遠く感じた。身支度を整えると、寝室に我が子を抱いたレヴィルが入ってくる。
「ティト、おはよう」
「ああ、レヴィルおはよう、ネイトもおはよう」
僕はレヴィルの頬にキスを落とし、レヴィルとの2番目の子供――ネイトの額にキスをした。ネイトからは赤子独特の何とも言えない甘い香りがする。
「顔色が冴えないな、眠れなかったのか?」
「うーん、なかなか寝付けなくて」
「カミーユ殿下の件か?」
「……まあね」
やはりレヴィルにはお見通しだ。
「俺も少し考えてみたんだが……」
「うん?」
「ユーネリウス様に相談をしてみてはどうだろう」
「ユリウス様?」
ユーネリウス・アンドリューズ・ローランド――王太子であるカミーユ殿下の伴侶であった方だ。
「でも……離縁をされたんでしょう?そんなこと相談していいのかな」
「カミーユ殿下とユーネリウス様は不仲で離縁したわけではない。むしろとても仲が良かった。殿下の状況を知れば、きっとユーネリウス様も心配するだろう。力になってくれるんじゃないか?」
「なるほど……」
「手紙だけでも書いてみたらどうだ」
「そうだね、書いてみるよ」
僕はレヴィルに礼を言ってもう一度キスをした。彼は僕の頭を撫でると、優しく語りかけた。
「ティト、お前なら大丈夫だよ。自信を持て」
「うん……」
「もし何かあっても俺が守ってやるから、安心しろ」
「ありがとう、レヴィル」
レヴィルは僕の不安を感じ取ったようだ。やっぱりレヴィルはすごいと思う。彼の言葉を聞くだけで気持ちが落ち着くのだ。僕は彼の手に自分の手を添えて頬を寄せた。
「愛しています」
「ああ、俺もだよ」
2人で見つめ合い、笑い合う。そしてどちらからともなく唇を合わせた。
アルスラン殿下が嘘をつく必要は無い、けれど、あまりにも現実味の無い話だった。
(僕なんかで……役に立てるんだろうか……)
ぐるぐると思考が巡る。結局、その日は中々眠ることが出来なかった。
翌日、目が覚めると昨日の事が夢だったかのように遠く感じた。身支度を整えると、寝室に我が子を抱いたレヴィルが入ってくる。
「ティト、おはよう」
「ああ、レヴィルおはよう、ネイトもおはよう」
僕はレヴィルの頬にキスを落とし、レヴィルとの2番目の子供――ネイトの額にキスをした。ネイトからは赤子独特の何とも言えない甘い香りがする。
「顔色が冴えないな、眠れなかったのか?」
「うーん、なかなか寝付けなくて」
「カミーユ殿下の件か?」
「……まあね」
やはりレヴィルにはお見通しだ。
「俺も少し考えてみたんだが……」
「うん?」
「ユーネリウス様に相談をしてみてはどうだろう」
「ユリウス様?」
ユーネリウス・アンドリューズ・ローランド――王太子であるカミーユ殿下の伴侶であった方だ。
「でも……離縁をされたんでしょう?そんなこと相談していいのかな」
「カミーユ殿下とユーネリウス様は不仲で離縁したわけではない。むしろとても仲が良かった。殿下の状況を知れば、きっとユーネリウス様も心配するだろう。力になってくれるんじゃないか?」
「なるほど……」
「手紙だけでも書いてみたらどうだ」
「そうだね、書いてみるよ」
僕はレヴィルに礼を言ってもう一度キスをした。彼は僕の頭を撫でると、優しく語りかけた。
「ティト、お前なら大丈夫だよ。自信を持て」
「うん……」
「もし何かあっても俺が守ってやるから、安心しろ」
「ありがとう、レヴィル」
レヴィルは僕の不安を感じ取ったようだ。やっぱりレヴィルはすごいと思う。彼の言葉を聞くだけで気持ちが落ち着くのだ。僕は彼の手に自分の手を添えて頬を寄せた。
「愛しています」
「ああ、俺もだよ」
2人で見つめ合い、笑い合う。そしてどちらからともなく唇を合わせた。
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