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目覚め

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長い夜が明ける。

東の水路の水面に赤い朝日が昇る頃、魔女達は、そのテリトリーに各々帰ってゆく。
水路は再び、夜の訪れまでは、魔女の干渉を受けないただの水路に戻ってゆく。

「あ、隊長の捕縛魔術だ」

隊員達が、ようやく魔女の影響を逃れて、水路に船を進める
すぐに、ジャンが放った捕獲魔術で、水面をアメンボのように揺蕩っている、いくつかの塊が見えた。

ジャンの捕獲魔術で囚われたのは、間違いない、この騒動の当事者だ。

「随分と荒い魔術だな。。」

穏やかな性格のジャンにしては、捕獲に使われた魔術は随分荒く、強く、中に囚われている男達は、実に不愉快な思いをしているだろう。
この連中は、憲兵が回収して、領主の沙汰を待つ事になる。
なお、ここの領主に関する噂は、半分は嘘だが、もう半分ほどは、実に本当の、噂だ。

「あ!ここにもいた!」

憲兵達は、ずるずると、捕獲魔法にかけられた男達を船に回収してゆく。
この男達が、どう領主に料理されるかは憲兵にはあずかり知らぬことではあるが、ここ最近発表された領主の研究が、軍事用に利用する、雷の人体内への直接発生に関する論文だった事を、憲兵は皆、思い出し、震えていた。

「おっかしいですね、隊長とニコラちゃんはどこに行ったんだろう。」

領主の魔法論文など読んだこともないだろう、リバーが呑気にキョロキョロとジャンの姿を探すが、肝心のニコラと、ジャンが見当たらない。
隊員達が総出で水路を探すも、一向にその姿が見えない。

「私が探そう。」

リカルドが、小さく魔力の追跡魔術を詠唱する。
本来、この魔法は短時間、狭範囲にしか作用しないものだ。

たかがニコラのような小娘に掛けられているような、大掛かりな魔力の追跡魔術は、よほど組織的に魔力を管轄している集団によるものだ。大変な手間と執念で、ニコラを消そうとしている事が、感じられる。

リカルドが、ジャンの魔力を追うと、森のほとりにその反応が感じられる。
リカルドが目を凝らすと、水路から離れた森のほとりに、ジャンの乗っていた高速艇が打ち捨てられているのが見えた。

「隊長。」

リカルドが近寄ると、騎士のマントに大切そうに包まれている、眠っているようなニコラと、そして感情を失って、真っ白な顔で、大きな木の根元でニコラを抱え、座り込んでいるジャンの姿が木々の間から現れた。

(生体反応はある。。ニコラは生きている。。)

リカルドは、ニコラから魔力が発生している事を確認し、一瞬ホッと安心したものの、茫然自失になっているジャンの様子に、少し心を引き締めながら、できるだけ柔らかい表情を作って、近づく。

「よかった、隊長、無事保護されたのですね、急に魔女と取引などされるので、驚きました。」

この魔女との取引は、高い取引になるはずだ。
ひょっとすると、もう腕の一本くらいはもがれているのかもしれない。

「・・・・・・・・」

リカルドの声に、ジャンから何も反応がない。

(まさか、精神を乗っ取られたか。。?)

リカルドは、大急ぎでジャンに駆け寄り、その脈を見て、瞼を無理やり引っ張って目玉の中の瞳孔を確認した。

「隊長!」

「いたたたた、リカルド何する!!」


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