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第3話 法務官side 「ある男子学生の死」
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「フォード、悪い。別件で調べたいことができた」
他にも、現場でリボンが見つかったことはないか、過去の事件の記録を遡った。
そして2週間前に事故死として扱われたものが見つかった。
マーガレット・ノリスという80代の女性が自宅付近の池で溺死していた。
軽度の認知症だったので、徘徊しているうちに誤って池に転落してしまった不幸な事故だと家族は納得しているようだ。
報告書によると、凝った模様のレース編みのリボンが現場で見つかっているという。
これも事故などではなく、誰かによって突き落とされたのだとしたら……?
――――いや、いったん落ち着くか。
老女、人妻、貴族の女学生。
年齢もバラバラ、交友関係も被っていない。
三人に共通することなどないように思える。
しかし偶然で片付けていいものとは思えない。
同じリボンをわざわざ現場に残したのは、犯人には伝えたいメッセージがあるのだろう。
なにか見逃していないか、カーティスは改めて被害者たちについて洗い出した。
「フォード、見てくれ」
「どうした?」
「家族構成を調べていたんだが、老女の孫、人妻の夫、令嬢の長兄が同い年で、同じ学校を卒業しているんだ。遺族が元同級生とは、ただの偶然だろうか?」
「まさか、狙いは遺族なのか?」
「わからない。その学校に話を聞きに行ってくる」
私立スランディドノ学院は、貴族や良家の子息が通う全寮制の学校だ。
当時の学生がこの学校の教師になっており、詳しいことを聞くことができた。
被害者の遺族、ローリー・ノリス、ベンジャミン・ブルース、ハリー・グレンヴィル伯爵はみな同じクラスで特に仲が良かったという。
そして、同じグループにボビー・リッチとサミュエル・ローズ、ジェシー・ロビンソンという学生もいた。
ただ、サミュエル・ローズは卒業間近に死亡していた。
「10年以上も昔の話なのによく覚えていらっしゃいますね」
「ええ。私は彼らの一学年下の後輩にあたりますが、サミュエル・ローズが亡くなったときは学院中が大変な騒ぎになりました」
「と、いいますと?」
「ローズは崖から転落した事故死ということになっていますが、その少し前から、ローズと伯爵たちがたびたび怒鳴りあいの喧嘩をしているのを見た者がたくさんいました。それで、彼らがローズを殺したのではないかという噂が立ったのです。転落した場所も、普段人が行くような場所ではなかったため、連れ出して突き落としたのではないかと疑う者までいました」
「それでどうなったのですか?」
「ここだけの話にしていただきたいのですが、なにも起きずに終わりました。ローズの両親が学院に調査を申し立てたようでしたが、名門の伯爵家の息子が絡んでいましたから、学院長も及び腰で、結局そのままです」
「ローズの死で、伯爵らを恨んでいるような人物がいると思いますか?」
教師は首をかしげる。
「どうでしょう。恨んでいるとしたらご両親でしょうが、もうずいぶん前に亡くなられていますからね」
「そうですか。大変参考になりました。ありがとうございます」
カーティスは礼をいい、学院を辞去した。
他にも、現場でリボンが見つかったことはないか、過去の事件の記録を遡った。
そして2週間前に事故死として扱われたものが見つかった。
マーガレット・ノリスという80代の女性が自宅付近の池で溺死していた。
軽度の認知症だったので、徘徊しているうちに誤って池に転落してしまった不幸な事故だと家族は納得しているようだ。
報告書によると、凝った模様のレース編みのリボンが現場で見つかっているという。
これも事故などではなく、誰かによって突き落とされたのだとしたら……?
――――いや、いったん落ち着くか。
老女、人妻、貴族の女学生。
年齢もバラバラ、交友関係も被っていない。
三人に共通することなどないように思える。
しかし偶然で片付けていいものとは思えない。
同じリボンをわざわざ現場に残したのは、犯人には伝えたいメッセージがあるのだろう。
なにか見逃していないか、カーティスは改めて被害者たちについて洗い出した。
「フォード、見てくれ」
「どうした?」
「家族構成を調べていたんだが、老女の孫、人妻の夫、令嬢の長兄が同い年で、同じ学校を卒業しているんだ。遺族が元同級生とは、ただの偶然だろうか?」
「まさか、狙いは遺族なのか?」
「わからない。その学校に話を聞きに行ってくる」
私立スランディドノ学院は、貴族や良家の子息が通う全寮制の学校だ。
当時の学生がこの学校の教師になっており、詳しいことを聞くことができた。
被害者の遺族、ローリー・ノリス、ベンジャミン・ブルース、ハリー・グレンヴィル伯爵はみな同じクラスで特に仲が良かったという。
そして、同じグループにボビー・リッチとサミュエル・ローズ、ジェシー・ロビンソンという学生もいた。
ただ、サミュエル・ローズは卒業間近に死亡していた。
「10年以上も昔の話なのによく覚えていらっしゃいますね」
「ええ。私は彼らの一学年下の後輩にあたりますが、サミュエル・ローズが亡くなったときは学院中が大変な騒ぎになりました」
「と、いいますと?」
「ローズは崖から転落した事故死ということになっていますが、その少し前から、ローズと伯爵たちがたびたび怒鳴りあいの喧嘩をしているのを見た者がたくさんいました。それで、彼らがローズを殺したのではないかという噂が立ったのです。転落した場所も、普段人が行くような場所ではなかったため、連れ出して突き落としたのではないかと疑う者までいました」
「それでどうなったのですか?」
「ここだけの話にしていただきたいのですが、なにも起きずに終わりました。ローズの両親が学院に調査を申し立てたようでしたが、名門の伯爵家の息子が絡んでいましたから、学院長も及び腰で、結局そのままです」
「ローズの死で、伯爵らを恨んでいるような人物がいると思いますか?」
教師は首をかしげる。
「どうでしょう。恨んでいるとしたらご両親でしょうが、もうずいぶん前に亡くなられていますからね」
「そうですか。大変参考になりました。ありがとうございます」
カーティスは礼をいい、学院を辞去した。
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