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第23話 ローマンの来襲①
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アビゲイルは仕事が終えて、アパートに戻った。
王太子妃様が誕生日にあつらえたパリュールをご友人たちに自慢してくださったおかげで、貴族のご令嬢からの大口の注文がちょくちょく入るようになった。
ブリエ・フルールの第3弾のデザインも完成し、工房では制作に入ったところだ。
身体は疲れているが、心は充実している。
心地よい疲れとはこういうことをいうのか、気持ちよく眠れそうだ。
部屋のドアのカギを開けようとしたときに、暗い廊下の突き当りから人の気配を感じた。
「誰かいるの?」
「お前、夫だった男を忘れたのか?」
ゆらゆらと影が動く。
そこには変わり果てた姿の元夫がいた。
結婚していた頃の洒落者ぶりはみじんも感じられなかった。
以前は髪の毛から爪の先まで入念に手入れされ、流行の最先端の服を身にまとっていたのに、目の前のローマンはくたびれたシャツと、型の崩れたジャケットを着ていた。
肌は血色が悪く、無精ひげを生やし、髪はパサパサで目は落ちくぼんでいる。
「ローマン、何をしに来たの?」
「お前を連れ戻しに来たんだよ。俺のところに帰ってこい」
ローマンは少しずつ距離を詰めてくる。
アビゲイルは後ずさりした。
「何を馬鹿なことを。私たちはとっくに離婚したし、二度とあなたの顔は見たくないわ」
「うるさい!言うことを聞け、ケッペル家のためにベアテの力を使うんだ」
「ふざけないで!誰があんな家のために!」
「逆らうんじゃない!」
アビゲイルの腕をつかみ、強引に引きずろうとする。
「放して!!」
無我夢中で手を振りほどく。
ローマンはアビゲイルを壁に押し付けると、細い首に手をかけた。
体重をかけて締め付けようとする。
「や、やめて……」
「おとなしくついてくるんだ!わかったか!」
ローマンの手を少しでも緩めようと抵抗するが、腕力の差はどうにもならない。
意識が遠くなり始めた。
その時、
「おい!!何をやっているんだ!!」
工房長のマシューが駆け寄ると、ローマンを思い切り突き飛ばした。
解放されたアビゲイルは空気を求めてゼイゼイと呼吸する。
「大丈夫か、アビー」
ローマンはよろよろと立ち上がると舌打ちしながら逃げていった。
「あれは昔の旦那か?また戻ってくるかもしれない、工房に戻ろう」
マシューはアビゲイルを抱き上げると工房に連れ帰った。
工房の二階にむかってマシューが大声で妻を呼んだ。
「グレース、来てくれ!!」
「マシュー、どうしたのよ、何事?」
オーナーが階段を降りてくる。
抱きかかえられているアビゲイルを見て驚く。
「ちょっと、何があったのよ」
「離婚した旦那が部屋で待ち伏せしてた」
「何てこと、すぐに殿下に知らせないと」
住み込みの若手職人が急いで王宮に知らせに走った。
王太子妃様が誕生日にあつらえたパリュールをご友人たちに自慢してくださったおかげで、貴族のご令嬢からの大口の注文がちょくちょく入るようになった。
ブリエ・フルールの第3弾のデザインも完成し、工房では制作に入ったところだ。
身体は疲れているが、心は充実している。
心地よい疲れとはこういうことをいうのか、気持ちよく眠れそうだ。
部屋のドアのカギを開けようとしたときに、暗い廊下の突き当りから人の気配を感じた。
「誰かいるの?」
「お前、夫だった男を忘れたのか?」
ゆらゆらと影が動く。
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肌は血色が悪く、無精ひげを生やし、髪はパサパサで目は落ちくぼんでいる。
「ローマン、何をしに来たの?」
「お前を連れ戻しに来たんだよ。俺のところに帰ってこい」
ローマンは少しずつ距離を詰めてくる。
アビゲイルは後ずさりした。
「何を馬鹿なことを。私たちはとっくに離婚したし、二度とあなたの顔は見たくないわ」
「うるさい!言うことを聞け、ケッペル家のためにベアテの力を使うんだ」
「ふざけないで!誰があんな家のために!」
「逆らうんじゃない!」
アビゲイルの腕をつかみ、強引に引きずろうとする。
「放して!!」
無我夢中で手を振りほどく。
ローマンはアビゲイルを壁に押し付けると、細い首に手をかけた。
体重をかけて締め付けようとする。
「や、やめて……」
「おとなしくついてくるんだ!わかったか!」
ローマンの手を少しでも緩めようと抵抗するが、腕力の差はどうにもならない。
意識が遠くなり始めた。
その時、
「おい!!何をやっているんだ!!」
工房長のマシューが駆け寄ると、ローマンを思い切り突き飛ばした。
解放されたアビゲイルは空気を求めてゼイゼイと呼吸する。
「大丈夫か、アビー」
ローマンはよろよろと立ち上がると舌打ちしながら逃げていった。
「あれは昔の旦那か?また戻ってくるかもしれない、工房に戻ろう」
マシューはアビゲイルを抱き上げると工房に連れ帰った。
工房の二階にむかってマシューが大声で妻を呼んだ。
「グレース、来てくれ!!」
「マシュー、どうしたのよ、何事?」
オーナーが階段を降りてくる。
抱きかかえられているアビゲイルを見て驚く。
「ちょっと、何があったのよ」
「離婚した旦那が部屋で待ち伏せしてた」
「何てこと、すぐに殿下に知らせないと」
住み込みの若手職人が急いで王宮に知らせに走った。
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