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第22話 ケッペル家の凋落
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ローマンの転落のスピードは加速する一方だった。
事業に失敗しただけではなく、領地の運営もまるで上手くいかなかった。
ローマンの放蕩ぶりは何年も前から領民にも知れ渡っていた。
王都へいったきりで領地にかかわろうとしない跡継ぎなど信用されるわけもない。
聡明だった先代の領主を慕っていた優秀な役人たちは、無能な後継者に早々に見切りをつけ、どんどん辞めていく。残った者たちだけでなんとか仕事を回そうとしているが、業務に滞りが出るのは必然だった。
徴収した税金を循環させることも出来ず、インフラを整備するための公共工事もストップしている。
また治安維持にも影響した。護衛官を雇うことができず、警備が手薄になったところ、よその土地から逃げてきた犯罪者が増え強盗や暴行事件が頻発するようになった。
領民が自発的に結成した自警団が街を巡回していたが、武器など物資が不足しているため十分に機能しているとは言い難かった。
民衆の新領主への不信感は募る一方だった。
ケッペル家の事業の損失を税金で補おうとしているのではないかとまことしやかにささやかれるようにまでなった。
ある日、ローマンが王都から領地へ戻ったところ、数十人の男たちが馬車を取り囲み、溜まりにたまった不満を爆発させるように石を投げつけてきた。
ガラス窓を破って投げ込まれた石はローマンの頭部を直撃し大量に出血する大怪我を負った。
――――愚民どもが、ふざけやがって!!
さらに、学校を卒業間近の妹のナオミから絶縁の手紙が届いた。
他国の貴族に嫁ぐことになったこと、結婚式に母親と兄を招待する気はないこと、父親亡き今、もう二度と家には戻らないことが憎しみのこもった言葉で綴られていた。
妹が自分や母を嫌っていたのは知っている。でも、まさかこんな状況に陥った家族を見捨てるとは思わなかった。
富豪と結婚させて、金を引っ張ろうと思っていたのに当てが外れてしまった。
いくつかあった別荘はすべて売り払ったし、賃借用の耕作地や農園もほとんど手放した。
それでもまだ出費の方が上回っている。
いよいよ王都の屋敷を売却しなければならない状況になったが、田舎な領地に引っ込みたくない母親は猛反対していた。
父親の死後も浪費を止めることはなく、請求書や督促状の山がどんどん高くなってゆく。
生活の質を落とす気はさらさらなく、いままで通りの贅沢を続けたい母親は、ドレスや宝石が思うように買えなくなったことに腹を立て、もう一度家を盛り返すように、ローマンの顔を見るたびにヒステリックに喚き散らしていた。
たくさんいた愛人たちも、家が傾きかけた途端に誰一人連絡が取れなくなった。
女の柔肌が恋しくなった時には娼館へ通った。
今までは、女など向こうからいくらでも寄ってきたのに、金を出して買わなければいけないことに憤りを感じた。
経済的な援助を求めて、ローマン自身の新しい見合いも探したが、断られる一方だった。
急場をしのぐためにタチの悪い高利貸から大金を借りたが、当然のように返済は出来なかった。
利息代わりにケッペル商会の販路を使って違法な品を流通させるように要求された。
ローマンは法律に背くことになんら抵抗がなく、金になるならなんでも引き受けた。
それどころか積極的に禁忌品に手を出した。
それなりにいい金にはなったがまだまだ足りない。
ふっとある考えが思い浮かぶ。
俺としたことがなんで今まで切り札を忘れていたんだ。
にやけが止まらない。
――――俺にはまだ運がある。
事業に失敗しただけではなく、領地の運営もまるで上手くいかなかった。
ローマンの放蕩ぶりは何年も前から領民にも知れ渡っていた。
王都へいったきりで領地にかかわろうとしない跡継ぎなど信用されるわけもない。
聡明だった先代の領主を慕っていた優秀な役人たちは、無能な後継者に早々に見切りをつけ、どんどん辞めていく。残った者たちだけでなんとか仕事を回そうとしているが、業務に滞りが出るのは必然だった。
徴収した税金を循環させることも出来ず、インフラを整備するための公共工事もストップしている。
また治安維持にも影響した。護衛官を雇うことができず、警備が手薄になったところ、よその土地から逃げてきた犯罪者が増え強盗や暴行事件が頻発するようになった。
領民が自発的に結成した自警団が街を巡回していたが、武器など物資が不足しているため十分に機能しているとは言い難かった。
民衆の新領主への不信感は募る一方だった。
ケッペル家の事業の損失を税金で補おうとしているのではないかとまことしやかにささやかれるようにまでなった。
ある日、ローマンが王都から領地へ戻ったところ、数十人の男たちが馬車を取り囲み、溜まりにたまった不満を爆発させるように石を投げつけてきた。
ガラス窓を破って投げ込まれた石はローマンの頭部を直撃し大量に出血する大怪我を負った。
――――愚民どもが、ふざけやがって!!
さらに、学校を卒業間近の妹のナオミから絶縁の手紙が届いた。
他国の貴族に嫁ぐことになったこと、結婚式に母親と兄を招待する気はないこと、父親亡き今、もう二度と家には戻らないことが憎しみのこもった言葉で綴られていた。
妹が自分や母を嫌っていたのは知っている。でも、まさかこんな状況に陥った家族を見捨てるとは思わなかった。
富豪と結婚させて、金を引っ張ろうと思っていたのに当てが外れてしまった。
いくつかあった別荘はすべて売り払ったし、賃借用の耕作地や農園もほとんど手放した。
それでもまだ出費の方が上回っている。
いよいよ王都の屋敷を売却しなければならない状況になったが、田舎な領地に引っ込みたくない母親は猛反対していた。
父親の死後も浪費を止めることはなく、請求書や督促状の山がどんどん高くなってゆく。
生活の質を落とす気はさらさらなく、いままで通りの贅沢を続けたい母親は、ドレスや宝石が思うように買えなくなったことに腹を立て、もう一度家を盛り返すように、ローマンの顔を見るたびにヒステリックに喚き散らしていた。
たくさんいた愛人たちも、家が傾きかけた途端に誰一人連絡が取れなくなった。
女の柔肌が恋しくなった時には娼館へ通った。
今までは、女など向こうからいくらでも寄ってきたのに、金を出して買わなければいけないことに憤りを感じた。
経済的な援助を求めて、ローマン自身の新しい見合いも探したが、断られる一方だった。
急場をしのぐためにタチの悪い高利貸から大金を借りたが、当然のように返済は出来なかった。
利息代わりにケッペル商会の販路を使って違法な品を流通させるように要求された。
ローマンは法律に背くことになんら抵抗がなく、金になるならなんでも引き受けた。
それどころか積極的に禁忌品に手を出した。
それなりにいい金にはなったがまだまだ足りない。
ふっとある考えが思い浮かぶ。
俺としたことがなんで今まで切り札を忘れていたんだ。
にやけが止まらない。
――――俺にはまだ運がある。
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