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第13話 抑えられないときめき
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帰りの馬車のなかでエリオットは側近に命じた。
「彼女について調べてくれ」
「はい、承知しました。お綺麗な女性でしたからね」
「うるさい。国王夫妻の記念品にかかわるのに万が一にでも悪い評判があったら困ったことになるから念のためだ」
「はいはい、そういうことにしておいてもいいですよ」
「それに、おそらく彼女は……」
「何か気になることが?」
「いや、まだ確信が持てないからそれは後でいい。わかる範囲で身辺調査をしておいてくれ」
翌日、エリオットの執務室にケーシーが報告に上がった。
「アビゲイル嬢はコリントス地方を治めるボーフォート公爵家の長女です。父親の代では商売に失敗し没落しましたが、長男のヨハネス氏が当主になってからは盛り返し、事業も順調に業績を伸ばしています。領地の運営にも熱心で、領民たちからも大変慕われているようです。ご実家のほうは問題ないでしょう」
「公爵家の令嬢だったのか」
「私も驚きました。平民とは思えない気品のある女性だと思いましたが、あのような店で働く貴族の令嬢など初めてお会いしました」
報告書をめくる。
「そして、一年前にケッペル子爵家の嫡男であるローマン・ケッペルと結婚しましたが、つい先日に離婚しています」
「離婚の理由は?」
「書面に残っていないのではっきりわかりませんが、経済的に困窮していたボーフォート家がケッペル家からの資金援助と引き換えに嫁がせたけれど、必要なくなったので兄が離婚させたようです。とにかく元夫は最低な男ですね。放蕩息子の典型です。使用人から聞き出しましたが、アビゲイル嬢に暴力をふるって大怪我をさせたこともあったようです」
「まったく許しがたいな。そのろくでなしは今は何を」
「変わらず派手に遊び歩いているようです。この手の男は一生治らないでしょうね」
2回目の打ち合わせの準備中、来客用の茶葉が切れているのに気付いたアビーは急いで買いに走った。
戻るとと馬車がもう着いていた。どうやら入れ違いになってしまったらしい。
慌てて店内に戻ったが、エリオットの姿が見えない。
「オーナー、殿下はいらしていないの?馬車はあるのに」
「それが、おなかが空いたと言って、今、賄いを召し上がっているわ」
「ええっ?」
工房の食堂をそっとのぞくと、職人たちとエリオットが一緒に食卓を囲んでいた。
「王子様が庶民の食事なんて、お口に合うのかしら?」
「さあね、第二王子は王族らしくない気さくな方だという噂だったけど、想像以上ね」
食堂からは笑い声が絶えず聞こえる。
アビゲイルはエリオットの飾らない笑顔から目が離せなくなっていた。
まだ会ったばかりなのにこんなにも心惹かれている。
身分違いなのは分かっていてもときめきを抑えることなどできなかった。
「彼女について調べてくれ」
「はい、承知しました。お綺麗な女性でしたからね」
「うるさい。国王夫妻の記念品にかかわるのに万が一にでも悪い評判があったら困ったことになるから念のためだ」
「はいはい、そういうことにしておいてもいいですよ」
「それに、おそらく彼女は……」
「何か気になることが?」
「いや、まだ確信が持てないからそれは後でいい。わかる範囲で身辺調査をしておいてくれ」
翌日、エリオットの執務室にケーシーが報告に上がった。
「アビゲイル嬢はコリントス地方を治めるボーフォート公爵家の長女です。父親の代では商売に失敗し没落しましたが、長男のヨハネス氏が当主になってからは盛り返し、事業も順調に業績を伸ばしています。領地の運営にも熱心で、領民たちからも大変慕われているようです。ご実家のほうは問題ないでしょう」
「公爵家の令嬢だったのか」
「私も驚きました。平民とは思えない気品のある女性だと思いましたが、あのような店で働く貴族の令嬢など初めてお会いしました」
報告書をめくる。
「そして、一年前にケッペル子爵家の嫡男であるローマン・ケッペルと結婚しましたが、つい先日に離婚しています」
「離婚の理由は?」
「書面に残っていないのではっきりわかりませんが、経済的に困窮していたボーフォート家がケッペル家からの資金援助と引き換えに嫁がせたけれど、必要なくなったので兄が離婚させたようです。とにかく元夫は最低な男ですね。放蕩息子の典型です。使用人から聞き出しましたが、アビゲイル嬢に暴力をふるって大怪我をさせたこともあったようです」
「まったく許しがたいな。そのろくでなしは今は何を」
「変わらず派手に遊び歩いているようです。この手の男は一生治らないでしょうね」
2回目の打ち合わせの準備中、来客用の茶葉が切れているのに気付いたアビーは急いで買いに走った。
戻るとと馬車がもう着いていた。どうやら入れ違いになってしまったらしい。
慌てて店内に戻ったが、エリオットの姿が見えない。
「オーナー、殿下はいらしていないの?馬車はあるのに」
「それが、おなかが空いたと言って、今、賄いを召し上がっているわ」
「ええっ?」
工房の食堂をそっとのぞくと、職人たちとエリオットが一緒に食卓を囲んでいた。
「王子様が庶民の食事なんて、お口に合うのかしら?」
「さあね、第二王子は王族らしくない気さくな方だという噂だったけど、想像以上ね」
食堂からは笑い声が絶えず聞こえる。
アビゲイルはエリオットの飾らない笑顔から目が離せなくなっていた。
まだ会ったばかりなのにこんなにも心惹かれている。
身分違いなのは分かっていてもときめきを抑えることなどできなかった。
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