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【後日譚2】異世界(日本)から聖女が来たらしいけど、オレ(元勇者で元日本人)には関係ないったらない!!!
第16話 口喧嘩
しおりを挟むかえ、る……??
どこ、に。
「――勝手なことを。ベルは……彼は、元からこの世界の人間です。帰る場所は、ここだけですよ」
グレンに抱きしめられ、いつの間にか息を止めていたことに気がついて慌てて空気を吸い込む。
……そうだ。グレンの言う通り、オレはもともとこの世界の人間。
愛莉ちゃんと一緒に帰る――いや、異世界に行くなんて選択肢は、ない。
「……愛莉ちゃん。説明が難しいけど、そういうわけなんだ。君はオレのことなんか忘れて、元の世界に戻ってほしい」
「蓮くん……」
愛莉ちゃんに真剣な眼差しで見つめられ、鼓動が高鳴った。……違うくて、ラブ的な、ときめき的なやつではなく……緊張で。
彼女と話していると、まるで自分が平凡な陰キャ高校生、赤谷蓮に戻ったような気分になる。
そのせいで、彼女のような高嶺の花と視線を合わせて会話しているという状況に緊張してしまっているのだ。そう、きっとそう。
そんな誰に向けてかもわからない――というかグレンに向けての言い訳を心の中でしていると、彼女は思ってもみなかったことを尋ねてきた。
「ところで、グレンさんでしたっけ。貴方……蓮くんの叔父さんなんですよね?」
オレじゃなくて、グレンに。
「…………え」
気の抜けた声は、てっきりオレの口から出たものだと思ったら、グレンの方からだった。
「は、はい……」
「なんか前に見たときより若返ってるけど……犯罪ですよね?」
「「はん、ざい……??」」
ピシャリと言われて、二人で顔を見合わる。
「だって、蓮くん高校生ですよ。その蓮くんを貴方みたいな成人男性が、その距離感は……まずいでしょ」
至って普通の恋人の距離感のはずだが……まずい、まずいのか??!!
思わずグレンの腕の中から出ようと腰を引いたが、グレンは逆にぐっとオレを引き寄せた。
「彼はこの世界ではもう成人済みなのでセーフです。――それより、貴女はどうして俺のことを覚えているんですか。俺達の存在は全員の記憶から消したはずなのに……」
「叔父と甥の時点でアウトだと思います。――記憶を消した? ああ……そう言えば、なぜか“井上さん“のこともみんな忘れてたから不思議だったんだけど……貴方のせいなんだ」
急に呼ばれたスピカが目を丸くしている。
「え? まじでなんで覚えてんの?? “おじさん“も“文芸部の井上さん“も、本来いるはずがないイレギュラーだから、ちゃんと存在ごと消した……はず、だよね? グレンくん」
「……彼女と、俺の魔力は相性が悪い。そのせいで、彼女の記憶だけ消せなかったのかも、しれませんね」
――なんか難しい話してるな。
でもオレはそれどころじゃない。
……結局、オレとグレンの関係って世間的にはダメな感じなの???
確かに叔父さんと甥っ子だった時代があるし……いやでも、グレンは“蓮では抜いたことない“って言ってたしな……。
そんなことを考えている間に、愛莉ちゃんとグレンの話し合いは進んでいた。あんまりよくない方向に。
「とにかく! 蓮くんは連れて帰ります。こんな危険な世界に……しかも、高校生に手を出すような人の傍には置いておけません!!」
「だから! 彼の生まれた世界はここで!! 俺は蓮には手を出してないし、ベルは精神的にはもう四捨五入したら四十歳なんですってば!!」
四捨五入しないで。
「…………スピカ~。どうしよ」
もはや話(言い争い)に入っていけないので、小声でスピカに泣きつく。
「うーん。愛莉ちゃん、倫理観しっかりしてるねぇ」
「そこじゃなくてさ……オレのこと連れて帰るとか言ってる方……」
「まあ……彼女、たぶんこの世界で嫌な目に遭ったんだろうね。だからこそ君をここへ置いてはおけないっていう……優しさ、かな」
優しさ……まあ、優しさか。
ただのご近所さんにも優しいなんて、やっぱり愛莉ちゃん性格まで綺麗だなぁ。
まじ聖女。
……いや、そんなん言ってる場合じゃないわ。二人の身体、魔力出てるって!!! 口喧嘩じゃなくなってきてんじゃん!!!
「グレン! 愛莉ちゃん……!! ストップ!!」
オレのために争わないで! まじで!!!
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