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#70 庸子 ―独白[永遠の叫]―
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今回の期末試験、私は友人である神代永遠さんと波多野敦美ことあっちゃんの三人で、お互いに苦手教科を教え合いながら数日間、試験勉強会をした。
事の発端は、初めて永遠さんが私の家に遊び――姉と永遠さんの髪型について相談することが遊びなのかはさて置き――に来た時のことだ。
「ヨーコさんのお部屋にお邪魔するの、忘れてました……」
家に来たにも関わらず、私の部屋にお邪魔するのを忘れた、と言った彼女の落胆ぶりに、
「……ぷぷっ。もう、大袈裟なんだから……なら、明日も……来る? 期末試験も近いし、お勉強会ってことで」
つい、こんなことを提案していた。
そして数日間。
時に我が家、時に図書室と場所を変えつつ勉強していたのだが、その間に永遠さんは私の友人でもあるあっちゃんとも仲良くなり、彼女の希望もあって、だったら三人で試験勉強会を、となったのだ。
私は特に苦手な教科はないが、あえて言うなら英語が得意ではなかった。なので英語の得意な永遠さんに教わったのだが、彼女は教えるのが本当に上手で、それは一言で言うなら『褒め上手』。こちらが問題を解くたび「そうそう! さすがヨーコさん。飲み込みも早くてすごいなぁ」と、いつもより数段綺麗な笑顔で言うのだ。こんな笑顔を向けられたら、男子は堪らないだろう。私だって堪らないのだから。そんな彼女の『三割増しの笑顔』を沢山見たくて、自然といつも以上に力が入った。
対してあっちゃんは理系教科が異常に得意で、度々試験範囲から話が脱線するのだが、最後には必ず答えの一歩手前に帰結するのだ。しかも、その脱線した話は次の問題のヒントになっていて、自然と勉強が捗るという仕掛け。
つまり彼女は『総論の中に各論を巧妙に、しかも分かりやすい内容に噛み砕いて混ぜ込んでいる』のだ。しかし本人にはその自覚はないらしく「あ、そういえばそうだね」と、ころころ笑うだけだった。
振り返れば、私ばかりが教えてもらっているように感じるが、二人からは感謝の声をもらっている。二人とも数学は苦手のようで、そんな二人に私がしたことといえば『コツのようなものをしっかりと教えた』だけ。私としては大したことはしてないのだが、二人からすると大したことらしいのだ。二人とも嬉しそうな顔で「すごく解り易いし、スッと頭に入ってくる」と言ってくれた。
私は子どもの頃から今に至るまで数学が得意、というか好きだった。理由は明確で、『正誤がはっきりしている』からだ。数学には喜怒哀楽は必要なく、落ち着いて問題に取り組めば必ず正解に辿り着く。その過程にある『最適解』さえ押さえておけば時間もかからず、そして正解に辿り着く。その瞬間が堪らないのだ。
故に私にとって数学はパズルのようなもの。それを解くのに必要な公式や記号はジグソーパズルでいうピース。私はそのピースを丁寧に扱って二人に手渡し、はめ込む場所を指差しただけなのだ。
✳︎ ✳︎ ✳︎
今回の勉強会は実りのあるもので、本番である試験も、確かな手応えを三人それぞれが感じていた。
結果、私は過去最高の出来で学年一位、永遠さんは順位を上げて初の一桁台の八位。あっちゃんに至っては、それまで名前すら載らなかった上位成績者表30名の中に、そのうえ永遠さんすら追い抜く六位に食い込んだ。
「す、すごいねあっちゃん……」
「私、あっちゃんが天才にみえてきた……びっくりだよ」
「い、いや、私が一番びっくりしてるんだけど……うん、夢だこれは」
こんな感想が出るのは当たり前だ。
ふっとひとつ安堵の息を漏らしながら、
(二人とも頑張ったね。そしてありがとう)
二人の笑顔に心で感謝を述べていた私の耳に、不意に言葉が飛び込む。
「おい波多野! お前なんでこんな順位上がってんだよ!?」
背後の声に振り向くと、見覚えのある顔で、その声の主は一年生の時に同じクラスだった入江君。
突然現れた彼の言う言葉に戸惑いつつも同意する一方で、
(あっちゃん勉強中も真剣に取り組んでいたし、飲み込みの早さは尋常じゃなかった。だからこれは充分すぎるほどの成果に過ぎないんだけど……)
というのが正直な感想だ。これは揺るがない事実なのだ。だから彼のその発言は少し失礼だと結論付けた――のだが、次に入江君の言った言葉は到底看過できない、そして信じ難いものだった。
「そもそもお前、今まで上位成績者表に載ったことないだろ!? どうせカンニングとかしたんだろ!?」
「してないっつーの! 今回の期末は、この二人と一緒に勉強したからいつもより点数が良かっただけだよ!」
彼女の言い分は事実だと思う。意外とあっちゃんは自分に厳しい人だから、カンニングするくらいなら潔く無回答、もしくは『わかりません』と書き込んで提出するだろう。ましてや入江君は別のクラスだから、カンニングの現場を目撃するのは不可能だ。クラスメイトが入江君に密告したという可能性もなくはないが、正直彼はこんな性格のせいで、クラスメイトからはいい印象を持たれていなかった。だから彼の言葉には説得力もないし、それ以前に彼女の隣の席である永遠さんが何も言わないということはそういうことなのだろう。
私も入江君のこういった行動――どう考えても単なる言いがかり――は、一年生の頃から時々見かけていたが、その標的のほとんどは、同じ生物部のあっちゃんに向けてのもの。当時もクラス委員だった私は、二人が揉めるたびに仲裁に入っていた。
『あっちゃん、大丈夫? 今度は何があったの?』
『あー。入江の奴、部室のサボテン枯らしちゃったんだよ。「砂漠の植物には水なんていらないだろ」って言って、灌水しなくてさ。サボテンってさ、季節によるけど、成長期……春と秋なんだけど、土が乾いたら鉢の底から溢れちゃうくらいに灌水しないとなんだよ。だからちゃんと世話しろって――』
このような『私にはよくわからないけど理不尽なこと』で言い争いする二人の間に入っては、根気良く禍根を残さないように仲裁していた。
しかし――。
今回の件は少し、いやかなり度が過ぎていた。
もう私は『あっちゃんのクラス委員』でしかないけど、いつかのように仲裁に入ることにした。
「そうだよ入江君。今回はこの三人……神代さんとあっちゃんでテスト勉強、頑張っただけなの」
「頑張っただけでいきなり六位なんか取れるかよ? ってか中見も友達なら庇うのはよくないんじゃないのか? ちゃんと『カンニングはやめなよ』って言ってやるのが友達ってモンじゃないのか? 違うか? だいたい中見も勉強できるからっていい子ぶってんじゃねぇよ!」
その言葉にビクリと身体はつぶさに反応し、全身が粟立つ。
かつて親友と思っていた友人にも同じことを言われて、そのあとも酷い罵倒を浴びせられた。
私はただ、クラス委員や生徒会――中学では生徒会長だった――、勉強といった『学生らしいこと』を自分なりに頑張っていただけだった。それを『いい子ぶる』という簡単な言葉で罵倒されたのだ。これは私にとっては心に刺さった棘で、未だ癒える気配が一切ない。
このことは、あっちゃんだけが知っている。以前、悪意なく彼女に『いい子ぶってる』と言われて無意識のうちに涙を零してしまう、ということがあった。慌てた彼女は誠心誠意、というか土下座だったのだが、謝ってくれた。なので何故泣いてしまったのか告白した。
それ以来彼女はその言葉を言うことはなく、その上で私と今以上に友達になりたいと、そう言った。それからというもの、彼女はことあるごとにクラス委員の仕事を手伝ってくれた。そう、今の永遠さんのように。
そんなあっちゃんを今回も助けなければと思っての行動だったが、入江君のその言葉に、私は為す術を奪われてしまう。
「なっ! そ……そんな……こと……いい子ぶってなん……か……っ」
「ほらみろ。否定できないじゃないか!」
「ち、違っ! あっ……ちゃんは……う、うぅっ……」
それまで黙って様子を見ていた永遠さんの目が潤む。彼女は優しい女性だ。たぶん私の見たこともない狼狽ぶりに感化されたのだろう。それでも彼女は包み込むような声音で、
「ヨーコさん……あっちゃん……大丈夫?」
「え、えぇ。大丈夫よ永遠さん……」
「私は平気だけど……入江の奴……ちょっと入江アンタ――」
ぎりりと歯軋りが聞こえそうなほどあっちゃんは激昂しながら入江君に詰め寄る。このままだと口喧嘩以上の騒ぎになりかねない。でも依然として私の身体は『いい子ぶる』という鎖で拘束されて動けないでいた。
そして彼女――神代永遠が動いた。
(と、永遠さん……?)
大丈夫だから、というような視線を一瞬こちらに向けて、あっちゃんと入江君の間に体を投げ出して……
「……いい加減にしてくださいっ……!!」
それは、私も初めて聞いた彼女の怒声だった。
事の発端は、初めて永遠さんが私の家に遊び――姉と永遠さんの髪型について相談することが遊びなのかはさて置き――に来た時のことだ。
「ヨーコさんのお部屋にお邪魔するの、忘れてました……」
家に来たにも関わらず、私の部屋にお邪魔するのを忘れた、と言った彼女の落胆ぶりに、
「……ぷぷっ。もう、大袈裟なんだから……なら、明日も……来る? 期末試験も近いし、お勉強会ってことで」
つい、こんなことを提案していた。
そして数日間。
時に我が家、時に図書室と場所を変えつつ勉強していたのだが、その間に永遠さんは私の友人でもあるあっちゃんとも仲良くなり、彼女の希望もあって、だったら三人で試験勉強会を、となったのだ。
私は特に苦手な教科はないが、あえて言うなら英語が得意ではなかった。なので英語の得意な永遠さんに教わったのだが、彼女は教えるのが本当に上手で、それは一言で言うなら『褒め上手』。こちらが問題を解くたび「そうそう! さすがヨーコさん。飲み込みも早くてすごいなぁ」と、いつもより数段綺麗な笑顔で言うのだ。こんな笑顔を向けられたら、男子は堪らないだろう。私だって堪らないのだから。そんな彼女の『三割増しの笑顔』を沢山見たくて、自然といつも以上に力が入った。
対してあっちゃんは理系教科が異常に得意で、度々試験範囲から話が脱線するのだが、最後には必ず答えの一歩手前に帰結するのだ。しかも、その脱線した話は次の問題のヒントになっていて、自然と勉強が捗るという仕掛け。
つまり彼女は『総論の中に各論を巧妙に、しかも分かりやすい内容に噛み砕いて混ぜ込んでいる』のだ。しかし本人にはその自覚はないらしく「あ、そういえばそうだね」と、ころころ笑うだけだった。
振り返れば、私ばかりが教えてもらっているように感じるが、二人からは感謝の声をもらっている。二人とも数学は苦手のようで、そんな二人に私がしたことといえば『コツのようなものをしっかりと教えた』だけ。私としては大したことはしてないのだが、二人からすると大したことらしいのだ。二人とも嬉しそうな顔で「すごく解り易いし、スッと頭に入ってくる」と言ってくれた。
私は子どもの頃から今に至るまで数学が得意、というか好きだった。理由は明確で、『正誤がはっきりしている』からだ。数学には喜怒哀楽は必要なく、落ち着いて問題に取り組めば必ず正解に辿り着く。その過程にある『最適解』さえ押さえておけば時間もかからず、そして正解に辿り着く。その瞬間が堪らないのだ。
故に私にとって数学はパズルのようなもの。それを解くのに必要な公式や記号はジグソーパズルでいうピース。私はそのピースを丁寧に扱って二人に手渡し、はめ込む場所を指差しただけなのだ。
✳︎ ✳︎ ✳︎
今回の勉強会は実りのあるもので、本番である試験も、確かな手応えを三人それぞれが感じていた。
結果、私は過去最高の出来で学年一位、永遠さんは順位を上げて初の一桁台の八位。あっちゃんに至っては、それまで名前すら載らなかった上位成績者表30名の中に、そのうえ永遠さんすら追い抜く六位に食い込んだ。
「す、すごいねあっちゃん……」
「私、あっちゃんが天才にみえてきた……びっくりだよ」
「い、いや、私が一番びっくりしてるんだけど……うん、夢だこれは」
こんな感想が出るのは当たり前だ。
ふっとひとつ安堵の息を漏らしながら、
(二人とも頑張ったね。そしてありがとう)
二人の笑顔に心で感謝を述べていた私の耳に、不意に言葉が飛び込む。
「おい波多野! お前なんでこんな順位上がってんだよ!?」
背後の声に振り向くと、見覚えのある顔で、その声の主は一年生の時に同じクラスだった入江君。
突然現れた彼の言う言葉に戸惑いつつも同意する一方で、
(あっちゃん勉強中も真剣に取り組んでいたし、飲み込みの早さは尋常じゃなかった。だからこれは充分すぎるほどの成果に過ぎないんだけど……)
というのが正直な感想だ。これは揺るがない事実なのだ。だから彼のその発言は少し失礼だと結論付けた――のだが、次に入江君の言った言葉は到底看過できない、そして信じ難いものだった。
「そもそもお前、今まで上位成績者表に載ったことないだろ!? どうせカンニングとかしたんだろ!?」
「してないっつーの! 今回の期末は、この二人と一緒に勉強したからいつもより点数が良かっただけだよ!」
彼女の言い分は事実だと思う。意外とあっちゃんは自分に厳しい人だから、カンニングするくらいなら潔く無回答、もしくは『わかりません』と書き込んで提出するだろう。ましてや入江君は別のクラスだから、カンニングの現場を目撃するのは不可能だ。クラスメイトが入江君に密告したという可能性もなくはないが、正直彼はこんな性格のせいで、クラスメイトからはいい印象を持たれていなかった。だから彼の言葉には説得力もないし、それ以前に彼女の隣の席である永遠さんが何も言わないということはそういうことなのだろう。
私も入江君のこういった行動――どう考えても単なる言いがかり――は、一年生の頃から時々見かけていたが、その標的のほとんどは、同じ生物部のあっちゃんに向けてのもの。当時もクラス委員だった私は、二人が揉めるたびに仲裁に入っていた。
『あっちゃん、大丈夫? 今度は何があったの?』
『あー。入江の奴、部室のサボテン枯らしちゃったんだよ。「砂漠の植物には水なんていらないだろ」って言って、灌水しなくてさ。サボテンってさ、季節によるけど、成長期……春と秋なんだけど、土が乾いたら鉢の底から溢れちゃうくらいに灌水しないとなんだよ。だからちゃんと世話しろって――』
このような『私にはよくわからないけど理不尽なこと』で言い争いする二人の間に入っては、根気良く禍根を残さないように仲裁していた。
しかし――。
今回の件は少し、いやかなり度が過ぎていた。
もう私は『あっちゃんのクラス委員』でしかないけど、いつかのように仲裁に入ることにした。
「そうだよ入江君。今回はこの三人……神代さんとあっちゃんでテスト勉強、頑張っただけなの」
「頑張っただけでいきなり六位なんか取れるかよ? ってか中見も友達なら庇うのはよくないんじゃないのか? ちゃんと『カンニングはやめなよ』って言ってやるのが友達ってモンじゃないのか? 違うか? だいたい中見も勉強できるからっていい子ぶってんじゃねぇよ!」
その言葉にビクリと身体はつぶさに反応し、全身が粟立つ。
かつて親友と思っていた友人にも同じことを言われて、そのあとも酷い罵倒を浴びせられた。
私はただ、クラス委員や生徒会――中学では生徒会長だった――、勉強といった『学生らしいこと』を自分なりに頑張っていただけだった。それを『いい子ぶる』という簡単な言葉で罵倒されたのだ。これは私にとっては心に刺さった棘で、未だ癒える気配が一切ない。
このことは、あっちゃんだけが知っている。以前、悪意なく彼女に『いい子ぶってる』と言われて無意識のうちに涙を零してしまう、ということがあった。慌てた彼女は誠心誠意、というか土下座だったのだが、謝ってくれた。なので何故泣いてしまったのか告白した。
それ以来彼女はその言葉を言うことはなく、その上で私と今以上に友達になりたいと、そう言った。それからというもの、彼女はことあるごとにクラス委員の仕事を手伝ってくれた。そう、今の永遠さんのように。
そんなあっちゃんを今回も助けなければと思っての行動だったが、入江君のその言葉に、私は為す術を奪われてしまう。
「なっ! そ……そんな……こと……いい子ぶってなん……か……っ」
「ほらみろ。否定できないじゃないか!」
「ち、違っ! あっ……ちゃんは……う、うぅっ……」
それまで黙って様子を見ていた永遠さんの目が潤む。彼女は優しい女性だ。たぶん私の見たこともない狼狽ぶりに感化されたのだろう。それでも彼女は包み込むような声音で、
「ヨーコさん……あっちゃん……大丈夫?」
「え、えぇ。大丈夫よ永遠さん……」
「私は平気だけど……入江の奴……ちょっと入江アンタ――」
ぎりりと歯軋りが聞こえそうなほどあっちゃんは激昂しながら入江君に詰め寄る。このままだと口喧嘩以上の騒ぎになりかねない。でも依然として私の身体は『いい子ぶる』という鎖で拘束されて動けないでいた。
そして彼女――神代永遠が動いた。
(と、永遠さん……?)
大丈夫だから、というような視線を一瞬こちらに向けて、あっちゃんと入江君の間に体を投げ出して……
「……いい加減にしてくださいっ……!!」
それは、私も初めて聞いた彼女の怒声だった。
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