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欲望

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 ルーベルカイムのアンリの自宅

 アンリはベッドの上でゆっくりと瞼を開いた。彼はぼんやりとした意識のまま、身体を起こそうとする。

「うっ……痛っ」

 アンリの全身に痛みが走った。

「後になってから痛みがきたか」

 その時、彼は妙な気配を感じ、ベッドの横に目をやった……布団に人の形の不自然な膨らみがあった。

「誰だ!」

 アンリは素早く布団を引きはがす……彼のベッドで栗毛の下着姿の女が気持ちよさそうに寝息をたてていた。

「ん……おはよう、アンリ」

 アンリの隣で寝ていた女が目を開いた。

「ルーネ、何でオレの部屋で寝てるんだ?鍵はどうした?」

 下着姿の女ルーネはアンリの顔をじっと見つめる。

「……ねぇアンリ、わたしに何か……隠してない?」

 彼女はアンリの瞳を覗きながら彼の頬に手を当てる。

「いや、別に」

 アンリの声が少し動揺している。

「嘘」

 ルーネはアンリの手を掴むと素早くアンリに馬乗りになった。

「あなたが眠ってる間にこの部屋色々と調べたんだから」

 ……ルーネの太股に刻まれた淵術刻印が薄暗い部屋の中で青く輝く。

「獣性開放……」

 彼女が身に着けた上下の黒霊布の下着に施された青い術式の刺繍が微かな光を放っている。

「うっ……はあっはあ……」

 ルーネはベッドサイドのテーブルに置かれた蒼い瓶を手に取ると中に入った液体を一気に飲み干した。彼女の全身から汗があふれだし、苦しげな吐息を漏らす。

「この部屋に残っていた異質な波長の魔力……あれは何?」

 ルーネはアンリの腕をベッドに強く押さえつける。彼女の瞳が金色に輝いている。

「わからないな」

「そう……この部屋に溜まった魔力……吸わせてもらったわ」

「ちょっと待てルーネ、いったん落ち着こうか」

「……あなた、この前の戦いで、まだ体中痛いし、身体全然本調子じゃないでしょ」

 ルーネは瞳を金色に妖しく輝かせながら、アンリの身体に胸を押し当て、彼の顔に自身の顔を近づける。

「ねえ、アンリ……わたしを怒らせないでよ……今は黒霊布の下着で抑えてるけど、獣性を開放したわたしはどうなるかわからないから」

 ……ルーネの身体にアンリの魔力が吸いとられいく。

「おい、ちょ、止めろ」

「……あなたの魔力でわたしの身体どんどん強化されていくけど、どうする?」

 アンリの身体から抵抗する力が抜けていく。

「知ってること全部話して?わたしのこと信用してないの?」

「……」

 ルーネはアンリと手を絡める。

「じゃあ、脳に直接聞くから……それじゃあ融合しましょうか」

 ルーネの全身が青白く発光し、彼女は更に強くアンリと体を密着させる。

「おい止めろ、ルーネ、んー!んっー」

「暴れない、暴れない……」

 アンリは抵抗するが、二人の身体を青白い光が包み込んでいく。

「ねえ……怖がってるの?わたしと一緒になるの初めてじゃないでしょ」

 強い光の中で二人の肉体の境界線が曖昧になっていく

「さあ、一つになりましょう」

 ・・・・・・

 強い光の中から黒髪の美しい女が姿を現した。

「はあ……はあ、融合完了……」

 アンリと融合したルーネはベッドから下り、立ち上がると、金属鏡に映った自身の姿をじっと眺めた。

「やっぱり、アンリとの身体の相性最高……腹の底から魔力と生命力がドンドン湧き出てくるわぁ……」

 ルーネは全身をまさぐると、鏡に顔を近づける。

「スタイルも顔も凄く最高……凄くわたし好み……こんないい女に生まれたかったわ……この黒髪もいいわ」

 鏡の前でポーズを決めながら、黒髪を鼻に近づけて匂いを嗅ぐ。

「ああ……凄く……いい匂いがするわあ……全てがわたし好みで最高、何なの……この身体」

 ルーネはアンリのベッドに腰掛け、足を組むと自身の身体に取り込んだアンリに語りかける。

「さて、アンリ話してくれる?まあ……今、肉体の主導権はわたしにあるから話してくれなくても、記憶を探るけど」

「わかった、わかった」
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