18 / 102
アルラウネ
しおりを挟む
ルースの村から少し離れた山中をアンリ達三人が歩いている。
「目撃情報があったのはこの辺か……瘴気の濃度は……あまり高くないな
……明るいうちに手がかりを掴めりゃいいんだがな」
手にした瘴気計を見つめながら、アンリが呟いた。
「なあ、夜はどうする?探索に行くか?奴は夜行性かもしれん」
手持ち大砲を担いだリンアルド族の大男ディアスは問いかける。
「おれは魔獣のいる夜の山を探索するのは止めたほうがいいと思うぜ」
ジュリアスは周囲を警戒しながら応えた。
「……毛が落ちてるな」
アンリは山道から少し外れた場所に、長い銀色の体毛が落ちているのに気がついた。
「アンリ、なんだかわかるか?」
「さあ?……でも、三つ目オオカミのものじゃないな」
そう言うとアンリはしゃがみ込み、地面に落ちた体毛を手に取り、回収する。
「この辺で魔獣のねぐらになりそうな所を探ってみようぜ」
……三人の周囲に微かに甘い匂いが漂いはじめた。
「!!……甘い匂い?……妙な気配もするな……ディアス、ジュリアス、気をつけろ……」
アンリは声を殺して二人に警戒を促す。
「……例の人喰い魔獣か?」
ディアスも声を殺す。
「……魔力の反応がある……オレ達の方に向かってきてるぞ」
……そして、木々の陰から緑色の肌の美しい女が現れた。緑色の滑らかでしっとりとした肌から甘い香りのする体液がしたたり落ちている。
「アルラウネか……」
「こいつがおれ達の探してる例の奴なのか??」
とジュリアス。
三人の前に現れたアルラウネはジュリアスの顔を睨み付け、問いかける。
「……貴女なの?……最近この山をうろついている気味の悪い魔力の元は」
アルラウネはスカート状になった白い花びらの下から触腕を伸ばし、ジュリアスの足に巻き付き締め付ける。
「……この不快な感じ……サキュバス?でもこの女……何かが違う嫌な臭い、気味の悪い魔力を感じるんだけど」
「くそ、離せ!!」
アルラウネの触腕はジュリアスの身体を更にきつく締め付ける。
「……貴方たち、アタシを捕まえに来たの?」
アンリは減速術式で形成した氷弾をアルラウネに向け足で蹴り飛ばす……氷弾は着弾と同時に炸裂し、氷の刃となってアルラウネの身体を貫いた。
「ああっ痛っ!冷たっ!!」
アルラウネが怯んだ隙にジュリアスは触腕の拘束を振り払い、距離をとる。
「ちっ、やるじゃない」
ディアスが肩に担いだ手持ち大砲をアルラウネに向け発射する。
ディアスの持つ手持ち大砲、ホルテンシウス砲はロザーナ公国のオルテンジア地方の発明家レオナルド・フェリが発明した擲弾を発射する軽砲である。リンアルドやオークのような巨躯の種族には重宝されるが、反動が大きく人間には扱いにくい。
……爆風が山の木々を揺るがし、焼け焦げた臭いが山林に立ち込める。
「ちっ、大して効かねえか」
……爆炎の中から平然と現れたアルラウネはアンリ達の顔を品定めするようにじっと見つめる。
「……アタシとやる気なの?……いいわ、返り討ちにしてあげる」
アルラウネは細い肩を震わせながら、花粉を頭に生えた白い花からまき散らす。
「魔力がたっぷり詰まって……美味しそうな匂い、男の子二人に私のエキスを体に注入して女の子の身体に作り変えてから、マンドラゴラの種子を植え付けて私の仲間にしてあげる……そしてサキュバスは殺す」
ディアスが再度、アルラウネに向け砲弾を放つ。
「効かないわ、減速術式、アクアスパーダ!」
砲弾は炸裂するも、アルラウネが展開した幾本もの水の刃により爆炎はかき消された。
「アタシの弾丸を喰らいなさい」
アルラウネは腕についた紫色の可憐な花から種子を連続で射出する。
「マンドラゴラの種子だ!喰らうと寄生されるぞ!」
アンリが叫ぶ。
ジュリアスは種子の弾丸をかわしながら、銃剣で触腕を切り払い、間合いを詰める。
「鈍いな、一撃かましてやるぜ!」
ジュリアスのアルラウネへの鋭い一突き……その一撃がアルラウネの身体に深い傷をつくり、傷口から乳白色の体液が流れ出る。
「くっ、やるじゃない」
ジュリアスの次なる攻撃を触腕で受け流すが、アンリの放った氷弾が炸裂しアルラウネを足元から凍り付かせ身動きを封じる。
「くっ!」
「もらったぜ!」
ジュリアスの銃剣がアルラウネの身体を深く貫いた。
……そんなアンリ達の姿を銀髪の少年が樹上からじっと静かに見つめていた。
「目撃情報があったのはこの辺か……瘴気の濃度は……あまり高くないな
……明るいうちに手がかりを掴めりゃいいんだがな」
手にした瘴気計を見つめながら、アンリが呟いた。
「なあ、夜はどうする?探索に行くか?奴は夜行性かもしれん」
手持ち大砲を担いだリンアルド族の大男ディアスは問いかける。
「おれは魔獣のいる夜の山を探索するのは止めたほうがいいと思うぜ」
ジュリアスは周囲を警戒しながら応えた。
「……毛が落ちてるな」
アンリは山道から少し外れた場所に、長い銀色の体毛が落ちているのに気がついた。
「アンリ、なんだかわかるか?」
「さあ?……でも、三つ目オオカミのものじゃないな」
そう言うとアンリはしゃがみ込み、地面に落ちた体毛を手に取り、回収する。
「この辺で魔獣のねぐらになりそうな所を探ってみようぜ」
……三人の周囲に微かに甘い匂いが漂いはじめた。
「!!……甘い匂い?……妙な気配もするな……ディアス、ジュリアス、気をつけろ……」
アンリは声を殺して二人に警戒を促す。
「……例の人喰い魔獣か?」
ディアスも声を殺す。
「……魔力の反応がある……オレ達の方に向かってきてるぞ」
……そして、木々の陰から緑色の肌の美しい女が現れた。緑色の滑らかでしっとりとした肌から甘い香りのする体液がしたたり落ちている。
「アルラウネか……」
「こいつがおれ達の探してる例の奴なのか??」
とジュリアス。
三人の前に現れたアルラウネはジュリアスの顔を睨み付け、問いかける。
「……貴女なの?……最近この山をうろついている気味の悪い魔力の元は」
アルラウネはスカート状になった白い花びらの下から触腕を伸ばし、ジュリアスの足に巻き付き締め付ける。
「……この不快な感じ……サキュバス?でもこの女……何かが違う嫌な臭い、気味の悪い魔力を感じるんだけど」
「くそ、離せ!!」
アルラウネの触腕はジュリアスの身体を更にきつく締め付ける。
「……貴方たち、アタシを捕まえに来たの?」
アンリは減速術式で形成した氷弾をアルラウネに向け足で蹴り飛ばす……氷弾は着弾と同時に炸裂し、氷の刃となってアルラウネの身体を貫いた。
「ああっ痛っ!冷たっ!!」
アルラウネが怯んだ隙にジュリアスは触腕の拘束を振り払い、距離をとる。
「ちっ、やるじゃない」
ディアスが肩に担いだ手持ち大砲をアルラウネに向け発射する。
ディアスの持つ手持ち大砲、ホルテンシウス砲はロザーナ公国のオルテンジア地方の発明家レオナルド・フェリが発明した擲弾を発射する軽砲である。リンアルドやオークのような巨躯の種族には重宝されるが、反動が大きく人間には扱いにくい。
……爆風が山の木々を揺るがし、焼け焦げた臭いが山林に立ち込める。
「ちっ、大して効かねえか」
……爆炎の中から平然と現れたアルラウネはアンリ達の顔を品定めするようにじっと見つめる。
「……アタシとやる気なの?……いいわ、返り討ちにしてあげる」
アルラウネは細い肩を震わせながら、花粉を頭に生えた白い花からまき散らす。
「魔力がたっぷり詰まって……美味しそうな匂い、男の子二人に私のエキスを体に注入して女の子の身体に作り変えてから、マンドラゴラの種子を植え付けて私の仲間にしてあげる……そしてサキュバスは殺す」
ディアスが再度、アルラウネに向け砲弾を放つ。
「効かないわ、減速術式、アクアスパーダ!」
砲弾は炸裂するも、アルラウネが展開した幾本もの水の刃により爆炎はかき消された。
「アタシの弾丸を喰らいなさい」
アルラウネは腕についた紫色の可憐な花から種子を連続で射出する。
「マンドラゴラの種子だ!喰らうと寄生されるぞ!」
アンリが叫ぶ。
ジュリアスは種子の弾丸をかわしながら、銃剣で触腕を切り払い、間合いを詰める。
「鈍いな、一撃かましてやるぜ!」
ジュリアスのアルラウネへの鋭い一突き……その一撃がアルラウネの身体に深い傷をつくり、傷口から乳白色の体液が流れ出る。
「くっ、やるじゃない」
ジュリアスの次なる攻撃を触腕で受け流すが、アンリの放った氷弾が炸裂しアルラウネを足元から凍り付かせ身動きを封じる。
「くっ!」
「もらったぜ!」
ジュリアスの銃剣がアルラウネの身体を深く貫いた。
……そんなアンリ達の姿を銀髪の少年が樹上からじっと静かに見つめていた。
0
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説
集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!
七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」
その天使の言葉は善意からなのか?
異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか?
そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。
ただし、その扱いが難しいものだった。
転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。
基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。
○○○「これは私とのラブストーリーなの!」
主人公「いや、それは違うな」
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。
はぁ?とりあえず寝てていい?
夕凪
ファンタジー
嫌いな両親と同級生から逃げて、アメリカ留学をした帰り道。帰国中の飛行機が事故を起こし、日本の女子高生だった私は墜落死した。特に未練もなかったが、強いて言えば、大好きなもふもふと一緒に暮らしたかった。しかし何故か、剣と魔法の異世界で、貴族の子として転生していた。しかも男の子で。今世の両親はとてもやさしくいい人たちで、さらには前世にはいなかった兄弟がいた。せっかくだから思いっきり、もふもふと戯れたい!惰眠を貪りたい!のんびり自由に生きたい!そう思っていたが、5歳の時に行われる判定の儀という、魔法属性を調べた日を境に、幸せな日常が崩れ去っていった・・・。その後、名を変え別の人物として、相棒のもふもふと共に旅に出る。相棒のもふもふであるズィーリオスの為の旅が、次第に自分自身の未来に深く関わっていき、仲間と共に逃れられない運命の荒波に飲み込まれていく。
※第二章は全体的に説明回が多いです。
<<<小説家になろうにて先行投稿しています>>>
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
ペット(老猫)と異世界転生
童貞騎士
ファンタジー
老いた飼猫と暮らす独りの会社員が神の手違いで…なんて事はなく災害に巻き込まれてこの世を去る。そして天界で神様と会い、世知辛い神様事情を聞かされて、なんとなく飼猫と共に異世界転生。使命もなく、ノルマの無い異世界転生に平凡を望む彼はほのぼののんびりと異世界を飼猫と共に楽しんでいく。なお、ペットの猫が龍とタメ張れる程のバケモノになっていることは知らない模様。
日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊
北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。
スキルガチャで異世界を冒険しよう
つちねこ
ファンタジー
異世界に召喚されて手に入れたスキルは「ガチャ」だった。
それはガチャガチャを回すことで様々な魔道具やスキルが入手できる優れものスキル。
しかしながら、お城で披露した際にただのポーション精製スキルと勘違いされてしまう。
お偉いさん方による検討の結果、監視の目はつくもののあっさりと追放されてしまう事態に……。
そんな世知辛い異世界でのスタートからもめげることなく頑張る主人公ニール(銭形にぎる)。
少しずつ信頼できる仲間や知り合いが増え、何とか生活の基盤を作れるようになっていく。そんなニールにスキル「ガチャ」は少しづつ奇跡を起こしはじめる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる