5 / 54
双子の王女 パート5
しおりを挟む「トゥルビヨンそのへんにしておきなさい。あなたはゾルダートが手を抜いているのがわからないのですか?ゾルダートはいつでもあなたを殺せるのですよ」
ルーラがツゥルビヨンに警告する。
「そんなことはない。俺のが強いはずだ」
「本当です。あなたも『レア称号』の持ち主で実力も折り紙つきです。しかし、ゾルダートは別格なのです」
「信じられるかぁ!あいつは俺の顔に傷を付けたのだ。落とし前をつけさせてやる」
「構いません。しかし、神聖な決闘としての戦いなら認めます」
『八咫烏』では、己の力に自信があるものは『八咫烏』のメンバー内で決闘を申し込み、『八咫烏』での地位を奪い合うことができる。
『八咫烏』で最強を誇る3名の三羽烏になるのも決闘を行なって地位を奪い取るのである。そして、ゾルダードは三羽烏の頂点に立つ『黒王』という地位にある。トゥルビヨンは最近三羽烏に昇進して日が浅く三羽烏でも1番地位の低い『黒鳥』の身分である。
「ゾルダート、『黒王』の座をかけて決闘だぁ」
「好きにしろ」
ゾルダートは興味がなさげに返事をする。
「ゾルダート外に出ろ!俺が新しい黒王なる」
トゥルビヨンは威勢良く言い放ち部屋を飛び出した。
『八咫烏』の本拠地は王都グロワールから少し離れた森の奥にある洞窟を切り開いてできた自然の居城である。
トゥルビヨンは、洞窟の居城を出て森の中にある少し広い草原に移動した。それを追うように静かにゾルダートも付いていく。そして、多くの八咫烏のメンバーも観戦に行く。今回の決闘は、最近『八咫烏』に入って、残忍なやり方でいろんな依頼をこなし、幾度か決闘を申し込み一年余りで三羽烏に昇格した超新星のトゥルビヨンなので、メンバー達はゾルダートにどれだけ通用するか見てみたいのである。
「本気でかかって来いよ!」
威勢良くゾルダートを挑発する。
「・・・」
ゾルダートは何も言わすに、大きな斧を地面から振り上げて戦闘態勢に入る。
「誓約に乗っ取り神聖な決闘を開催します」
どんな組織でもルールは必要である。なので、暗部組織である『八咫烏』は規律を重んじるのである。
決闘の合図はルーラにより出された。
トゥルビヨンの『風神』の能力は風を自在に操ることができる力である。風を自在に使って攻撃をするだけでなく、自らのスピードを強化したり自在に空を飛行できる凄腕の持ち主である。
トゥルビヨンは、試合の合図と同時に姿を消した。
ゾルダートは、トゥルビヨンが姿が消えると同時に大きな斧を地面に振り落とした。振り落とされた斧の衝撃で地面には大きな亀裂が走り半径10m以内に生えていた草木が全て吹き飛ばされた。
「上空に身を隠すなんて芸がない・・・」
ゾルダートは静かに呟いた。
斧を振り落としたゾルダートに向かって、上空からトップスピードで急降下するトゥルビヨンが見えた。トゥルビヨンは剣をゾルダートの頭頂部に突き刺す・・・が剣は簡単に折れてしまった。
「そんな・・・ありえない」
トゥルビヨンが、目を見開いて驚いているところをゾルダートは斧を振りかざしてトゥルビヨンの首を刎ねた。
ゾルダートの『軍神』の能力は人並み外れた攻撃力と防御力である。ゾルダートの体は剣を突き刺すこともできない強靭な肉体へと変貌している。これは生まれ持った『軍神』の称号の能力とその能力を向上させるために地道な努力の結果である。
トゥルビヨンは『風神』の力をほとんど見せることなくあっけなく死んでしまった。トゥルビヨンが弱いのではなくゾルダートが圧倒的に強すぎた結果なのである。
「やはり、手も足も出なかったぜ」
「やっぱりゾルダート様は最強だぜ」
「これで10戦無敗だ。次は誰が挑戦をするのだろうか・・・」
決闘を見ていたメンバーたちは、ゾルダートの力を再確認した。
「殺してしまったのですか・・・」
ルーラがゾルダートに近寄り声をかける。
「申し訳ありません。あまりにも弱すぎたので三羽烏の一角には相応しくないと判断しました」
「仕方がありません。また新し人材を探すとしましょう。それよりも、今回の依頼の件は頼りにしてます。王女の護衛は王族騎士団が担当するはずです。大将クラスの人物はいないですが、30名の護衛のプロが担当する予定です。気をつけてください」
「問題はない。この国で俺を倒せる者は1人しかいない。しかし、アイツも手の込んだことをするのだな」
「そうですね。それほど重要な案件なのです」
ロード国王は王女の護衛を手を抜くことはできない。あまりにも警護が手薄だと王女が死んだ時に疑いを掛けられるからである。
「今回も俺の部隊だけでいく。足手まといは必要ない」
ゾルダートの部隊は5人からなる少数精鋭部隊である。
「作戦は全てお任せします」
ゾルダートは仲間を連れて森の中へ消えて行った。
0
お気に入りに追加
21
あなたにおすすめの小説
世界を滅ぼす?魔王の子に転生した女子高生。レベル1の村人にタコ殴りされるくらい弱い私が、いつしか世界を征服する大魔王になる物語であーる。
ninjin
ファンタジー
魔王の子供に転生した女子高生。絶大なる魔力を魔王から引き継ぐが、悪魔が怖くて悪魔との契約に失敗してしまう。
悪魔との契約は、絶大なる特殊能力を手に入れる大事な儀式である。その悪魔との契約に失敗した主人公ルシスは、天使様にみそめられて、7大天使様と契約することになる。
しかし、魔王が天使と契約するには、大きな犠牲が伴うのであった。それは、5年間魔力を失うのであった。
魔力を失ったルシスは、レベル1の村人にもタコ殴りされるくらいに弱くなり、魔界の魔王書庫に幽閉される。
魔王書庫にてルシスは、秘密裏に7大天使様の力を借りて、壮絶な特訓を受けて、魔力を取り戻した時のために力を蓄えていた。
しかし、10歳の誕生日を迎えて、絶大なる魔力を取り戻す前日に、ルシスは魔界から追放されてしまうのであった。
公爵家次男はちょっと変わりモノ? ~ここは乙女ゲームの世界だから、デブなら婚約破棄されると思っていました~
松原 透
ファンタジー
異世界に転生した俺は、婚約破棄をされるため誰も成し得なかったデブに進化する。
なぜそんな事になったのか……目が覚めると、ローバン公爵家次男のアレスという少年の姿に変わっていた。
生まれ変わったことで、異世界を満喫していた俺は冒険者に憧れる。訓練中に、魔獣に襲われていたミーアを助けることになったが……。
しかし俺は、失敗をしてしまう。責任を取らされる形で、ミーアを婚約者として迎え入れることになった。その婚約者に奇妙な違和感を感じていた。
二人である場所へと行ったことで、この異世界が乙女ゲームだったことを理解した。
婚約破棄されるためのデブとなり、陰ながらミーアを守るため奮闘する日々が始まる……はずだった。
カクヨム様 小説家になろう様でも掲載してます。
【get a second chance】~イケメンに生まれ変わったら見える景色が鮮やかになった~
ninjin
ファンタジー
50歳、独身、引きこもりの俺は、自宅の階段から転げ落ちて死んでしまった。しかし、俺は偶然にも【get a second chance】の権利を得る事が出来た。【get a second chance】とは、人生をやり直す事が出来る権利であり、しかも、ゲームのように自分自身のレベルを上げる事で、イケメンにもなれるのである。一回目の人生は、不細工は不細工のまま、勉強しても頭が悪いのは悪いまま、運動神経がなければスポーツは上手くならない。音痴なら歌は上手くならない。才能がない者はどんなに頑張っても無意味だった。しかし、二度目の人生は違う。頑張れば頑張るほど成長できるやりがいのある人生だった。俺は頑張ってレベルを上げて二度目の人生を謳歌する。
集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!
七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」
その天使の言葉は善意からなのか?
異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか?
そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。
ただし、その扱いが難しいものだった。
転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。
基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。
○○○「これは私とのラブストーリーなの!」
主人公「いや、それは違うな」
二つの異世界物語 ~時空の迷子とアルタミルの娘
サクラ近衛将監
ファンタジー
一つは幼い子供が時空の迷子になって数奇な運命に導かれながら育む恋と冒険の異世界での物語、今一つは宇宙船で出会った男女の異世界での物語。
地球では無いそれぞれ異なる二つの世界での物語の主人公たちがいずれ出あうことになる。
チートはあるけれど神様から与えられたものではありません。
*月曜日と木曜日の0時に投稿したいと考えています。
月影の砂
鷹岩 良帝
ファンタジー
突如として現れた邪悪なる魂、おとぎ話に語られる《絶望》。それは最初の英雄と呼ばれる五人の手によって封印された。
やがて千年の月日が流れ、五つに分けられた封印のクリスタルから絶望の魂の一部が解放されてしまう。
絶望は一人の少年を乗っ取り、己の野望を果たすためにひっそりと動き始める。
封印が解けたことに気づいた月の女神は、解き放たれた絶望を倒すために五人の少年少女に特別な力を与える。
のちに最後の英雄と呼ばれるこの五人のうちの一人、ルーセント・スノーは唯一絶望を倒すことができる守護者を与えられた。
田舎町の道場で剣術を習っていただけの少年は、仲間を探すために世界をめぐり、国を守るために将軍として軍を率いて、いまだ見ぬ絶望に立ち向かっていく。
----- ----- ----- ----- ----- ----- -----
<お知らせ>
現在読みやすくするためにゆるやかに修正中です。1-終話まで完了(2020/12/29)
※一部の修正が完了しました。二部以降も修正したいですが未定です。一部と矛盾してるところも出てくるかもしれません。
サブタイトルの話数表記を変更しました。(2020/12/19)
※字間の詰まった縦組みで読みたい方は、ノベルアップで読めます。(設定で縦組みにしてください)
前世の記憶さん。こんにちは。
満月
ファンタジー
断罪中に前世の記憶を思い出し主人公が、ハチャメチャな魔法とスキルを活かして、人生を全力で楽しむ話。
周りはそんな主人公をあたたかく見守り、時には被害を被り···それでも皆主人公が大好きです。
主に前半は冒険をしたり、料理を作ったりと楽しく過ごしています。時折シリアスになりますが、基本的に笑える内容になっています。
恋愛は当分先に入れる予定です。
主人公は今までの時間を取り戻すかのように人生を楽しみます!もちろんこの話はハッピーエンドです!
小説になろう様にも掲載しています。
攫われた転生王子は下町でスローライフを満喫中!?
伽羅
ファンタジー
転生したのに、どうやら捨てられたらしい。しかも気がついたら籠に入れられ川に流されている。
このままじゃ死んじゃう!っと思ったら運良く拾われて下町でスローライフを満喫中。
自分が王子と知らないまま、色々ともの作りをしながら新しい人生を楽しく生きている…。
そんな主人公や王宮を取り巻く不穏な空気とは…。
このまま下町でスローライフを送れるのか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる