異世界で魔法が使えない少女は怪力でゴリ押しします！

お茶会終了人生も終了

　大広間に入るとショコラがナイフとフォークを握りしめて椅子に座っている。


　「早くお茶菓子を持ってくるのよん」

　「もうしばらくお待ちください」


　シックナザール伯爵の執事がショコラを宥めている。


　「ショコラ、まだ食べ足りないの？」

　「まだよん。まだまだ食べたいのよん」

　「シェーネさん、ショコラさんを止めてください。お茶菓子の価格を釣り上げたのはあなた方ですよね。こんな法外な価格のお茶菓子を購入したら旦那様が破産してしまいます」

　「あなた方は陛下から預かっているこの領地で、散々好き勝手に税金を釣り上げて法外な税収を得ていることは分かっているのよ。この町にはマーチャント商会の本店があり、田舎町なのにかなりの税収があるはずなのに、それに満足せずに全ての税収を上げて法外な利益を得て、贅沢な暮らしをしているよね」

　「それは誤解です。旦那様はこの町の発展のために税収を上げて、その財源で町民の暮らしの改善をしているのです。決して私利私欲のために税収を上げているわけではないのです」

　「嘘を言っても無駄よ。私の兄が調べた結果、あなた方は不当に釣り上げた税収の使い道は、40人の愛人を持つシックナザール伯爵のハーレム生活費に消えているようね。町民の為になど一切使っていないわね」

　「それは誤解と言うものです。旦那様は、貧しい女性への援助として40人の愛人を持ち、彼女らに裕福な暮らしを提供しているのです。これも領主としての役割だと私は理解しています」

　「見え見えの嘘はやめてもらえるかしら。シックナザール伯爵の影響を受けたクロイツ子爵は多数の妻を抱えているわね。彼の方はシックナザール伯爵ほどの権限を持っていないので破産寸前のようね」

　「それは全て誤解です。旦那様は何一つ悪いことなどしていません。もし、旦那様がした行為を悪いことと判断されるのならば、それは価値観の違いであり、決して犯罪ではないのです」

　「そこまで言い切るのでしたら、あとは陛下の判断に任せるわ。でも、お茶会の後見人としての義務は果たしてもらうわよ」

　「無理でございます。あのような法外な値段の茶菓子など買うことはできません」

　「あの茶菓子が法外の値段かどうかは価値観の違いだと思うわ。法外だと思うのなら買わなければいいのよ」

　「・・・」

　「お茶菓子はまだよん。すぐに用意するのよん。もしお茶菓子が用意できなけらばお父様に報告するよん」


　シックナザール伯爵は、力ずくでショコラを抑えようとしたが、ショコラに勝てる護衛兵士はいなかった。力では勝てないと判断したシックナザール伯爵はショコラに逆らえずお茶会を開いたが、茶菓子が用意できずに途方に暮れていた。


　「セバス・・・俺たちの負けだ。力でも身分でも勝てなかった俺に勝機の目は無くなった。これ以上騒ぎが大きくならないようにショコラ様の胃袋を満足させてやれ」


　シックナザール伯爵は敗北を認めて、使用人たちに町にある茶菓子を全て購入することに命令した。ショコラは山積みになった茶菓子を見て幸せそうに全てを食べ尽くして屋敷を出たのであった。



　ヘンドラーの屋敷の応接室には、商業ギルマスのカリーナとヘンドラー男爵そしてシェーネと私がいた。


　「盗賊ギルドマスターだと自白したアーベンは騎士団所に連行したわ。シックナザール伯爵とクロイツ子爵ですが、陛下の指示があるまでは拘束は難しいと思うわ」

　「そうですね。陛下の指示があるまで領主を拘束するなんて難しいでしょう」

　「あの2人は陛下の領土を自分の領土のように好き勝手に税収を上げて不正に利益を得ていたことは確実ですわ。すぐに陛下から拘束するように指示があるはずよ。それに、あの2人は、私の兄とカーネリアンが監視をしているので、町から逃げることは不可能だと思いますし、逃げる場所もないと思いますわ」

　「これでこの町の住人も貧しい生活から抜け出ることができるのでしょうか？」

　「それなら問題ないわ。シェーネさんが法外な価格で茶菓子を売るように指示をしてくれたので、かなりの利益を得ることができたわ。この臨時収入はみんなに補助金として分配する予定よ」


　シェーネが法外な値段で茶菓子を買わせたのは理由があった。別に法外な値段で茶菓子を買わせなくても、シックナザール伯爵たちを追い詰める方法はいくらでもあった。しかし、シックナザール伯爵、アーベンの溜め込んだお金は、最終的には国に没取されてカノープスの町への返金されることはない。なので、2人の財産並びにクロイツ子爵の売り払った屋敷のお金を、有効的にカノープスの町に還元するために、このような作戦を立てたのであった。

　シェーネのショコラの胃袋を利用した作戦は成功に終わり、3人の全財産は茶菓子に消えて、その利益は町人たちに還元された。
　
　数日後王都の騎士団員が到着して、3人を王都の騎士団所に連行して行った。領主が不在になったカノープスの時期領主には、町民たちはヘンドラー男爵を推す声が大きかったが、ヘンドラー男爵は領主になることを断ったため、王都から新しい領主が赴任することになった。