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巨人と冴えない男

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 「あいつガチで投げやがってぇ~、俺はどこまで飛んできたのだ」


 カーネリアンが辺りを見渡す。


 「誰もいないかぁ~」

 「居てるぞボケナス!」

 「早く、早く私の上からどいてください」


 カーネリアンの下敷きになっていたグレイヘロンとオーストリッチが悲痛な声で叫ぶ。


 「すまん。すまん」


 カーネリアンは起き上がり下敷きになっていた2人に謝罪した。


 「お・お・お前は『青天の霹靂』の巨人のカーネリアン」


 カーネリアンは2mという長身を誇っていたので、一部の者からは『巨人のカーネリアン』と呼ばれていた。


 「その呼び方はあまり好きじゃないからやめてくれ」

 「お前はここに何しにきたのだ」

 「いきなり天井から侵入して来たことは、本当に申し訳ない。しかし、これは事故でありわざとではないのだ。だから、別に用事とかはないのだよ」

 「用がないのならすぐに立ち去れ!2度とこの場所に立ち入るな」

 「グレイヘロン様、あいつを逃してもよろしいのでしょうか?ここで『紅緋の爪』の仇を討ちましょう」


 オーストリッチはグレイヘロンの耳元で囁いた。


 「そのつもりだ。あいつが背を向けた時に首を掻っ切ってやる」


 グレイヘロンは腰元に隠している短剣に手をかけ、いつでもカーネリアンを仕留める準備をする。


 『ズドーン』


 グレイヘロンの頭上に1人の男が降って来た。もちろんシェーネに飛ばされたバルザックである。


 「あいつ、マジで投げ飛ばしやがってぇ~俺はどこまで飛んできたのだ」

 
 バルザックが辺りを見渡す。


 「誰もいないかぁ~」
 
 「居てるぞボケナス!」

 「早く、早く私の上からどいてください」


 バルザックの下敷きになっていたグレイヘロンとオーストリッチが悲痛な声で叫ぶ。


 「悪い 悪い」

 「お・お・お前は『青天の霹靂』の冴ない兄の方じゃないか」


 バルザックは、天才の名をほしいままにした凄腕の魔法士であるが、シェーネの存在がバルザックの凄さをかき消していたのである。なのでバルザックは『冴ない兄』と揶揄されているのである。

 
 「こいつなら私でも勝てるのではないでしょうか?」

 「冴ない兄の方だな。こいつをやればいい手土産になるかもしれない」

 「お前ら、俺の尻の下で何を言っているのだ」

 「気づいているなら、早くどけボケナスがぁ~」


 バルザックはヒョイっと立ち上がる。


 「いきなり屋根から飛び込んで来たことは謝る。しかし、屋根は俺が壊したのではない。最初から壊れていたのだ」


 バルザックの頭に真っ先に浮かんだのは、屋根を壊した修理費を請求されることである。バルザックは自分が壊してないと言い張りたいのだが、実際はバルザックがカーネリアンを投げ飛ばして、壊れた屋根なので責任はバルザックにある。


 「屋根の修理費の心配よりも自分の命の心配をした方がいいぞ」

 「屋根が壊れていることよりも、俺の体を心配してくれているのか?なんて優しい人たちなんだ。体の方は大丈夫だ。俺はこう見えてもAランク冒険者だからな」

 「誰がお前の体など心配してるかぁ~」

 「ならどういう意味なんだ?さっぱりお前達の言っていることが理解できないぞ」

 「意味など理解しなくても良い。お前の体に理解させてやるぞ」


 グレイヘロンは短剣を握りしめ魔力を流し込む。すると短剣は火花を散らし出した。


 「雷属性の魔法剣使いなのか」

 「そうだ。俺が短剣に魔力を流すと火花が散って稲妻がほとばしるのだ」


 グレイヘロンは短剣を振りかざす。すると短剣から稲妻が発生して、バルザックの体に突き刺さる。


 「相手が悪かったみたいだな」


 稲妻に直撃されたバルザックは顔色ひとつ変えずに笑みを浮かべている。


 「魔法無効の防御魔法を使ったな。さすがAランク冒険者だな。だが、防御魔法専門の魔法士が1人で何が出来るのだ。魔法が効かないのなら、短剣で突き刺せばいいだけだ」


 グレイヘロンは短剣に魔力を再度流し込む。次は短剣の切れ味が増し、なおかつ刃を大きくさせて、ロングソードに変化させた。


 「俺は双魔法剣士。剣から魔法攻撃もでき、さらに剣も自在に変化させることができる最強のジョブだ」


 狭い部屋の中で逃げる場所もないバルザックは、グレイヘロンが素早く振り落としたロングソードを避ける場所はない。ロングソードは無慈悲にバルザックの頭に振り落とされた。

 しかし、バルザックに振り落とされたロングソードは、バルザックの頭に当たる寸前に短剣に戻りリーチが足りずに空を切った。


 「俺の魔法無効化は、魔法全てを無効化するのだよ。魔法攻撃だけでなく魔力で力を得た武器など全て無効化することができるんだぜ。そして、俺は防御魔法だけでなく全ての魔法を使うことができる天才魔法士だ。お前は2種類しか使えない双魔法剣士。しかもどちらも中途半端にしか使いこなすことができない低級双魔法剣士だな」


 短剣を握りしめたままグレイヘロンはそのまま床に倒れ込んだ。


 「お前、グレイヘロン様に何をした」

 「そんなことよりもお前達は何者なんだ?なぜ、いきなり俺を襲ってきたのだ?まさか屋根をから降ってきた俺が、お前達を尻で踏んづけたからじゃないだろうな?」


 バルザックはオーストリッチを問い詰める。


 


 
 
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