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サインをねだられる
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「だ・だ・大丈夫ですよ」
急に見知らぬ女性に抱きつかれて困惑している私。
「本当に大丈夫?1人で歩けるかしら?無理なら私がおぶってあげようか?」
「大丈夫ですよ。ほら!こんなに元気ですよ」
私はさっと立ち上がり元気な姿を披露した。
「ごめんなさいね。すぐに助けてあげたかったけど、きちんとした証拠を持って試合を中断しないと、あなた達の負けになってしまうからね」
「不正を暴いてくれてありがとうございます」
私は躓いて転んですぐに起き上がろうとしたが、シェーネ達がアベリアと勝敗について議論し出したので、転んだまま様子を伺っていたのである。
「いえ、当然のことをしたまでです。でも私たちが不正を暴かなくても、あなたは自分の力で勝利をもぎ取ったわ。本当によかったわ」
シェーネの瞳から涙が溢れだす。
「いえいえ、私たちのためにありがとうございます。これでムスケルさん達の汚名も返上できると思うわ」
「本当に・・・あなたはなんてたくましいのかしら。自分のことよりも仲間のことを第一に考えられるなんて素敵だわ」
シェーネは涙を拭いながら、また、私に抱きついて強く強く抱きしめる。
「0の少女ちゃん。あなたの噂を聞いた時、私はとても感銘を受けたわ。魔力量が0なのに、悲観することなく笑顔で元気に生き続け、内に籠ることなく外に出て冒険者を目指し、挙げ句の果てには、シュテーネン専門魔法学院の入学を目指すなんて・・・あなたの勇気ある行動に私は感動をしたのよ。私にできることがあったらなんでも言ってね。たとえ国王からの依頼があっても、あなたのことを優先するわ」
「いえいえ、私は何も大したことはしてませんよ。それに、0の少女ってなんのことかしら?私はハツキと言いますよ」
「ごめんね。きちんとした名前で呼ばなくて。ハツキちゃんが、魔力量が0だったことは、すぐにこの王都でも話題になっていたのよ。中には『イケメン倶楽部』のように魔力量が0であることを笑う人もいるけれど、大半の人は魔力量が0でも元気に生きているあなたのことを尊敬しているのよ」
「サインを頂戴よん」
私の頭の上にすごく重くて柔らかい感触を感じた。その正体はショコラの大きな胸である。
「重いですぅ~」
「ショコラ!何をしてるのよ。ハツキちゃんが潰されちゃうわよ」
「よんよんよん」
「ショコラ!早くその大きな塊を退けるのよ」
「よんよんよん」
「ハツキちゃんが潰れてしまうわよ」
「サインしてくれるなら退けるよん」
「わかったわ。私が書いてあげるわよ」
「シェーネのサインなんていらないよん」
「ショコラ、いい加減にしろ!」
カーネリアンがショコラの首根っこを掴み私をショコラの圧力から解放してくれた。
「助かったわ。ありがとね」
「気にするな。よかったらサインをしてくれないか」
私がカーネリアンの顔を見てお礼をすると、カーネリアンの顔が真っ赤になり私に色紙を差し出した。
「カーネリアン!抜け駆けはよせ。俺にもサインをくれ!」
私にサインを求めた2mもあるカーネリアンをバルザックは軽く投げ飛ばした。
「ハツキ様。あなたのお噂を聞いた時、私はひどくひどく感銘を受けました。今日、初めてあなたを見た時、あなたの美しさと儚さと尊さに私は、私は・・・」
『ズドーン』
激しい音を立ててバルザックが飛んでいく。バルザックを投げ飛ばしたのはシェーネである。
「ごめんねハツキちゃん。私の兄が変なことを言おうとして。シェーンさん達のことも心配だし、一緒に医務室に行きましょう」
「そうね。医務室に行かなくちゃ」
「私も行くよん」
私はシェーネ達と一緒に医務室へ向かった。
「マグノリアの村に寄ってみたが、誰もいなかったぞ」
「それはどう言う事でしょうか?」
「何者かに壊滅された可能性が高い。俺が今日あの村に行くことはナイトバードに伝えていたはずだ。なのに、誰もいないなんておかしい・・・」
「あの村には『紅緋の爪』の精鋭部隊が300名ほどいたはずです。それを1人残らず壊滅するなんてあり得るのでしょうか?」
「『青天の霹靂』の仕業かもしれん。あいつらは国王からイーグルネイルの壊滅の依頼を受けているはずだ」
「しかし、いくらAランク冒険者の『青天の霹靂』でもナイトバードを率いる『紅緋の爪』300名を全滅させることは不可能です」
「もしかして、『イケメン倶楽部』が裏切った可能性があるかもしれない。あいつらが『青天の霹靂』に情報を流し、ナイトバードを罠にはめて殺したのかもしれないぞ」
「それはあり得ますね。『イケメン倶楽部』はAランク冒険者を目指しています。『紅緋の爪』を壊滅したとなるとAランク冒険者に昇格する可能性が出てきます」
「理由はそういう事だな。アイツらには横領の罪で暗殺するように司令が下っていた。もしかして、その事を知っての行動なのか・・・」
王都にあるとある一室で、イーグルネイルの四つの爪の一つである『赤朽葉の爪』の副リーダー補佐役のグレイヘロンとその部下であるオーストリッチが、『イケメン倶楽部』を暗殺するために身を潜めていた。
『ズドーーン』
とある一室の屋根を突き破ってカーネリアンが空から降ってきた。
急に見知らぬ女性に抱きつかれて困惑している私。
「本当に大丈夫?1人で歩けるかしら?無理なら私がおぶってあげようか?」
「大丈夫ですよ。ほら!こんなに元気ですよ」
私はさっと立ち上がり元気な姿を披露した。
「ごめんなさいね。すぐに助けてあげたかったけど、きちんとした証拠を持って試合を中断しないと、あなた達の負けになってしまうからね」
「不正を暴いてくれてありがとうございます」
私は躓いて転んですぐに起き上がろうとしたが、シェーネ達がアベリアと勝敗について議論し出したので、転んだまま様子を伺っていたのである。
「いえ、当然のことをしたまでです。でも私たちが不正を暴かなくても、あなたは自分の力で勝利をもぎ取ったわ。本当によかったわ」
シェーネの瞳から涙が溢れだす。
「いえいえ、私たちのためにありがとうございます。これでムスケルさん達の汚名も返上できると思うわ」
「本当に・・・あなたはなんてたくましいのかしら。自分のことよりも仲間のことを第一に考えられるなんて素敵だわ」
シェーネは涙を拭いながら、また、私に抱きついて強く強く抱きしめる。
「0の少女ちゃん。あなたの噂を聞いた時、私はとても感銘を受けたわ。魔力量が0なのに、悲観することなく笑顔で元気に生き続け、内に籠ることなく外に出て冒険者を目指し、挙げ句の果てには、シュテーネン専門魔法学院の入学を目指すなんて・・・あなたの勇気ある行動に私は感動をしたのよ。私にできることがあったらなんでも言ってね。たとえ国王からの依頼があっても、あなたのことを優先するわ」
「いえいえ、私は何も大したことはしてませんよ。それに、0の少女ってなんのことかしら?私はハツキと言いますよ」
「ごめんね。きちんとした名前で呼ばなくて。ハツキちゃんが、魔力量が0だったことは、すぐにこの王都でも話題になっていたのよ。中には『イケメン倶楽部』のように魔力量が0であることを笑う人もいるけれど、大半の人は魔力量が0でも元気に生きているあなたのことを尊敬しているのよ」
「サインを頂戴よん」
私の頭の上にすごく重くて柔らかい感触を感じた。その正体はショコラの大きな胸である。
「重いですぅ~」
「ショコラ!何をしてるのよ。ハツキちゃんが潰されちゃうわよ」
「よんよんよん」
「ショコラ!早くその大きな塊を退けるのよ」
「よんよんよん」
「ハツキちゃんが潰れてしまうわよ」
「サインしてくれるなら退けるよん」
「わかったわ。私が書いてあげるわよ」
「シェーネのサインなんていらないよん」
「ショコラ、いい加減にしろ!」
カーネリアンがショコラの首根っこを掴み私をショコラの圧力から解放してくれた。
「助かったわ。ありがとね」
「気にするな。よかったらサインをしてくれないか」
私がカーネリアンの顔を見てお礼をすると、カーネリアンの顔が真っ赤になり私に色紙を差し出した。
「カーネリアン!抜け駆けはよせ。俺にもサインをくれ!」
私にサインを求めた2mもあるカーネリアンをバルザックは軽く投げ飛ばした。
「ハツキ様。あなたのお噂を聞いた時、私はひどくひどく感銘を受けました。今日、初めてあなたを見た時、あなたの美しさと儚さと尊さに私は、私は・・・」
『ズドーン』
激しい音を立ててバルザックが飛んでいく。バルザックを投げ飛ばしたのはシェーネである。
「ごめんねハツキちゃん。私の兄が変なことを言おうとして。シェーンさん達のことも心配だし、一緒に医務室に行きましょう」
「そうね。医務室に行かなくちゃ」
「私も行くよん」
私はシェーネ達と一緒に医務室へ向かった。
「マグノリアの村に寄ってみたが、誰もいなかったぞ」
「それはどう言う事でしょうか?」
「何者かに壊滅された可能性が高い。俺が今日あの村に行くことはナイトバードに伝えていたはずだ。なのに、誰もいないなんておかしい・・・」
「あの村には『紅緋の爪』の精鋭部隊が300名ほどいたはずです。それを1人残らず壊滅するなんてあり得るのでしょうか?」
「『青天の霹靂』の仕業かもしれん。あいつらは国王からイーグルネイルの壊滅の依頼を受けているはずだ」
「しかし、いくらAランク冒険者の『青天の霹靂』でもナイトバードを率いる『紅緋の爪』300名を全滅させることは不可能です」
「もしかして、『イケメン倶楽部』が裏切った可能性があるかもしれない。あいつらが『青天の霹靂』に情報を流し、ナイトバードを罠にはめて殺したのかもしれないぞ」
「それはあり得ますね。『イケメン倶楽部』はAランク冒険者を目指しています。『紅緋の爪』を壊滅したとなるとAランク冒険者に昇格する可能性が出てきます」
「理由はそういう事だな。アイツらには横領の罪で暗殺するように司令が下っていた。もしかして、その事を知っての行動なのか・・・」
王都にあるとある一室で、イーグルネイルの四つの爪の一つである『赤朽葉の爪』の副リーダー補佐役のグレイヘロンとその部下であるオーストリッチが、『イケメン倶楽部』を暗殺するために身を潜めていた。
『ズドーーン』
とある一室の屋根を突き破ってカーネリアンが空から降ってきた。
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